論文名 |
老親と別居子の関係;団地に居住する女性老人の場合
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著者名 |
横山博子,岡村清子,松田智子,安藤孝敏,古谷野亘
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
119-124,
1994
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抄録 |
公団賃貸住宅団地に居住する同居子のいない女性老人170人より,別居子の一人ひとりについて,その基本属性と老親子関係の態様に関する情報を得て,老親子関係を規定する子どもの属性について検討した.老親子関係は,同伴行動,情報的・情緒的サポート,手段的サポートの有無により把握した.分析の結果,同伴行動では子どもの属性のみが,情報的・情緒的サポートでは老親の属性のみが,そして手段的サポートでは老親と子どもの属性の双方が,これらの関係の有無と有意に関連していた.老親子関係に有意な影響を及ぼしていた子どもの属性は性と距離であって,息子より娘,また老親の近くに居住する子どもほど,老親との間に密接な関係を有していた.
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論文名 |
特別養護老人ホームにおける痴呆性老人の処遇の工夫について
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著者名 |
栗須妙,堀尾栄,原田重樹,落合将則,西元幸雄,川村耕造
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
125-135,
1994
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抄録 |
痴呆性老人の生活の質の向上に必要な要件の1つとして,情緒的安定の確保が考えられる.筆者らはこれまで,情緒的安定と物理的および社会的環境の間に相互関係がみられるかについての検討を行い,その結果として,社会的環境における工夫の1つとしてコンタクトパーソン(以下,CP)とよぶ心理社会的対応を専門に行うスタッフの配置が有効であることを示唆してきた. 今回の研究においては,CPの実践する処遇プログラムの効果について評価し,老人施設における痴呆性老人の処遇方法について検討することを目的とした. 処遇の効果測定は,ケースワークで用いられる統制群実験計画法および単一個体実験計画法の併用で行った.その結果,CPとよぶ心理社会的対応を行う専門スタッフの存在は,痴呆性老人の処遇現場において有効であり,痴呆性老人の混乱した世界を正常化するために配置するという工夫は,有効であるという結論を得た.
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論文名 |
要介護老人における在宅福祉サービス利用の実態および介護者の疲労状態との関連
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著者名 |
横山美江,清水忠彦,早川和生,由良晶子
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
136-149,
1994
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抄録 |
大阪府下に在住する要介護老人471人とその介護者に対し,1991年8月から1992年10月にかけて,在宅福祉サービス利用状況の実態について調査した.さらに,在宅福祉サービスの利用効果を検討する1つの指標として,蓄積的疲労徴候調査(労働意欲の特性を除く)を用いて数量化した介護者の疲労状態を分析し,以下の知見を得た. (1)
デイケアサービス,ショートステイ,ならびにヘルパーの利用者は,非利用者に比べ一日中寝たきりか,屋内の生活においても介助を要する者の比率が有意に高かった.デイケアサービス,およびショートステイの利用者では,中等度から重度の精神症状を有する者や排泄の介助を要する者の比率が有意に高かった.とくに,デイケアサービスでは約7割の者が中等度から重度の精神症状を有していた. (2)
介護者の疲労状態は,ショートステイやヘルパーの利用状況では関連が認められなかった.しかし,デイケアサービスの利用状況では,蓄積的疲労徴候調査の調査項目のうち,気力減退を除くすべての特性で利用状況と関連が認められ,利用者の介護者における疲労感が強かった. (3)
特別養護老人ホームなどに老人を入所させたいと希望する介護者は,心身とも極度に疲労していることが示唆され,とくに精神面での疲労は重度であった.
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論文名 |
特別養護老人ホームにおける個別介護プログラム作成のための基礎的研究;要介護高齢者の介護の程度および個体要因と介護時間の分析
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著者名 |
筒井孝子
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
150-156,
1994
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抄録 |
本研究は,高齢者の特徴に即した個別介護プログラム設計のための基礎資料を得ることをねらいとして,特別養護老人ホーム入所者を対象に,介護職員が入所者個々人の食事,排泄,入浴,更衣の各介護に要する時間(以下,介護時間)とその介護を受ける高齢者の知的および身体状況等とその関連性を検討することを目的とした.その結果は以下のとおりである. (1)
高齢者の排泄に関する介護時間は,運動能力と知的能力との関連性が高く,これらの能力が低い者ほど介護時間が長くなることが示され,この結果をさらに分析したところ,介護時間は一元化される可能性が示された. (2)
更衣,入浴介護時間は,知的能力の程度が介護時間に関連している. (3)
食事介護時間は,運動能力と視力障害が関連していることが明らかにされた.
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論文名 |
配偶者との死別に関する縦断研究;死別後の孤独感の変化
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著者名 |
岡村清子
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
157-165,
1994
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抄録 |
死別後の経過年数によって孤独感がどのように変化するのかを,縦断研究によってみた.第1回調査は,死別後1年〜1年6か月を経過した55歳以上の男女を対象として,第2回調査は,死別後3年7か月〜4年1か月を経過した同一の対象者に対して調査を行い110人の回答を得た. その結果は以下のとおりである.第1に,UCLA孤独感尺度の得点は変化していなかった.第2に,性と要因の二元配置の分散分析の結果,孤独感の関連要因が異なっており,1年〜1年6か月では交互作用がみられる要因が多く,健康状態や家族や経済などの死別後の生活の変化との関連がみられ,男性で関連があった.第3に,死別後3年7か月〜4年1か月では,性の主効果がみられ,男性で高くなっていた.第4に死別後の経過年数にかかわらず,子どもの有無,ソーシャルサポート,社会参加活動の有無が孤独感に関連していた.
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論文名 |
老人の死生観とその関連要因
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著者名 |
黒田研二,青木信雄,井上学,久泉広子,山田尋志,秋山正子
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雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
(
2
)
:
166-174,
1994
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抄録 |
老人施設の入所者と在宅サービスの利用者180人(男性52人,女性128人,平均年齢80.7歳)に面接調査を行った.余命についての態度によって「短命期待群」「長命期待群」「その他群」の3群に分け,性別,年齢,死生観,身体能力,活動能力,生活満足度について比較した.また,数量化II類を用いた多変量解析によって「短命期待群」と残りの人びととを比較して,「短命期待群」がどのような特徴を有しているかを分析した.「短命期待」に対しては,高齢(85歳以上),聴力や視力低下,仏壇・位牌の守りなど宗教的行事を行っていないこと,低い生活満足度,低い知的能動性,食事の用意など手段的ADL(activities of daily living)の低下,家族・友人の相談にのるといった社会的役割の欠如が強く関連していた.老人ホームなどでは,単に身体的ADL面での介助にとどまらない,知的能動性や生活満足度を保持し,鼓舞する支援が求められている.
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論文名 |
中高年対象訪問面接調査における欠測率
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著者名 |
安藤孝敏,岡村清子,横山博子,松田智子,古谷野亘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,
15
( 2 ) : 175-180, 1994
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抄録 |
都市部の中高年齢者を対象とする訪問面接調査における欠測について検討した.回答者のうち欠測のないものは85.2%であった.104の質問項目のうち欠測率が最も高かったのは,夫婦単位の収入額(欠測率7.49%)であり,ほかに欠測率が1%を超える質問項目はなかった.収入額の欠測は男性より女性に多く,意図的な拒否であるよりも,不明,わからないという意味での欠測であった可能性が示唆された.
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