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- 6月5日(水) 9:00〜10:00 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : ケア・非薬物療法
- 座長: 稲庭 千弥子((医)久幸会今村病院ニコニコ苑)
- P-A-1
- ルーチン化療法で在宅介護が可能となった前頭側頭型認知症の1症例
- 田端 一基 ( 医療法人社団旭川圭泉会病院 )
- 前頭側頭葉変性症(FTLD)は,脱抑制や常同
行動などの特徴的な行動異常のため認知症のなか
でも介護困難な疾患である.FTLD の問題行動
に対する非薬物療法としては常同行動を利用した
ルーチン化療法がある(Tanabe et al, 1999).
しかし本療法による実際の治療例は筆者が検索す
る限り少ない.今回われわれはFTD の問題行動
にルーチン化療法が有効で,かつ在宅介護が可能
となった1 例を経験したので報告する.
【倫理的配慮】本報告に際して,家族から同意を
得た.症例の匿名性の保持,個人情報の流出には
十分配慮した.
【症例提示】症例は72 歳男性.3 歳時に両側の聴
覚を消失し手話で会話を行う.X−3 年(68 歳)
頃より落ち着きなく家を出たり入ったりする,近
所のコンビニエンスストアでたばこを万引きし,
万引きしたことを全く悪びれず再度万引きした店
に入るなど行動異常が認められるようになった.
X 年には毎朝9 時に家を出て同じ店でビールを万
引きする,朝と午後に近所の保育園で父母の送迎
の車を勝手に誘導する,鼠径ヘルニアで入院した
病院で隣の入院患者の食事を勝手に食べるなどの
問題行動で対応困難になったためX 年6 月(71
歳時)に当院を受診した.精神症状としてわが道
を行く行動,時刻表的生活,常同行動,道徳感情
の低下が顕著であった.MMSE は課題に集中で
きず17 点,頭部CT は前頭葉,側頭葉に強い委
縮を認めた.臨床症状よりNeary ら(1998)の
診断基準によりFTD と診断,問題行動のため家
庭では介護困難なため入院した.入院後病棟内を
常同的に歩き回り,他患者の菓子を盗る,勝手に
他患者の下膳をする,食札を集めてまわるなどの
問題行動も認めスタッフが止めに入ると興奮した.
チアプリド,バルプロ酸による薬物療法も無効で
あった.長らく用務員として就労しておりを他人
の世話を好むという情報を家族から得たため,タ
オルたたみ等の病棟の業務の一部を手伝わせるル
ーチン化療法に基づいたアプローチを行ったとこ
ろ前述の問題行動は消失した.X 年9 月に退院し
たが在宅介護への移行に際し,平日はデイケア利
用,週末はショートステイを組み合わせルーチン
化療法に基づき他利用者の世話を手伝いするアプ
ローチを行い問題行動は認めず過ごせている.
【考察】本症例は常同行動が著しく入院を要し,
入院後は被影響性の亢進による行動も認め対応に
苦慮した.しかし他人の世話を好むという本症例
の特性を生かしルーチン化療法を用いたアプロー
チを行うことで問題行動は消失し他患者とのトラ
ブル,介護の負担も消失した.またルーチン化療
法は入院中または施設入所中の問題行動の軽減の
みでなく,本症例のように認知症デイケア,ショ
ートステイなど在宅介護を支援する施設において
もルーチン化療法を行うことでFTD の問題行動
を軽減することが可能であり,在宅介護の継続に
も有効な治療法と考えられた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-2
- 高齢者の在宅生活継続に対する支援の検討;TDASを用いた3年間の追跡調査から
- 福田 敏秀 ( 社会福祉法人こうほうえん )
- 【目的】2012.6 月厚生労働省より示された「これ
からの認知症施策の方向性」では,早期診断・早
期対応が大きく打ち出されている.しかし,現在,
認知症高齢者は行動障害が相当重度になるまで医
療やケアに繋がらず,在宅生活の限界を待って医
療機関が介入するケースも少なくない.在宅高齢
者の認知機能調査は容易ではなく実態把握の難し
さは,支援検討の上で大きな障壁といえる.そこ
で今回,タッチパネル式認知機能評価法(Touch
Panel Type Dementia Assessment Scale ;
TDAS)を用いて在宅高齢者を検討した.本研究
の目的は,在宅における高齢者の実態から,彼ら
の在宅生活継続に対する支援に示唆を得ることで
ある.
