老年精神医学雑誌 Vol.17-7
論文名 認知症における非薬物療法研究の課題と展望
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):711-717,2006
抄録 認知症を対象とした非薬物療法の臨床的重要性は広く認識されているが,他方,アメリカ精神医学会のガイドラインにおいても,わが国のアルツハイマー病治療ガイドラインにおいても,非薬物療法の効果を実証するエビデンスについては不十分だとされている.この概論では,2つの治療ガイドラインと,過去10年間に,老年精神医学雑誌に掲載された論文を検証して,非薬物療法の効果に関する研究の課題と展望を論じた.
キーワード 非薬物療法,認知症,エビデンス,研究計画
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論文名 精神療法・認知行動療法
著者名 坂爪一幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):718-727,2006
抄録 認知症への精神療法・認知行動療法には,認知機能・能力,心理反応,行動の各レベルの理解が必要である.精神療法では,心理的安定のために,精神力動的療法,支持的集団療法,回想法,現実見当識療法,治療的レクリエーション療法などが実施されている.認知行動療法では,認知機能・能力や行動の形成・除去,制御・監視,獲得の効率化のために,各種の技法が実施されている.対象者に適合した各技法の適切な適用が大切である.
キーワード 精神療法,認知行動療法,心理的安定,認知・心理・行動の変容,認知症の問題別介入
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論文名 家族療法と家族支援
著者名 宮永和夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):728-735,2006
抄録 家族に必要な支援について解説した.症状,社会的支援・資源,経済的サポートなどの情報提供や,家族会などの自助活動を勧めることは,家族の対処技能を向上させ,家族の介護力を増強することを述べた.また,告知後の本人や家族の反応に対応したケアや家族支援とともに,ターミナル・ケアへの必要性を解説した.さらに,認知症を疾患でなく,障害者として対応すべきことを論じた.
キーワード 家族支援,介護保険,ターミナル・ケア,障害者,家族会
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論文名 認知リハビリテーション
著者名 松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):736-741,2006
抄録 脳活性化パラダイムによる学習療法,誤りなし学習理論に基づく記憶訓練(例:間隔伸張法,手がかり消去法),メモリーエイドの使用が,認知症に効果的な介入として注目されている.さらに最近では,抗認知症薬と認知訓練を組み合わせた治療によって,抗認知症薬のみによる治療を受けた場合よりも,病初期の進行を抑制できるとする報告もある.しかし,これらの治療の成功には,治療者の力量が大きくかかわっている.
キーワード アルツハイマー病,認知リハビリテーション,認知症,非薬物療法,心理アセスメント
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論文名 作業活動療法 ― 活動療法,ペット療法を中心に ―
著者名 杉村公也
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):742-748,2006
抄録 認知症のリハビリテーションとして活動療法が患者の活動性の維持,自立性の向上,介護負担の軽減,QOLの向上などの観点から試みられている.活動療法には日常生活活動,日常生活関連活動などの生活活動療法,レクリエーション,スポーツなどの非生産的活動療法,手工芸やお菓子作りなどの生産的活動療法などがある.またペットと触れあったり,飼育したりして,心理的な安定を図るペット療法も近年試みられ,認知症患者のQOL向上に効果を認めている.
キーワード 活動療法,日常生活活動療法,生産的作業活動療法,治療構造,ペット療法
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論文名 芸術療法 ― 美術療法と音楽療法 ―
著者名 宇野正威
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):749-756,2006
抄録 美術療法と音楽療法について,その意義と治療法として効果を客観化する際の問題点について述べた.美術療法は,作品の視覚を通じた,また制作活動中の会話を通じたコミュニケーションを提供し,社会的つながりを部分的にも回復する.音楽療法は,音楽により感情を揺さぶり,過去を回想する契機を与え,音楽を「する」ことによる感動が主観的な満足感を与える.これらをリハビリテーションとしてみたとき,認知機能障害に対する効果はきわめて限られるが,本人のもつ残存機能と潜在機能を引き出し,QOLを高める価値をもっている.
キーワード 認知症,美術療法,臨床美術,音楽療法,リハビリテーション
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論文名 運動療法
著者名 朝田 隆,木之下 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(7):749-756,2006
抄録 運動が認知症の生活リハビリテーション療法あるいは予防法として注目されている.とくに有酸素運動は前頭前野がかかわる遂行機能や注意力を高めるとしてエビデンスを蓄積しつつある.運動によってアルツハイマー病など認知症のさまざまな症状への治療効果を示すメタアナリシスが報告されている.従来の研究には不十分な点も少なくない.しかし認知症に対して,運動に代表される生活習慣に立脚した治療法を開発することは不可欠である.
キーワード アルツハイマー病,認知症,運動療法,有酸素運動,メタアナリシス
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