論文名 | 高齢者の視覚と関連した失認;視覚失認 |
著者名 | 吉田 瑞,高山吉弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):823-828,2006 |
抄録 | 視覚失認(visual agnosia)は視覚認知メカニズムの仮説と表裏一体の関連をもっていることを指摘した.直列型視覚認知モデルに準拠した古典的な診断は,統覚のレベルの障害による統覚型視覚失認と,統覚のレベルは保たれ連合のレベルの障害である連合型視覚失認とに分けられてきた.しかし,視覚失認は複数の病態を含むものとの指摘もなされている.視覚失認の責任病巣に関しては,後頭-側頭葉損傷が重視されているが,いまだ十分解明されていない. |
キーワード | 視覚失認,連合型視覚失認,統覚型視覚失認 |
論文名 | 高齢者の視覚と関連した失認;相貌失認 |
著者名 | 板東充秋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):829-837,2006 |
抄録 | 相貌失認(prosopagnosia)は,相貌に選択的な視覚性失認であり,診断は,(1)視力や視野が,それで相貌認知障害を説明できない程度に保たれ,(2)自分の顔やまわりの人の顔を視覚的に同定できず,(3)他の感覚モダリティや言語記述による呈示で同定できる,ことにより行う.相貌の異同判断で,統覚型・連合型の区別をすることもある.相貌に専門化した視覚認識装置があるのか,より一般的な過程の問題なのかは明らかでない.病巣は,右紡錘回や右後頭葉下部と右側頭葉前部が重要とされる.進行性相貌失認や発達性相貌失認の報告がある. |
キーワード | 相貌失認,統覚型,連合型,紡錘回,側頭葉 |
論文名 | 高齢者の視覚と関連した失認;同時失認 |
著者名 | 武田克彦,海野聡子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):838-843,2006 |
抄録 | Wolpertはいくつかの要素から成り立っている複雑な絵について,その各要素は正しく答えられるが,その絵全体の意味をとらえられないことを同時失認と呼んだ.しかしLuriaは,同時に1個より多くの対象を見たり,注意を向けたりできないBlint症候群の1つの症状を指してこの同時失認(simultanagnosia)という語を用いた.本稿では,後者の意味での同時失認の症状,検査法,病巣,機序などについて述べた.Farahはさらに,背側型と腹側型の同時失認に分けており,それを紹介した. |
キーワード | 要素と全体,Balint症候群,両側頭頂葉損傷,背側型同時失認,腹側型同時失認 |
論文名 | 高齢者の精神・神経疾患と幻視;脳器質性疾患における幻視 |
著者名 | 平山和美,森 悦朗 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):844-852,2006 |
抄録 | 高齢者で脳器質性疾患に伴って生じる幻視のうち,1.同名性の盲に伴う盲視野内幻視(光視と複雑幻視),2.脳脚性幻覚症(中脳のみでなく,橋や視床の病変で起こる場合も含め),3.パーキンソン病とレビー小体型痴呆の幻視について述べた.それぞれの病態の,幻視の特徴,出現頻度,責任病巣,機序についての仮説,治療法などを記した.3者の関係についても若干の考察を行った. |
キーワード | 幻視,同名性半盲,脳脚性幻覚症,パーキンソン病,レビー小体型痴呆 |
論文名 | 高齢者の精神・神経疾患と幻視;シャルル・ボネ症候群 |
著者名 | 堀 宏治,山本秀樹,小西公子,太田晴久,工藤行夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):853-857,2006 |
抄録 | シャルル・ボネ症候群(CBS)は18世紀にスイスの哲学者であるCharles Bonnetが報告した病識のある幻視症状を主体とする症候群である.本症候群はまれとされてきたが,眼科疾患を有する者では10%程度の頻度でみられるとされる.また,感覚器機能や中枢の老化性低下が認められ,社会的孤立が多くなる高齢者ではとくに多く認められるとされている.CBSの発生機序として,視覚感覚入力の低下とコリン系の低下を考察し,MCI(軽度認知機能障害)に準ずる薬物療法の必要性を考察した. |
キーワード | Charles Bonnet syndrome,認知症,幻視,病識 |
論文名 | 高齢者の妄想と関連した視覚異常; 高齢者の妄想性同定錯誤症候群と視覚 ― カプグラ症候群を中心として ― |
著者名 | 大東祥孝 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):858-865,2006 |
抄録 | カプグラ症候群,フレゴリ症候群,相互変身症候群,自己分身症候群からなる「妄想性同定錯誤症候群」について概説し,重複記憶錯誤との関係にふれた.さらに,カプグラ症候群の発現機序仮説として,「相貌失認の鏡像」仮説と,「自他意識障害」仮説について言及した.カプグラ症候群は,「妄想」を認知神経心理学の視点から把握することが可能な格好の対象であり,新たな神経心理学の動向を反映する斬新な知見であることを指摘した. |
キーワード | カプグラ症候群,重複記憶錯誤,「相貌失認の鏡像」仮説,「自他意識障害」仮説,右半球損傷 |
論文名 | "高齢者の妄想と関連した視覚異常; 幻視を前景とした幻覚妄想状態" |
著者名 | 古野毅彦,濱田秀伯 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):866-869,2006 |
抄録 | 高齢者には意識障害や認知症が明らかでなく,幻覚妄想を前景とする病態がしばしば認められる.従来よりパラフレニー,メランコリー,遅発統合失調症,遅発パラフレニー,接触欠損パラノイドなどの疾患概念が提唱されてきた.これらの概念について簡単にふれたうえで,高齢者の幻覚妄想の特徴を示し,幻視を呈した例としてメランコリーの症例を呈示した.従来退行期うつ病の名で長く独立性が議論されてきたメランコリーは妄想性障害としてとらえ直すことができると考えられた. |
キーワード | 高齢者,幻視,パラフレニー,メランコリー,妄想性障害 |
論文名 | 高齢者の妄想と関連した視覚異常; 幻視を前景とした幻覚妄想状態 |
著者名 | 古野毅彦,濱田秀伯 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(8):866-869,2006 |
抄録 | 高齢者には意識障害や認知症が明らかでなく,幻覚妄想を前景とする病態がしばしば認められる.従来よりパラフレニー,メランコリー,遅発統合失調症,遅発パラフレニー,接触欠損パラノイドなどの疾患概念が提唱されてきた.これらの概念について簡単にふれたうえで,高齢者の幻覚妄想の特徴を示し,幻視を呈した例としてメランコリーの症例を呈示した.従来退行期うつ病の名で長く独立性が議論されてきたメランコリーは妄想性障害としてとらえ直すことができると考えられた. |
キーワード | 高齢者,幻視,パラフレニー,メランコリー,妄想性障害 |