【方法】2008 年5−6 月の間,Y 市S 地域包括支
援センター管轄内において介護保険認定,要支援
1,2 の在宅高齢者31 人に対して,TDAS による
認知機能評価と要介護認定調査2006(基本調査)
を用いたADL 評価を行った.TDAS は世界的に
有効性が認知されているADAS(Alzheimer’s
disease assessment scale)をタッチパネル式コ
ンピューターを用いて簡単に行える.また,同居
家族に対し一部改訂したZarit 介護負担感尺度
(J-ZBI)調査を行った.本調査は同一対象者に
6 ヶ月〜1 年間隔で行う追跡調査であり,第1 回
調査2008.5 月に開始し第6 回調査2011.8 月に
終えている.今回,第1 回調査と第3 回(1 年後),
第5 回(2 年後)および第6 回調査(3 年後)を
比較分析した.解析は認知機能(TDAS 得点),
ADL,介護負担感(Zarit 得点)を目的変数とし
たロジスティック回帰分析を行った.
【倫理的配慮】対象者に調査説明し,協力依頼す
ると共に承諾書による同意を得た.
【結果】調査開始3 年後の第6 回調査にADL の
有意な低下がみられた(p<0.05).そこでADL
低下者をみたところTDAS 得点に有意な悪化が
あり,オッズ比30.06(95% 信頼区間;1.35−
670.95,p=0.032)であった.また,介護負担感
では主介護者が子とのとき有意な増大がみられ,
オッズ比11.21(95% 信頼区間;1.07−118.02,
p=0.044)であった.
【考察】要支援高齢者を3 年間経時的に検討した
ところADL に顕著な低下がみられ,これには認
知機能レベルが関連することが明らかとなった.
要支援高齢者の場合,ADL 中心の支援が多く
ADL 変化は注目され易い.しかし,今回の結果
から彼らのADL 低下に関連づけて,認知機能レ
ベルに注目する必要性があげられた.専門職者は,
高齢者が要支援状態にある時から,認知機能レベ
ルを把握し継続的に支援していかなければならな
い.TDAS は簡便な検査法であり,彼らの認知
機能レベルの把握に有用と思われる.また,在宅
において子が主に介護する場合,介護負担感が増
大することが明らかとなった.設問の中では,将
来の不安や頼られることに対する負担感が強くみ
られた.子が今後の介護量に不安を募らせる一方,
被介護者は子に対し要望等が言いやすく頼り易い
といった状況がうかがえる.家族介護者の介護負
担感は,高齢者の在宅生活継続に大きく影響する
ことから,専門職者には,特に子の在宅介護に対
する負担感に寄り添う支援が求められる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-3
- 居宅サービスを利用する高齢者を対象とした作業療法による包括的環境支援の効果;ランダム化比較試験
- 籔脇 健司 ( 吉備国際大学 )
- 【目的】介護保険の居宅サービス受給者数は,平
成24 年7 月利用分で3,375,205 人と制度開始当
初の3 倍を優に超え,介護予防の観点はますま
す重要視されている.高齢者において,介護状態
の重度化を予防し,地域生活の継続を推進するた
めには,心身機能への介入に加えて,本人のQOL
に影響する環境要因を包括的に支援する必要があ
ると考えられる.本研究の目的は,居宅サービス
を利用する高齢者を対象に,本人にとって必要な
生活行為の獲得を援助する作業療法における包括
的環境支援の効果をランダム化比較試験によって
明らかにすることである.
【方法】対象は全国8 施設の居宅サービスを新規
利用する65 歳以上の高齢者60 名とした.これ
らを作業療法による包括的な環境支援を行う介入
群と各施設の標準的なサービスを提供する対照群
の2 群に割り付けた.割付方法には,前期高齢
者と後期高齢者を区分して均等に割り付ける層化
ブロックランダム割付法を用いた.介入群には,
包括的環境要因調査票(Yabuwaki, et al., 2008)
を用いた作業療法を実施した.アウトカム尺度に
はSF-36 とN-ADL を用い,開始時(ベースライ
ン)と3 か月後に実施した.その後,対照群の
フォローアップとして,介入群と同様の作業療法
を3 か月間実施し,アウトカムを再度評価した.
統計学的解析には,IBM SPSS statistics 20.0 を
使用し,有意水準を5% とした.
【倫理的配慮】本研究は日本作業療法士協会課題
研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(研究
番号2010-03).
【結果】対象者は介入群29 名,対照群31 名に割
り付けられ,両群で年齢や性別,ベースラインの
SF-36,N-ADL に有意な差は認められなかった.
研究期間中のドロップアウトにより,分析対象者
は両群ともに27 名となった.介入群では包括的
環境支援によってSF-36 の全スコアとN-ADL
が向上したが,対照群ではSF-36 の身体の痛み,
活力,社会生活機能,精神的側面のサマリースコ
アとN-ADL 以外のスコアは低下した.両群のア
ウトカムの変化量をMann-Whitney U test によ
って検討したところ,SF-36 の身体機能,日常役
割機能(身体),日常役割機能(精神),役割/社
会的側面のサマリースコアの4 項目で介入群の
スコアが有意に向上していた(p<.05,d=.75).
対照群のフォローアップでは,日常役割機能(精
神)と役割/社会的側面のサマリースコアが向上
したが,多重比較(Bonferroni 補正)によって検
討したところ,有意な結果は得られなかった.
