論文名 |
高齢者の介護必要度に関するADL尺度と痴呆尺度を利用した数量化モデルの研究;ファジィ理論を中心に
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著者名 |
北島英治
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
11-21,
1997
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抄録 |
研究の深化は,その分析手法の開発とともに深まり進展する.これまでにも,高齢者に対する介護負担や介護必要度を計測する研究が行われてきたが,その分析手法は,確率・統計分析を主体とするものであった.本研究は,従来の分析手法に制限されないファジィ理論を応用し,介護必要度に関する数量化モデルを提示することを目的とした.調査は,老人保健施設,特別養護老人ホーム,在宅介護支援センター等,合計54施設に対し,ADLと痴呆に関する判定基準を組み合わせた分割表を提示して行われた.調査結果のうち,介護必要度などの主観尺度に関して,従来の確率・統計概念としての「不確かさ」ではなく「あいまい(ファジィ)」な性質として捉え,ファジィ理論の応用を試みた.介護必要度の数量化モデルとしては,回帰モデル,ファジィ・モデル,ファジィ回帰モデルを提示した.その結果,確率・統計学や線形性に制限されない分析手法の拡大,ファジィ理論の応用による介護必要度の数量化モデルの可能性を示唆した.そのモデルから,ADL尺度のほうが痴呆尺度より「あいまい」の程度が低く,また,介護必要度の「大変さ(重度)」より「手のかからなさ(中等度,軽度)」のほうがあいまいの程度(ファジィ・エントロピー)は低く,尺度として明確化しやすいことが推測できた.
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論文名 |
高齢者在宅ケアサービスの利用に対する態度に関連する要因
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著者名 |
山田ゆかり,石橋智昭,西村昌記,堀田陽一 若林健市,古谷野亘
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
22-28,
1997
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抄録 |
在宅ケアサービスの利用に対する態度とその関連要因について検討した.調査は東京都世田谷区に居住する70歳代の在宅高齢者1,600人を対象として訪問面接法により実施し,1,082人より回答を得た(回収率67.6%).代表的な7つの在宅ケアサービスについて,利用に対する肯定的ならびに否定的な態度を測定した.配偶者および同居子がいないことは,サービス利用に対する肯定的な態度と有意に関連し,配偶者および同居子がいることは,否定的な態度と有意に関連していた.その他,性,学歴,年収,サービスについての知識がサービス利用態度に影響を及ぼしていた.在宅ケアサービスの利用は,家事や介護の外部化を意味し,家庭内における家事や介護の遂行者としての配偶者および同居子の存在が,サービス利用態度と有意に関連していたものと考えられる.
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論文名 |
兵庫県南部地震による老人福祉施設の被害と対応状況
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著者名 |
荒木兵一郎,足立啓
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
29-38,
1997
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抄録 |
本研究の目的は,震災による老人福祉施設の被災とその対応状況を知り,「災害に強く,人にやさしいまちづくり」に向けての基礎資料を得ることである.調査対象は兵庫県内の災害指定地域に所在する89施設である.施設の建物被害は比較的少なかったが,いわゆるライフラインの被害は大きく,施設運営に大きな影響を与えている.施設内にいた利用者で避難を要したのは2割弱である.施設の総合的な運営は7割の施設で当日から行われており,調理やトイレは代替手段を講じてすばやく再開している.一方,建物被害が少なかったことから,近隣被災者を多数受け入れており,とくに高齢者や障害者を多く受け入れている.救援活動としてはボランティアによる活動が活発であったが,施設側から近隣住民への援助も多くみられる.総合的にみれば,老人福祉施設は高齢者や障害者の緊急時の避難拠点としての資質を備えており,できれば各地域の中心地区に立地することが望まれる.
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論文名 |
施設入所痴呆性老人のロビーにおける相互作用特性に関する研究;痴呆性老人間の成立・不成立のソシオグラムを中心として
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著者名 |
天田城介
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
39-47,
1997
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抄録 |
本研究では,特別養護老人ホームの痴呆性老人入所者のロビーにおける成立・不成立の相互作用をソシオグラムのかたちにまとめ,その相互作用特性を分析した.方法としては,ロビーにおける痴呆性老人の集まりに焦点をおき,参与観察法を中心とした直接観察法によるデータから,相互作用特性の分析を行った.観察の結果,相互作用には4つのパターンがみられ,そのうち2つを「成立の関係」,もう2つを「不成立の関係」として21×21の非対称のマトリックス上に集計した.「成立の関係」を牽引(attraction),「不成立の関係」を反発(repulsion)として対応させたソシオグラムを完成させ,痴呆性老人間の相互作用特性の構造を分析した.結果として,多くの痴呆性老人は安定的な相互作用を営んでおり,また,痴呆性老人間の相互作用は数名を中心にした構造を形成していることが明らかになった.したがって,本研究対象の痴呆性老人の公的空間における相互作用は,多くの場合安定的で,秩序のある相互作用であることが明らかになった.
