「老年社会科学」 Vol.17-1

   

論文名


特別養護老人ホーム職員のバーンアウトと関連するパーソナリティ特性の検討

著者名

川野健治,矢冨直美,宇良千秋,中谷陽明,巻田ふき

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 11-20, 1995
抄録
特別養護老人ホーム職員のバーンアウトに関連するパーソナリティ特性について,ストレスモデルを用いて検討した.そのパーソナリティは,ハーディネスとは独立で,仕事に気楽に取り組んだり作業に執着したりする傾向として概念化された.ランダムサンプリングされた157施設の介護職員2,010人が分析の対象となった.おもな結果は以下のとおりである.
(1) 2つの特性(楽天性,執着性)を測定するパーソナリティ尺度を作成した.
(2) 楽天性と執着性の緩衝効果は燃え尽き症状の異なる側面に認められ,前者は情緒的疲弊,後者は離人化と個人的達成に関連していた.
(3) 楽天性・執着性とストレッサーの交互作用は,楽天性・執着性が情緒的疲弊を助長する方向でバーンアウトと関連する可能性を示した.
(4) パーソナリティ尺度は構成概念妥当性が確認されたが,信頼性の点で問題が残った.

 

論文名


中高年女性(祖母)の子育て参加の実態と心理的健康との関連について(第1報)

著者名

宮中文子,松岡知子,西田茂樹,岩脇陽子,中谷公子,中島健二

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 21-29, 1995
抄録
本研究の目的は,中高年女性の心の健康に影響を与える因子,とくに祖母の子育てに関する因子を分析することである.分析には3〜5歳の孫をもつ270人の祖母の調査データを用いた.心の健康は,SDSとモラールスケールを用いて評価した.
結果,SDSで抑うつ的と評価された祖母の特徴は,不健康と感じている者,母親と子育て方針が異なる者,子育てに疲れを感じている者,および子育てに幸せ感を感じられない者であった.モラールスケールで非満足的と評価された者もSDSで抑うつ的と評価された者と同様の傾向を示した.これらに加えて,積極的に「直接的」「社会文化的」な子育てに参加している祖母は満足していると評価される傾向にあった.以上の結果から,祖母の子育て参加と心の健康は関連していると考えられた.

 

論文名


特別養護老人ホームの痴呆専用ユニットにおけるストレス

著者名

矢冨直美,川野健治,宇良千秋,中谷陽明,巻田ふき

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 30-39, 1995
抄録
本研究では,痴呆専用ユニットの介護者のストレッサーやストレス症状が非専用ユニットの介護者に比べてどのように異なるかを検討し,さらに専用ユニットの介護職員のストレスを緩和する要因として組織特性と仕事特性の効果を検討した.分析に用いたサンプルは,専用ユニットの介護者111人,非専用ユニットの介護者487人であった.本研究の結果から,専用ユニットの介護者は介護的仕事の負荷,利用者とのコンフリクト,事務的仕事の負荷をより多く経験し,情動的ストレス反応,慢性疲労,燃え尽き症状が高いことが明らかとなった.また,組織の介護方針,リーダーシップ,仕事のコントロール,決定参加の特性はストレス症状を緩和する効果を示したが,とくに,専用ユニットでは,利用者中心的介護方針,リーダーシップが燃え尽き症状を緩和し,また,仕事のコントロールと決定参加が,情動的ストレス反応を緩和する効果をもっていることが明らかとなった.

 

論文名


中高年期におけるライフイベントとその影響に関する心理学的研究

著者名

下仲順子,中里克治,河合千恵子,佐藤眞一,石原治,権藤恭之

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 40-56, 1995
抄録
本研究は,中高年期に体験するライフイベントと体験したイベントが,心身面の健康に及ぼす影響を分析することをめざしている.対象者は1991年時東京都I区に住む50〜74歳の男女4,440人のうち,訪問面接調査を行って有効回答を得た3,097人である.1993年には死亡等を除いた3,065人を対象に追跡調査が行われ有効数は2,482人であった.ライフイベント体験と精神健康(GHQ),人格,自尊感情,PGCモラール,主観的健康感,活動能力,夫婦と親子関係満足度,ソーシャルサポート等が測定された.悪いイベントでは家族や配偶者に関するものが女性に,仕事に関するものが男性に多かった.病気やけが,死に関するイベント体験は老年者に多く,社会生活や家族関係に関するものは中年者に多かった.良いイベントは子どもや仕事に関するものに集中し,それらは中年世代が多く体験していた.悪いイベント体験は,GHQ,PGC,神経症的傾向,主観的健康感,夫婦関係満足度に対して2年後においても悪い影響を及ぼし,一方良いイベント体験は,PGC,自尊感情,外向性,活動能力,夫婦関係満足度,ソーシャルサポートに良い影響を及ぼしていた.

 

論文名


保健・医療・福祉サービス利用のモデルとしてのAndersenの行動モデルに関する研究の動向と今後の課題

著者名

武村真治,橋本廸生,古谷野亘

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 57-65, 1995
抄録
高齢者の保健・医療・福祉サービスの利用を説明するための概念的枠組みとして多くの研究で用いられているAndersenの行動モデルについて,過去の研究をレビューし,日本の高齢者への適用可能性について考察した.行動モデルは当初,個人の医療サービス利用を説明するために開発されたもので,素因,利用促進要因およびニードの3要因がサービス利用に影響を与えるとするモデルである.その後,行動モデルは医療だけでなく,保健や福祉サービスにも適用されてきた.行動モデルは,サービス利用に至る流れを明示した概念的枠組みとして優れたものであるが,分析に用いられる指標の選択に問題を残しており,日本の高齢者に適用するためには,日本の制度やシステム,高齢者の特性に適合した指標を選択する必要がある.

 

論文名


都市壮年における望ましい老後の生活像

著者名

児玉好信,古谷野亘,岡村清子,安藤孝敏,長谷川万希子,浅川達人

雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 17 ( 1 ) : 66-73, 1995
抄録
本研究の目的は,都市部に居住する壮年が老後の暮らし方としてどのようなことを望んでいるのかを構造的に明らかにすることである.調査は,東京都練馬区に居住する45〜64歳の男女を対象に実施され,617人より回答を得た.望ましい老後の暮らし方については41の質問項目を設け,それぞれについて「そう思う」「そうは思わない」のいずれかで回答を求めた.質問内容は4つの領域に分類され,それぞれ「努力と諦め」「自律と同調」「活気と静穏」「参加と離脱」となっている.
数量化3類による解析の結果,「安定志向-変化志向」「同調志向-自己主張」の2つの筋道があることが明らかになった.ここで重要なことは,2つの筋道の両極が,都市に居住する壮年にとって,いずれも望ましい老いのあり方として選択されていたことである.このことは,日本人に特有の幸福な老いの要素が存在している可能性,そして都市壮年の老後の生活に対する考え方がアンビバレントであることを示唆している.