【考察】介入群のSF-36 スコアは,対照群と比較
して有意に向上したことから,居宅サービスを利
用する高齢者の主に役割や社会的側面の健康関連
QOL に対して,作業療法における包括的環境支
援の有効性が明らかとなった.また,対照群のフ
ォローアップ結果から,包括的環境支援は居宅サ
ービスの利用開始時より実施することが望ましい
と考えられる.今後は包括的環境支援の効用値に
よる検討を予定している.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-4
- 認知症の行動心理症状が大腿骨近位部骨折術後リハビリテーションへの参加に及ぼす影響;回復期リハビリテーション病棟における検討
- 田中 尚文 ( 東北大学大学院肢体不自由学分野,川崎こころ病院 )
- 【目的】大腿骨近位部骨折術後のリハビリテーシ
ョン(リハ)において,認知症は機能予後不良因
子ではあるが,合併する認知症が重度であっても
運動機能やADL は有意に向上することが示され
ている.リハによる機能予後改善はリハへの参加
状況と関連することが報告されているが,認知症
の行動心理症状(BPSD)がリハへの参加に及ぼ
す影響については明らかにされていない.本研究
の目的は,大腿骨近位部骨折術後のリハ目的で回
復期リハ病棟へ入院した患者を対象にして,
BPSD の有無によりリハへの参加状況が異なる
かを比較検討することである.
【方法】対象は,X 年4 月からX+1 年7 月まで
に大腿骨近位部骨折術後のリハ目的で回復期リハ
病棟へ入院した認知症合併患者である.入院リハ
はADL の向上が得られなくなるまで継続した.
リハへの参加状況はPittsburgh Rehabilitation
Participation Scale(PRPS)を用いて担当療法
士がリハ介入の度に評価した.PRPS はリハへの
参加状況を1〜6 点の6 段階でスコア化する観察
評価尺度であり,点数が高いほど良好な参加が得
られていることを示す.その代表値は入院中の全
スコアの平均値とした.BPSD は,Behavioral
Pathology in Alzheimer’s Disease Frequency
Weighted Severity Scale を用いて入院2 週目に
評価し,総点1 点以上をBPSD ありとした.対
象をBPSD あり群とBPSD なし群に分け,
MMSE とPRPS をマン・ホイットニーのU 検定
を用いて比較した.さらに,認知症の重症度を軽
度(MMSE20 点以上),中等度(10〜19 点),お
よび重度(9 点以下)に分けて同様に検討した.
なお,有意水準は0.05 未満とした.
【倫理的配慮】本研究は川崎こころ病院倫理委員
会の承認を得て実施した.対象患者および家族に
口頭と書面で説明して同意を得た.
【結果】対象は20 例であり,年齢は83.5±4.8 歳,
男性/女性は8/12 例,入院日数は81.6±15.7 日
であった.認知症の原因疾患は全例アルツハイマ
ー型認知症であり,BPSD は9 例に認めた.
BPSD あり群ではBPSD なし群よりもMMSE
(12.4±4.1 vs. 16.9±4.4)とPRPS(3.1±0.8 vs.
5.0±0.8)はいずれも有意に低かった.認知症の
重症度は,軽度4 例,中等度15 例,重度1 例で
あった.そのうちBPSD を認めたのは中等度認
知症の8 例と重度認知症の1 例であった.中等
度認知症においてBPSD あり群とBPSD なし群
の2 群間でMMSE(13.5±2.8 vs. 14.6±3.9)に
有意な差はなかったが,PRPS(3.1±0.8 vs. 5.1
±0.8)はBPSD あり群の方が有意に低かった.
【考察】本研究により,認知症を合併した大腿骨
近位部骨折術後患者のリハへの参加状況は,
BPSD の存在により阻害されることが示唆され
た.したがって,BPSD に対する介入はリハへ
の参加状況を改善させる可能性があると考えられ
た.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-5
- 信州大学医学部附属病院精神科での高齢者に対する電気けいれん療法の現況
- 荻原 朋美 ( 信州大学医学部精神医学講座 )
- 【目的】高齢者での薬物治療抵抗性の精神疾患に
対して,電気けいれん療法(以下ECT)は安全
性が高く有効な治療手段である.近年は90 歳以
上の超高齢者への施行についても報告が散見され
る.信州大学医学部附属病院精神科(以下当科)
でも,高齢者へのECT 施行例は近年増加傾向に
ある.高齢者に対するECT 施行の当科での現状
について報告する.
【方法】2007 年7 月から2012 年6 月までの5 年
間で,当科でECT を施行した症例を対象に,そ
の年齢,性別,診断,施行回数,発症年齢を,診
療録を用い後方視的に調査した.調査の対象とな
った症例は男性37 名,女性60 名(男女比1:1.6)
計127 名であった.ECT 開始時年齢の平均年齢
は,54.2±17.4 歳(18 歳−88 歳)であった.
