「老年社会科学」 Vol.19-2

   

論文名


新介護システムにおけるソーシャルワーク機能の重要性

著者名

根本博司

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 19 ( 2 ) : 123-128, 1998
抄録
介護保険法が成立したが,政・省令で実施細則が定められるまでの間に,各方面から多くの問題点を指摘しておかなければならない.筆者としては,とくに,次の点について指摘しておきたい.それは,@社会保険方式では扱いにくい高齢者・家族間の問題,あるいは孤立化した高齢者の問題を扱う相談機関を,新介護システム(地域の医療・保健・福祉機関その他)に設け,Aそうした問題を扱う専門職を公費で必要数配置し,次のような機能を果たせるように訓練しておく必要性があるということである.その機能とは,問題発生に予防的にかかわり,対象者にアウトリーチし,その権利を代弁し,問題を掘り起こし,調整活動を試み,社会資源を開発し,地域住民を組織化し,あるいは社会体制の問題点を改善する動きを起こす等々である.こういう機能は伝統的にはソーシャルワーカーが果たしてきた.その意味で,本稿ではソーシャルワーク機能の重要性ということを論じている.

 

論文名


老人病院通院患者家族の介護支援利用パターンとその要因

著者名

山本則子,杉下知子

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 19 ( 2 ) : 129-139, 1998
抄録
本研究の目的は,老人病院通院患者のおもな家族介護者が他の家族や在宅ケアサービスをどのように利用しているかを把握し,それをもとに主介護者の介護支援利用をパターン分けすることである.都内老人病院に来院した患者のつき添い家族58人に質問紙調査を行った.介護内容により,援助提供者には違いがみられた.すなわち,薬の内服や着替えは主介護者のみが援助している一方,血圧測定や食事は皆で援助する傾向が強い等である.主介護者が1人で介護するか否かには,主介護者の年齢,患者との同居,副介護者,患者の年齢,排泄の自立の各要因との関連がみられた.在宅ケアサービスを利用するか否かには,主介護者の年齢,続柄,ADL・精神機能および排泄の自立の各要因との関連がみられた.主介護者がさまざまな介護内容を各種支援と共有するか否かには,主介護者の年齢,主介護者の性別,患者との同居,副介護者,就労,排泄の自立の各要因との関連がみられた.

 

論文名


地域老人の社会関係にみられる階層的補完

著者名

古谷野亘,安藤孝敏,浅川達人,児玉好信

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 19 ( 2 ) : 140-150, 1998
抄録
老人の社会関係に関する階層的補完モデルによる説明の可能性について検討した.使用したデータは,東京都世田谷区と山形県米沢市の65〜79歳の在宅老人の代表サンプル,合計882人より得た.社会関係の指標には,情緒的一体感,手段的サポートの受領,および介護の可能性を用いた.他者の続柄は,「配偶者」「配偶者以外の同居家族」「同居家族」「別居子とその配偶者」「兄弟・親戚」「近隣・友人」の6つとした.サブグループ比較法と多重ロジスティック分析による解析の結果,階層的な補完関係は配偶者と「配偶者以外の同居家族」の間にのみ認められた.これは,家族形態について得られている配偶者の有無と同・別居の関連という知見に,機能面からの裏づけを与えたものと考えられる.

 

論文名


中高年者のボランティア活動参加の意義

著者名

日下菜穂子,篠置昭男

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 19 ( 2 ) : 151-159, 1998
抄録
近年,ボランティア活動に対する関心は高まりつつある.とくに急激な高齢社会の進展は,中高年者のボランティア活動への参加のきっかけとなったといえる.こうした中高年者が充実した人生を過ごすために,援助を受けるだけでなく援助を提供することについての意義を見直す必要が生じてきた.そこで,ボランティア活動を通して社会とかかわりをもち続けることの意義を問い,成人中期から後期のあり方を探求することを目的として研究を行った.結果として,中高年者のボランティア活動観は,「社会的貢献」「余暇活動」「自己実現」の3つの因子に分類できること,それぞれの因子の得点が高いほどサポートを提供する満足度が高いこと,「社会的貢献」「自己実現」因子の得点が高いほど自尊感情が高まること,そしてサポート提供の満足度が高いほど自尊感情が高まることが明らかにされた.