老年精神医学雑誌 Vol.17-12
論文名 加齢による睡眠覚醒の変化
著者名 田中和秀,市村麻衣,森信 繁,大川匡子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1259-1264,2006
抄録 加齢とともに睡眠覚醒のリズムや睡眠構築,睡眠の質が変化する.高齢になるほど寝つきにくく,眠りが浅く,よく眠ったと感じる睡眠時間が短くなり,早朝覚醒・熟睡困難などさまざまな睡眠に関する問題がみられる.とくに認知症の高齢者では,脳の器質的・機能的低下により睡眠覚醒リズムを調節する生体時計機構が障害され,睡眠覚醒や活動のパターンが不規則になることが多い.また高齢者では睡眠障害から日中の覚醒水準が低下し,せん妄などの意識障害につながりやすい.
キーワード 加齢,光,睡眠,睡眠構築,認知症,せん妄
↑一覧へ
論文名 加齢による体温調節・概日リズムの変化
著者名 海老澤 尚
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1265-1271,2006
抄録 体温は概日リズム・睡眠の影響を受けて調節され,夜間低く,日中は高いという概日リズム性の変化を示す.高齢者では深部体温の変化の振幅が減少しており,これが高齢者の睡眠に影響している可能性がある.また,若年成人に比較して概日リズム,とくに睡眠覚醒リズムが前進しており,早朝覚醒,早い時刻の眠気を生じやすい.高齢者の早朝覚醒(睡眠覚醒リズムの前進)は,家族性睡眠相前進症候群とは異なり,概日リズム周期の短縮が原因ではない.
キーワード 高齢者,睡眠,深部体温,メラトニン,概日リズム
↑一覧へ
論文名 睡眠・概日リズムに影響するホルモン変化
著者名 林 和俊,深谷孝夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1272-1277,2006
抄録 日本における不眠の疫学調査では男性より女性,若年者より高齢者の有病率が高い.睡眠および概日リズムに影響するホルモンとして,性腺ホルモン(エストロゲン,プロゲステロン,テストステロン),メラトニン,CRH,GHRHをあげ,これらのホルモン作用の加齢に伴う変化を概説した.
キーワード 加齢,睡眠,概日リズム,ホルモン
↑一覧へ
論文名 高齢者の不眠とその対応
著者名 内村直尚
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1278-1284,2006
抄録 高齢者の不眠では精神生理性不眠,うつ病,むずむず脚症候群,周期性四肢運動障害や睡眠時無呼吸症候群などの鑑別が重要である.また,不眠の原因となる疾患を有する場合はその治療を行うとともに,生活習慣の改善が必要である.睡眠薬投与時の注意点としては,高齢者では薬物の代謝や排泄機能が低下し,副作用が出現しやすいので,成人の半量程度から投与すべきである.さらに,転倒や翌日への持ち越し効果による日中のQOLの低下が生じやすいので筋弛緩作用が少なく半減期が短い睡眠薬が使いやすい.
キーワード 高齢者,不眠,睡眠衛生,睡眠薬
↑一覧へ
論文名 高齢者の睡眠時無呼吸症候群
著者名 足立浩祥,杉田義郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1285-1291,2006
抄録 中年期同様,高齢期においても睡眠時無呼吸症候群は存在し,その有病率は中年期よりも高い.しかし,疫学的側面,臨床症状,身体・精神機能への影響,治療の要否など,中年期との相違点も多く,いまだ結論のでていない部分も多数残されている.本稿では,高齢者の睡眠時無呼吸症候群に関して,最近になって集積されつつある研究結果を概観し,その問題点も含め,今後への残された課題を提示していくこととする.
キーワード 睡眠時無呼吸症候群,高齢者,日中の眠気,認知機能
↑一覧へ
論文名 高齢者のレム睡眠行動異常症
著者名 三上章良,足立浩祥
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1292-1302,2006
抄録 レム睡眠行動異常症は,夜間睡眠中に生じる異常行動で,自分自身やベッドパートナーが負傷する危険もある.異常行動は,筋緊張の消失を伴わないレム睡眠時に,悪夢に支配されて生じる.睡眠の生理を知ったうえでの問診にてほぼ診断可能であるが,正確な診断には,監視下での睡眠ポリグラフ検査が必須である.男性高齢者でみられることが多く,神経変性疾患との関連に注意が必要である.若年者にもみられることがあり,ナルコレプシーに併発・薬物性・中枢神経疾患などが原因となる.
キーワード レム睡眠行動異常症,夜間の異常行動,悪夢,睡眠ポリグラフ検査,神経変性疾患
↑一覧へ
論文名 夜間徘徊,不穏,昼夜逆転とその対応
著者名 谷向 知,谷向 仁
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(12):1303-1309,2006
抄録 徘徊,不穏,昼夜逆転などの症状は高齢者,とくに認知症ではしばしば観察される症状であり,認知症患者はもとより介護者にとっても生活の質が脅かされることにつながる.これらの症状の病態を一元的に説明することは困難であり,その対応にも創意工夫が必要である.介入には非薬物的療法を優先して考え,薬物療法を行う際にもその症状だけに目を奪われるのではなく,状態像をきちんと把握し,その限界を知って行うことが重要である.
キーワード 徘徊,夕暮れ症候群,不眠,非薬物的介入,早期診断
↑一覧へ