【倫理的配慮】今回の発表に際して個人情報が特
定されないように配慮した.
【結果】ECT 開始時年齢が65 歳以上の高齢者は
29 名(男性9 名,女性20 名,男女比1:2.2)で
あった.64 歳以下の68 名(男性28 名,女性40
名,男女比1:1.4)と比較すると,女性の割合
が高かった.
調査期間中の当科におけるECT の総件数は,
2224 回(444.6 回/年)であった.ECT を施行さ
れた症例数は,97 名(19.4 名/年)であった.1
症例あたり,平均22.9 回(最多118 回,最少1
回)のECT が施行されていた.高齢者群では平
均25.1 回,64 歳以下の群では平均22 回であっ
た.メンテナンスECT のための入退院を繰り返
している症例が含まれており,最多回数が118
回という大きな数字となった.
ICD-10 による疾患分類は,全体では,F3:48
名(49.5%),F2:36 名(37.1%),F0:9 名
(9.3%),F4:4 名(4.1%)であった.
高齢者群では,F0:2 名(7%),F2:2 名(7%),
F3:25 名(86%)と,圧倒的に気分障害圏の症
例が多かった.一方,64 歳以下の群では,F0:
3 名(4%),F2:30 名(44%),F3:(44%),
F4:4 名(6%),その他1 名(2%)だった.若
年群では,高齢者と比較して統合失調症の割合が
高い傾向であった.
高齢者群での主な有害事象は,頭痛,健忘,術
後高血圧などであった.
【考察】高齢者では,薬物による副作用のため,
十分な薬物療法を実施できないことも多いが,一
方で,拒否・拒絶により身体的に衰弱状態に陥り
やすい.したがって,緊急に介入し,速やかな治
療効果を得る必要がある状況も多い.ECT は,
このような高齢者に対して,安全で有効な治療手
段である.当科でも,有効な治療効果が得られる
場合が多く,かつ有害事象が少ないことが確認で
きた.
今後は,当科でも90 歳を超える超高齢者への
ECT が施行される可能性がある.これからも治
療効果や副作用についても注意深く観察しながら,
超高齢者への施行について検討したい.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-6
- 認知症高齢者に向けた在宅リハビリテーションの日常生活動作能力に対する効果
- 佐藤 大介 ( 千葉県立保健医療大学 )
- 【目的】認知症高齢者とその介護者に対し,在宅
リハビリテーションプログラムを実施し,日常生
活動作能力に対する効果を検討すること.
【方法】認知症外来3 施設を利用している者のう
ち,対象者の適格条件を,アルツハイマー型認知
症の診断を受けている,Mini Mental State
Examination の総得点が14−24 点である,自宅
で生活しているとし,除外条件を,Geriatric
depression scale の総得点が12−30 点である,
身体状態が重篤であるとした.
対象者を介入群と対照群に無作為に割り付けた.
介入群には,5 週間に10 回の在宅リハビリテー
ションプログラムを行い,日常生活動作能力の低
下に対する機能訓練,認知機能の低下に対する補
助具の調整,行動・心理症状に対する家族の対処
方法の支援を実施した.対照群には在宅で1 回
の情報提供を行い,認知症による機能低下,行
動・心理症状に対する対処方法についてリーフレ
ットを用いた説明を実施した.プログラムは作業
療法士が実施した.評価項目として,日常生活動
作能力,生活満足度,気分状態を測定した.測定
時期は,ベースライン,6 週,16 週,26 週,52
週とした.
【倫理的配慮】研究実施施設の倫理審査委員会の
承認を受けた.また,主治医および本人より書面
で同意を得た上で実施した.
【結果】対象者109 名を介入群55 名(平均年齢
76.2±6.3 歳,男性26 名,女性29 名),対照群
54 名(平均年齢77.4±5.1 歳,男性26 名,女性
28 名)に割り付け,最終的な分析対象者は介入
群42 名(平均年齢77.5±6.9 歳,男性20 名,女
性22 名),対照群40 名(平均年齢76.9±4.7 歳,
男性19 名,女性21 名)であった.ベースライン
時に両群の基礎属性に有意な差はみられなかった.
患者の日常生活動作能力は,6 週,16 週,26 週,
56 週で両群に有意な差はみられなかった.
【考察】介入群の在宅リハビリテーションプログ
ラムは,在宅での情報提供に比べ,アルツハイマ
ー型認知症患者の日常生活動作能力の改善に対す
る有意な差を示さなかった.
本研究の主な限界に,介入のためのスタッフの
トレーニング期間が短かったことが挙げられる.
パイロット期間に充分な経験者よりフィードバッ
クを受けることの必要性が示唆された.