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論文名 |
配偶者と死別した中高年者の悲嘆緩和のためのミーティングの実施とその効果の検討
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著者名 |
河合千恵子
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
48-57,
1997
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抄録 |
配偶者と死別した中高年の男女4グループに悲嘆の緩和を目的としたミーティングを実施し,36人の参加者についてその効果を測定評価した.さらに,その後の経過を調べるための郵送調査を,ミーティング終了から3か月後と6か月後に行った.ミーティング開始時には,悲嘆,抑うつ感,心身的反応の得点は高かったが,ミーティング終了時には得点の低下がみられた.反復測定の分散分析を行い,有意なミーティングの効果が認められた.ミーティング終了後の経過については,ミーティング終了時と3か月後との間で,また6か月後との間でも有意な変化が認められなかったことから,ミーティングによる効果はミーティングが終わっても半年は継続することが確認された.ミーティングによる効果を参加者の関与のあり方との関連で検討した分析では,ミーティング場面で積極的なかかわりをもったほうが抑うつ感や悲嘆が減少することが明らかにされた.
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論文名 |
平成7年度東京都老人福祉施設入所者健康実態調査(2);昭和62年調査との比較;痴呆性疾患の有病率と精神科的医療の実態を中心として
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著者名 |
本間昭,新名理恵,坂田成輝,朝倉幹雄,伊野美幸,長田賢一,高橋俊郎,上村誠,諸川由実代,植田宏樹,宮本聖也,長谷川浩,藤巻英生,渡部廣行,貴家康男,大川義則,福島端,南雲智子,佐中徹,青木淑恵,大木美香,柳田浩,松下卓郎,長谷川洋,宇田川至,小野寺敦志
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
58-68,
1997
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抄録 |
平成7年度に都内の特別養護老人ホーム34施設に居住する1,020人,養護老人ホーム14施設に居住する700人,軽費老人ホームA型5施設の239人,およびケアハウス1施設の52人の計54施設の2,011人を対象に,痴呆性疾患の有病率および精神科的医療の実態を明らかにすることを目的として精神医学的専門調査を実施した.結果を昭和62年度に行われた同様の調査と比較した.痴呆の有病率はそれぞれ54.3%,11.6%,5.0%および2.2%であった.前回の結果と比べて,養護老人ホームでは有病率が減少していたが,他の施設では大きな変化は認められなかった.昭和62年度調査では調査対象の大部分が居住する特別養護老人ホームおよび養護老人ホームではアルツハイマー型痴呆が最も多い痴呆性疾患であったが,今回の結果では血管性痴呆が最も多かった.すでに何らかの精神障害を有すると診断されていた者のなかで治療を受けていた者の割合と,今回の調査で精神障害と診断され精神科的医療が必要と判断された者の割合を比較した結果,特別養護老人ホームでは若干の差がみられたが,おおよそ両者の割合は一致した.また,特別養護老人ホームと養護老人ホームでは,今回,すでに精神障害を有すると診断されていた者のなかで治療を受けていた者の割合は,前回のそれに比較して顕著に増加していることが示された.
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論文名 |
地域老人におけるペット所有状況とペットとの交流
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著者名 |
安藤孝敏,古谷野亘,児玉好信,浅川達人
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
19
(
1
)
:
69-75,
1997
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抄録 |
本研究は,東京都世田谷区と山形県米沢市に居住する65〜79歳の老人の代表サンプル,合計882人から得たデータを用いて,地域老人におけるペット所有状況とペットとの交流について検討した.ペット所有率は世田谷が22.2%,米沢は34.9%であり,世田谷に比べて米沢で有意に高かった.ペット所有は,世田谷と米沢のいずれにおいても,同居子ありの者に多かった.情緒的一体感を有する者の比率は米沢(35.2%)に比べて世田谷(67.0%)で有意に高かった.この結果は,大都市と地方都市に居住する老人では,ペットのとらえ方が異なることを示唆するものであった.
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