老年精神医学雑誌 Vol.17-11
論文名 クリニカルパスとは
著者名 熊川寿郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1131-1140,2006
抄録 Case Managementの取組みを背景に,1983年にDRG/PPSが導入されたことを契機として急性期医療にClinical pathが導入された.Clinical pathは1958年に産業界で開発されたCritical path methodを参考にして当初は入院期間の短縮・コスト削減を目的に開発された.その後Clinical pathはケアの標準化ツールとして認識され,その導入目的は医療の質と効率の向上へと変化した.一方ヘルスケアシステムは単純系機械型システムと複雑系適応型システムが融合したシステムであり,ケア標準化の最も代表的なツールであるClinical pathは単純系機械型システムにおいてのみ有効に機能する.臨床医にはダイナミックに変化する患者の疾患や病態を的確に把握し,どちらのシステムで対応するべきかを正確に判断し,そのうえでClinical pathを使いこなす能力が求められている.
キーワード PERT/CPM,Gantt chart,Case Management,DRG/PPS,Clinical path,ヘルスケアシステム,単純系機械型システム,統計的管理手法,複雑系適応型システム
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論文名 老年精神医療におけるクリニカルパスの意義
著者名 新井平伊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1141-1146,2006
抄録 アルツハイマー病のクリニカルパス研究をとおして,老年精神医療におけるクリニカルパスの意義について論じた.多様性を含んだ老年精神医療でも頻度が高い診断目的や治療に照準を合わせたパスは医療の質の向上とともに医療経済的にも有用なことが示唆されたが,なかでも今後は診断・治療ガイドライン的意味合いをもつメディカルモデルとしての役割をもち記入用紙も含んだ診療録的パスが望ましいと思われる.
キーワード 老年精神医療,アルツハイマー病,クリニカルパス,医療の質,医療経済
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論文名 アルツハイマー型認知症患者におけるクリニカルパスの問題点
著者名 後藤貴吉,田口真源
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1147-1152,2006
抄録 アルツハイマー型認知症は各種認知症疾患のなかで最多であり,記憶障害のほかに,精神症状や行動障害により介護が困難となり,入院治療を要する症例も多い.元来,認知症に対するクリニカルパスの導入は困難といわれていたが,近年,その必要性が叫ばれている.アルツハイマー型認知症は緩徐進行性であり,時期に応じたクリニカルパスを要するが,本稿では,とくにアルツハイマー型認知症の入院治療における問題点を列挙し,その解決方法の一法を述べる.
キーワード アルツハイマー型認知症,BPSD,クリニカルパス,偶発的合併症,老人性認知症疾患治療病棟
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論文名 アルツハイマー病患者のクリニカルパス ― BPSDを対象とした場合,とくに在宅介護を支援する ―
著者名 横山裕哉,佐藤雅美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1153-1160,2006
抄録 クリニカルパスが活用され,実際に効率化と医療の質向上に役立つためには,対象をより具体的に限定したほうがよい.自宅に帰り,在宅生活を続けるということを目標として入院したBPSDを有する患者を対象とするクリニカルパスを作成した.作成の流れを紹介し,治療の中身にもふれてみたい.
キーワード アルツハイマー病,BPSD,クリニカルパス,自宅退院,Neuropsychiatric Inventory(NPI)
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論文名 血管性認知症患者のクリニカルパス
著者名 赤岩靖久,宮下光太郎,北風政史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1161-1168,2006
抄録 血管性認知症(VD)はわが国でアルツハイマー型認知症(AD)に次いで多いとされている.しかしVDの診断基準はいくつも提唱されており,それぞれの一致率は必ずしも高くなく診断の困難さを物語っている.また,VDは一般に広範虚血型,多発脳梗塞型,限局性脳梗塞型に大別されるが,それぞれの原因,症状はもとより治療法や進行抑制手段が異なるため的確な診断が重要である.クリニカルパスを利用することによって,treatable dementiaとしてのVDの診断および治療を効率的に行うことが可能であると思われる.
キーワード 血管性認知症,クリニカルパス,診断基準,DPC,treatable dementia
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論文名 レビー小体型認知症患者のクリニカルパス
著者名 小田原俊成
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1169-1176,2006
抄録 レビー小体型認知症(DLB)のクリニカルパス(CP)試案を提示した.DLBでは薬物過敏性やパーキンソニズムによる運動機能障害が出現しやすく,アルツハイマー型認知症とは異なる治療的アプローチが必要な場合があり,早期にDLBの鑑別診断を行うことは臨床的意義がある.認知症診療においてDLBのCPを利用することは,診療コストの削減のみならず,治療者間の診断精度のばらつきをなくし,早期に適切な治療・ケアプランを作成するために有益と思われる.
キーワード レビー小体型認知症,クリニカルパス,新臨床診断基準,診断,治療
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論文名 前頭側頭葉変性症患者のクリニカルパス
著者名 織田辰郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1177-1187,2006
抄録 前頭側頭葉変性症(FTLD)は,ピック症状を中核とする認知症症状群である前頭側頭型認知症(FTD)に,失語症候群である進行性非流暢性失語(PA)と意味性認知症(SD)を加えて構築された臨床症候群である.FTLDの脳萎縮部位にはvariationがあり,これに対応して臨床像は多様である.FTDの治療は手立てが少ないが,近年,SSRIなどの薬物療法と,ルーティン化療法と呼ばれるリハビリテーション療法が注目されている.クリニカルパスにおいては,診断パスでは診断精度を高め標準化することが第一義であり,BPSD治療用パスにおいてはSSRIなどの薬物療法と,ルーティン化療法を基本におくことが望ましい.
キーワード 前頭側頭葉変性症,前頭側頭型認知症,クリニカルパス,薬物療法,ルーティン化療法
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論文名 特発性正常圧水頭症患者のクリニカルパス
著者名 石川正恒,鈴木孝征
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,17(11):1188-1196,2006
抄録 特発性正常圧水頭症は高齢者に多くみられ,歩行障害,認知障害,尿失禁などの症状を呈するが,高齢者には非特異的な症状であるために,他の類似疾患との鑑別が必ずしも容易ではない.しかし,診療ガイドラインに準拠した診断の流れを採用することによって,治療効果の高い症例を選択することが可能である.本稿では診断に重要な髄液排除試験および治療法として代表的な脳室腹腔シャント術の当科でのクリニカルパスについても概説した.
キーワード 高齢者,認知障害,歩行障害,脳室拡大,脳萎縮
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