本研究の結果を踏まえ,今後,リハビリテーシ
ョン実施者のスキル,治療効果について詳細な検
討が必要である.特に,対象者のニーズ,在宅リ
ハビリテーションに活用しうる資源に注目し,中
長期的効果を引き出すことができる在宅リハビリ
テーションプログラムの開発が必要である.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 10:00〜11:00 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 診断@
- 座長: 川勝 忍(山形大学医学部精神医学講座)
- P-A-7
- 高齢発症した特発性大脳基底核石灰化症(Fahr病)の1例
- 宇和 典子 ( 兵庫医科大学精神科神経科学講座 )
- 【はじめに】大脳基底核を中心とした原因不明の
脳内石灰沈着をきたす比較的稀な疾患として特発
性大脳基底核石灰化症(Fahr 病)がある.Fahr
病には様々な神経症状や精神症状を伴うとされる
が,明確な診断基準は定まっていない.今回我々
は記憶障害,幻聴,幻視を主訴に受診しFahr 病
と診断された症例を経験したので報告する.
【倫理的配慮】本症例を報告するに当たって,個
人が特定されないよう配慮し,匿名下での学会発
表について本人,家族に対して同意を得た.
【症例】80 歳女性.病前性格はせっかちで神経質.
高血圧症,高脂血症で加療中である.家族歴に特
記なし.X−3 年(77 歳)頃よりついさっき言っ
たことを忘れるなどの記憶障害が出現し,X−1
年(79 歳)頃より隣の部屋で儀式が行われてい
て太鼓の音がうるさいといった幻聴や男の人が赤
いふんどしでウロウロしているといった幻視が出
現したため精査目的でX 年8 月(80 歳)当科初
診となった.初診時HDS-R 16 点,MMSE 15 点
で神経学的所見は認めなかった.血液検査ではカ
ルシウム,リンの値ともに正常範囲,頭部MRI
で大脳基底核付近の石灰化を疑われたため頭部
CT を施行したところ大脳基底核・小脳歯状核の
石灰化と両側側頭葉を中心に萎縮を認めた.
SPECT では両側上前頭回に軽度の血流低下を示
していた.臨床症状と脳画像所見よりFahr 病と
診断した.X+1 年(81 歳)の現在も記憶障害や
幻聴は持続しているが介護保険のサービスを利用
しながら独居で生活している.
【考察】記憶障害を伴う高齢者で原因不明の脳内
石灰化を認めた場合,内分泌疾患や代謝性疾患の
ほか,Fahr 病や石灰沈着を伴うびまん性神経原
線維変化病(DNTC)を鑑別していかなければい
けない.Fahr 病と診断され,後にDNTC へと診
断が変更された報告もある.本症例においても現
在前頭葉症状は目立っていないが両側側頭葉の萎
縮が強いことより今後DNTC への移行も念頭に
入れて臨床症状の経過をみていく必要がある.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-8
- 抑うつ状態ののち進行性の認知症を呈した抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎の一例
- 池田智香子 ( 岡山大学大学院精神神経病態学 )
- 【目的】抗電位依存性カリウムチャンネル
(voltage-gated potassium channel : VGKC)抗
体辺縁系脳炎は記憶障害やてんかん発作を呈し亜
急性または慢性の経過をたどる脳症である.今回,
我々は記憶障害と痙攣を認め,抗VGKC 抗体陽
性であった辺縁系脳炎の一例を経験したので報告
する.
【倫理的配慮】本報告は大学倫理委員会で承認を
得ており,書面にて患者及び家族の同意を得た.
【症例】62 歳,男性.精神神経疾患の家族歴・既
往歴なし.病前性格は穏やか.X−1 年9 月に従
兄弟が死亡した後から気分の落ち込みや不安が出
現したため11 月1 日に近医精神科を受診し,う
つ病として加療された.X 年1 月頃より軽度の易
怒性が出現,4 月初旬に仕事の配達先や顧客の名
前が思い出せない,同じ質問を繰り返す状態とな
り近医を受診したが,頭部MRI で異常を指摘さ
れなかった.4 月8 日に強直間代性痙攣をおこし
た.翌日主治医の顔を認識できず記憶障害を認め
たため,4 月10 日に精査加療目的にて当科紹介,
入院となった.
【身体所見】意識清明,体温36.1℃,血圧153/106
mmHg,脈拍101/分,神経学的所見には眼球運
動正常,固縮・振戦・錐体路徴候を含めて異常な
し.
【検査】抗甲状腺抗体を含む自己抗体やウイルス
抗体価は正常.尿検査は正常.IgG index を含む
髄液検査は正常.頭部単純MRI にて左扁桃核は
軽度に腫大し,T2・FLAIR では軽度高信号を呈
した.造影MRI では左側頭葉白質に軽度増強効
果を認めた.脳波は基礎波が8 Hz で前頭部に6
〜7 Hz のθ波が散在,突発性異常波は認めなか
った.脳血流SPECT にて両側前頭頭頂葉,左扁
桃核に集積低下あり.腫瘍マーカー,全身単純CT,
全身PET-CT で異常なし.
