論文名 | 高齢者の妄想 ― 総 論 ― |
著者名 | 馬場 存 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1027-1031,2006 |
抄録 | "(1)妄想を生じる高齢者の疾患の簡略な概観を行った. (2)認知症の妄想の出現頻度や内容についてふれた. (3)高齢化した若年・壮年期発症の統合失調症に関しては,長期経過に伴う妄想内容の変化に関する議論を参照し,高齢発症の統合失調圏の疾患については,おおまかな歴史的流れを一瞥した. (4)高齢者の妄想は,疾患横断的に共通点をもつ可能性があり,その複合的な病像を踏まえて扱うことの重要性を指摘した. " |
キーワード | 高齢者,妄想,認知症,統合失調症,妄想性疾患 |
論文名 | 遅発パラフレニー |
著者名 | 小野江正頼 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1032-1036,2006 |
抄録 | 遅発パラフレニー(late paraphrenia)という疾患概念を最初に定義したのは1955年のRothであるとされる.その後,その概念をめぐっては,統合失調症との異同を含めて長年に及ぶ議論を巻き起こした.ICD-10やDSM-Wに採用されず,近年用いられることは少なくなったものの,女性優位の性差など未解明の部分が多く,それらの研究は今後の統合失調症研究に寄与する可能性があると思われる. |
キーワード | late paraphrenia,late-onset schizophrenia,delusional disorder |
論文名 | 遅発緊張病 |
著者名 | 古茶大樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1037-1041,2006 |
抄録 | Sommerによって提唱された遅発緊張病(late catatonia)は,次のような特徴をもつ初老期の精神病である.@人生の後半期に主として女性に発症,Aしばしば心因を発症の契機とする,B初期病像は心気・抑うつ状態,C不安・焦燥を伴う突発性の精神運動興奮を反復,Dやがて種々の程度の精神荒廃に至る,Eいずれかの段階で昏迷,無言,言語常同,拒絶などが出現,F若年型と比べて高度の昏迷,カタレプシー,姿勢常同,命令自動,衒奇などは少ない. |
キーワード | late catatonia,late-onset schizophrenia,stupor,climacterium,involution |
論文名 | 退行期メランコリー |
著者名 | 古野毅彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1042-1046,2006 |
抄録 | 退行期メランコリーはクレペリンが教科書第5版で退行期の精神病の下位項目として確立した概念である.その後,第8版で大半が躁うつ病に吸収され,概念は消失する.その後も退行期メランコリーの独立性に関する議論は近年まで続いたが,現在の国際的診断基準では独立性は認められておらず気分障害に含められている.しかしこの概念に相当する患者は現在も少なからずおり,治療がむずかしい,自殺企図に結びつきやすいなどの特徴があり,今なお臨床的に重要なentityと考えられる.本稿ではクレペリンの退行期メランコリーを彼の教科書第6版の記述に沿って概観する.その記述は100年経った今なお臨床上大いに参考になると思われた. |
キーワード | メランコリー,クレペリン,気分障害,躁うつ病,妄想 |
論文名 | コタール症候群 |
著者名 | 森本陽子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1047-1051,2006 |
抄録 | 人生の後半期にみられることが多いとされるコタール症候群について紹介した.その症状として原典には,不安,否定妄想,不死の観念,巨大妄想,劫罰あるいは憑依の観念,知覚の変化,自殺および自傷の傾向,反対症,拒食,筋緊張,幻覚などがあげられている.この症候群の中心をなす否定妄想に出会うことは,不安の強いうつ状態などにおいては決してまれではないと思われる. |
キーワード | メランコリー,否定妄想,巨大妄想,心気妄想 |
論文名 | 寄生虫妄想の“bug”は身体のどこに寄生するか ― Merleau-Pontyの現象学からの考察 ― |
著者名 | 深津尚史,今岡信浩,深津孝英,兼本浩祐,林 拓二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1052-1056,2006 |
抄録 | 寄生虫妄想の本質は,幻覚なのか妄想なのかいまだ決着がついていない.今回,寄生虫妄想症の2症例を,Merleau-Pontyの身体論から症候学的に検討し,生物学的な病態生理を考察した.その結果,寄生虫妄想のムシは,<身体図式>⇒<スティル>⇒<肉>とMerleau-Pontyの身体性を移動するにつれ,「体感幻覚」⇒「妄想知覚」⇒「自我障害」と精神症候学的に“変態”すると解釈できた. |
キーワード | delusion of parasitosis,Merleau-Ponty,body schema,somatosensory,cenesthetic hallucination |
論文名 | 高齢者における口腔内セネストパチー |
著者名 | 中 奈央子,小野 繁 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1057-1061,2006 |
抄録 | セネストパチーはその病理に精神科的疾患が存在し一分症として出現するものと,セネストパチー単独発症あるいはセネストパチー様症状の2つに大別できる.口腔領域のセネストパチーは身体部位別にみても頻発する傾向があるとされ歯科を受診するケースが多いが,対応に苦慮することがある.口腔領域という特殊性に加え,加齢による変化も大きい部位であることなどが要因と考えられることから,これらを病態説明として取り入れながらアプローチしていくことが重要と考えられる. |
キーワード | セネストパチー,口腔領域,病態説明,高齢者 |
論文名 | 高齢者の嫉妬妄想 |
著者名 | 船山道隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1062-1066,2006 |
抄録 | 高齢者で出現する嫉妬妄想は,老年期の性の特徴,喪失体験,自己存在価値の低下と復権の構造,物盗られ妄想との共通点など,ライフサイクルの視点から研究されている.パラノイアに出現する嫉妬妄想は,共同体被害妄想という側面からとらえることもできる.治療者は,妄想をもつことによって病者がなにを訴えようとしているかを考え,妄想をもたざるをえなかった患者の生きていきにくさに共感する基本姿勢が必要である. |
キーワード | 高齢者,嫉妬妄想,性,物盗られ妄想,パラノイア |
論文名 | 妄想と認知障害 ― 妄想の統一的理解に向けて ― |
著者名 | 武井茂樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1067-1071,2006 |
抄録 | 認知症,難聴,片麻痺無視,統合失調症,側頭葉てんかんの妄想に対して,認知障害として説明可能な仮説を提唱した.第1段階では,感覚受容器・感覚性伝導路,大脳辺縁系や右半球において,外界と矛盾する誤った知覚情報が生み出される,または正しい知覚情報が欠損する.第2段階では,おもに右半球にある矛盾を検出する機構が誤った知覚情報を左半球に過剰に転送するか,正しい知覚情報を左半球に送ることができない.第3段階では,おもに左半球が誤った情報をもとに,あるいは正しい情報の欠損から誤った外界モデルつまり妄想を形成する.こうした共通の過程を想定することで,さまざまな疾患の妄想形成を統一的に説明できる可能性を論じた. |
キーワード | 妄想,認知症,片麻痺無視,統合失調症,側頭葉てんかん |
論文名 | 〈原典紹介〉
高齢者の接触欠損パラノイドと統合失調症性疾患の症状特性について(抄訳) (Janzarik W : ber das Kontaktmangelparanoid des h |
著者名 | 久江洋企,古茶大樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,17(10):1072-1077,2006 |
抄録 | |
キーワード |