【神経心理学的検査】HDS-R 21/30,MMSE 26/30,
WMS-R 一般記憶63,遅延再生50 未満,FAB
14/18,BADS 63,RBMT 16/101(標準プロフィ
ール1/24,スクリーニング点0/12)
【臨床経過】記憶障害は著明で入院していること
自体を忘れて確認を繰り返した.臨床症状や頭部
MRI から辺縁系脳炎の可能性が考えられたため
メチルプレドニゾロン1000 mg/日×3 日を行っ
たが,せん妄を呈したため1.5 クールで終了,そ
の後せん妄は消失した.経過途中から低Na 血症
が進行したため,原因となりうる薬剤を中止した
が改善せず,NaCl の内服を開始した.次第に即
時記憶は改善,頭部造影MRI では扁桃核の造影
効果が軽減した.近時記憶も1 日程度なら残る
ようになり6 月27 日に退院した.後に抗VGKC
抗体陽性(3300 pM)が判明し,抗VGKC 抗体
陽性辺縁系脳炎と診断された.
【考察】抗VGKC 抗体陽性辺縁系脳炎の約半数の
症例で悪性腫瘍を合併するが,今回の症例では腫
瘍は見い出されなかったため自己免疫性と考えら
れた.また低Na 血症の合併を高率に認めると報
告されており,本例でも認められた.今回ステロ
イドを用いて治療を行ったが仕事に復帰できる程
度に症状は改善しており,有効であったと考えら
れる.本例では画像所見が脳炎を疑う根拠となっ
たが,抑うつや不安などの症状から精神疾患と診
断された報告もあり,本疾患を念頭に入れて亜急
性の記憶障害の進行を認めた場合には積極的に抗
体検査を行うべきと考えられた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-9
- ビタミンB12欠乏と精神神経症状:精神科診療所での経験;大球性貧血を伴い,補充療法が有効だった2例
- 平井 茂夫 ( 入間平井クリニック )
- 【目的】ビタミンB12 は治療可能な認知症に関わ
る因子としてスクリーニングが推奨されてきたが,
近年では低下例に対する補充が無効であるとの報
告が多い.演者の施設では大球性貧血を伴う2
症例で臨床症状の改善を認めたので報告する.
【方法】当院は入間市(人口15 万人,高齢化率
22%)唯一の精神科診療所で,市内の認知症サ
ポート医は演者ひとりである.2 症例ともに受診
した平成24 年11 月の外来患者の数およびICD-
10 分類を調べた.ADAS-Jcog. の測定にはDTnavi(
日本テクト社製)を使用した.
【倫理的配慮】「医療機関における個人情報の保
護」(日本医師会:平成17 年)に従い,必要な匿
名化を行い,また可能な限り本人の同意を得た(症
例1 は本人,症例2 は家族が口頭同意).
【結果】<症例1 初診時60 代後半女性>
40 代より幻覚妄想が出没.夫に先立たれ単身生
活していたが,長男一家との同居で精神症状の存
在が判明し,X 年4 月当院初診.HDS-R23,
RBC245,MCV120,VB12 81,頭部画像にて両
側前頭葉外側皮質〜眼窩面の血流低下,両側内側
側頭葉・両側前頭葉外側皮質の萎縮を認め,FTD
が疑われた.VB12 補給(主に静注)にて貧血は
改善したが,妄想的言動が続き,しばしば注射も
拒否したため,X 年11 月より少量のドネぺジル
とクエチアピンを併用した.X+1 年よりADASJcog.
と血液所見を並行して測定したので,結果
を示す.
VB12 血中濃度の安定したX+2 年8 月以降,認
知機能・精神症状ともに改善傾向が続き,単独で
通院して抵抗なく注射を受けている.
<症例2 初診時70 代前半男性>
先天性股関節脱臼あり,もと大酒家.Y−13 年,
胃癌手術.Y−2 年頃から記憶障害と音に対する
過敏が出現.徐々に外出が減り,歩けなくなった.
Y 年2 月当院初診.起立・歩行とも要介助で,
HDS-R 6,RBC375,MCV125.1,VB12 94,TSH
6.28,頭部CT にて脳室拡大と深部白質の虚血性
変化を認めた(脳外科にてNPH は否定).本人
は受診を極度に嫌がり,また幻視も疑われた.や
むを得ず訪問看護を導入してVB12 静注を施行し,
レボチロキシンと少量のドネぺジルを併用した.
貧血が改善し,禁酒にも成功.Y 年10 月には本
人が来院し,起立・歩行の著明な改善が確認され
た.
<平成24 年11 月外来患者数>
総数855,うちF 0 群(症状性を含む器質性精神
障害)が58 名で,そのうちの2 名がビタミンB12
投与に反応した大球性貧血であり,これは患者全
体の0.23%,F 0 群の3.4% に該当した.
【考察】報告した2 例は当初治療拒否が強く,精
神症状も活発であったが,VB12 補給などの治療
に反応し,ことに治療への態度が明瞭に改善した.
従来VB12 測定は主にもの忘れ外来で施行されて
きたが,むしろBPSD 例・治療困難例でこそ積
極的に検索するべきではと考えた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-10
- 石灰沈着を伴うび慢性神経原線維変化病(DNTC)が疑われた1例
- 小林 清樹 ( 札幌医科大学神経精神医学講座 )
- 症例は,72 歳女性.51 歳時にイライラ,体の
ほてりを訴え砂川市立病院(以下,当院)精神科
初診.一度のみの受診で中断となり,この時は頭
部CT は未施行.60 歳時に大腿骨を骨折し,当
院整形外科入院.せん妄を呈したため,頭部CT
施行したところ大脳基底核および小脳に広範な石
灰化が認められた.64 歳時,国道で左右の確認
もせず自転車で横断したため自動車にはねられ,
急性硬膜下血腫・頭蓋骨骨折のため当院脳外科に
入院.急性期治療を終えた後,無断離棟などの問
題行動あり,当科へ転科.頭部CT では前回同様
基底核・小脳の広範な石灰化の他に側頭葉にわず
かではあるが萎縮が認められた.しかしこの時点
ではDNTC かFahr 病かの鑑別は困難であった.
退院後,デイサービス職員の手に噛みつこうとす
るなどの精神・行動異常が増悪し,他の精神科病
院に入院,現在も入院中.H 25 年の頭部CT で
は,この8 年間で側頭葉や前頭葉の萎縮の進行
が認められ,DNTC が疑われた.
Fahr 病の疾患概念は,いまだ曖昧な点がある
が,大脳基底核の石灰化,精神・行動障害,認知
障害,錐体外路障害の存在,及びカルシウムやリ
ンの代謝障害がないといった点から当初はFahr
病の診断を考えたが,これらの所見に側頭葉・前
頭葉の限局性萎縮があれば,DNTC と臨床診断
できることになっている.本報告は,縦断的経過
観察後,側頭葉・前頭葉の萎縮の進行があり,
DNTC 疑いと診断した.
Fahr 病やDNTC は,極めて稀な疾患であり,
なおかつ症状の出現の有無・順序など多様性があ
るので,できるだけ多くの症例報告の蓄積は必要
と考えた.また,Fahr 病と診断した後も,DNTC
の可能性を考え,長期に渡って経過を追っている
報告は,さらに少ない.当日は,画像を提示しな
がら若干の考察を交えて報告する.なお,本報告
について患者の家族に十分に説明し,書面で同意
を得ている.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-11
- 遅発性精神病性障害を呈す病理背景とその臨床スペクトラム
- 長尾 茂人 ( 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経病態学 )
- 【背景】精神疾患はしばしば中年期までに初発す
るがそれ以降の発症も稀ではない.この高齢発症
例の病態は殆ど不明である.
【目的】遅発性精神病性障害の病理背景とその臨
床スペクトラムを明らかにする.
【方法】対象は40 歳以降で精神疾患を初発し少
なくとも経過の中期まで明らかな認知症を欠いた,
遅発性の精神病性障害(LOSD)23 例(発症年齢
41−86 歳,死亡時年齢58−91 歳,罹患期間平
均12 年),遅発性のその他の精神障害(NLOSD)
22 例(発症年齢51−82 歳,死亡時年齢57−85
歳,罹患期間平均6.8 年;うつ病11 例,人格障
害6 例,双極性障害2 例,不安障害/心気症3 例)
のアルツハイマー病(AD),レビー小体病(LBD),
嗜銀顆粒病(AGD),皮質基底核変性症(CBD),
進行性核上性麻痺(PSP)の各病理,TDP-43 病
理,血管病変を検討した.10% ホルマリン固定
パラフィン包埋ブロックから前頭葉,側頭葉,後
頭葉,頭頂葉,大脳基底核,脳幹諸核を含む切片
を作成し,H&E 染色,KB 染色,Holzer 染色,
Bielschowsky 染色,methenamine 銀染色,
Gallyas-Braak 銀染色と,抗リン酸化タウ(AT8),
抗Aβ(12B2),抗リン酸化αシヌクレイン(psyn
#64),リン酸化非依存性抗αシヌクレイン(LB
509),抗リン酸化TDP-43(pS409/410-2),リン
酸化非依存性TDP-43(anti-TDP-43,Protein
Tech),抗3 リピートタウ(RD3),抗4 リピー
トタウ(RD4),抗リン酸化ニューロフィラメン
ト抗体を用いた免疫染色を行った.病理組織学的
変化の評価は神経原線維変化と老人斑はBraak
stage で評価した.AD の病理診断はNIA-Reagan
criteria(First version),LBD の病理であるレ
ビー小体関連病理はDLB consensus guideline
第3 版とNINCDS-ADRDA の改訂AD 診断基準
内のレビー小体病理の評価方法,AGD における
グレインはSaito らの分類,CBD とPSP は報告
されているHauw らおよびDickson らにより提
唱された病理診断基準を用いてそれぞれ評価した.
【結果】病理学的に純粋なAD(Braak stage−
)は認めなかった.LOSD 症例での病理頻度
はLBD 26%(脳幹型33%,辺縁系型33%),AGD
22%(全例Saito のstage−),CBD 4%(病
変が非常に軽い例あり),うつ病症例ではLBD
27%,AGD 9%,CBD 9% でLOSD に類似した
がAGD の頻度は低かった.人格変化症例の33%
がCBD であった.初老期発症(<65)LOSD 症
例の病理頻度はLBD 17%,AGD 8%,CBD 8%
であった.老年期発症(≧65)LOSD 症例では
LBD 36%,AGD 36% でCBD は認めなかった.
65 歳以上発症及び死亡時年齢71 歳以上において
LOSD かうつ病を有す群ではそれらを欠く群に
比しLBD の頻度は有意に高かった.老年期発症
例でのAGD の頻度はNLOSD に比しLOSD で
は有意に高かった.これらの関係は死亡年齢で説
明できなかった.AGD 症例における妄想の頻度
は有意な変性所見を欠く症例群より有意に高かっ
た.CBD 症例における脱抑制の頻度も有意な変
性所見を欠く症例群より有意に高かった.
【結論】AGD,LBD,CBD は少なくとも一部の
LOSD 患者の病理学的基盤である可能性,及び
これらの病理はそれぞれ異なる臨床表現スペクト
ラムを有す可能性が示唆された.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-12
- 認知症のMMSEスコアとMRIのVSRAD画像所見が乖離した群の検討
- 鎌田 裕之 ( 久留米大学医学部神経精神医学講座,久留米大学高次脳疾患研究所 )
- 【目的】平成20 年から平成24 年までの5 年間に
おいて,久留米大学病院もの忘れ外来及びもの忘
れ検診を受診された2,231 人において,以下を検
討した.
【方法】認知症スクリーニングテストである,
Mini-Mental State Examination(以下,MMSE)
のスコアが26 点以上,そしてMRI のVSRAD
(PLUS)のZ スコアが3 点以上の受診者を認知
症スクリーニング検査と画像所見が乖離した群,
乖離群とした.今回この乖離群の特性について検
討した.
【倫理的配慮】参加者には本研究を説明し,同意
を得た.本研究は久留米大学倫理委員会の承認を
得ている.
【結果】認知症スクリーニングテストにおいて全
受診者(2,231 名)の中で認知症(長谷川式簡易
知能評価スケール(改定版)20 点以下,又は
MMSE 23 点以下)群は892 名(女性:562 名,
男性:330 名)で全受診者数の約40%,非認知
症群は1,339 名(女性:946 名,男性:393 名)
で全受診者数の約55% を占め,乖離群は98 名
で全受診者数のうち約4.4% だった.
平均年齢は認知症群が77.4±7.1 歳,健常群は
73.1±8.0 歳,乖離群は73.7±8.8 歳で乖離群は
50 歳台から80 歳台まで存在し年齢に関係なかっ
た.
MRI のVSRAD(PLUS)のZ スコアは認知症
群が2.6±1.4,健常群が1.4±0.9,乖離群が3.8
±1.0 であった.乖離群を認知症と考えた場合認
知症群の中で乖離群は9.5% を占めた.
【考察】認知症スクリーニング検査のMMSE ス
コアが認知症群に至るまでの低下はないがMRI
のVSRAD の結果では脳の関心領域の萎縮が強
い乖離群が存在し,認知症群の中では約1 割を
占めた.乖離群は病識も乏しく,認知症の早期発
見,早期治療にはこれら乖離群は重要であると考
える.
当日は症例をあげ経過を含め考察する.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 11:00〜11:50 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 診断A
- 座長: 堀 宏治(昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター)
- P-A-13
- もの忘れ外来におけるRey-Osterrieth複雑図形検査について;アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の鑑別における有用性の検討
- 沼田悠梨子 ( 医療法人相生会認知症センター,東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科もの忘れ外来 )
- 【目的】Rey-Osterrieth 複雑図形検査(以下,Rey
の図と略す)は非言語性記憶機能評価尺度として
認知症の記憶障害査定に用いることがガイドライ
ンで推奨されているが,実際に臨床で実施されて
いる報告が殆ど無い.今回はRey の図をもの忘
れ外来スクリーニング検査として実施した際の診
断との対比について報告する.
【方法】東邦大学医療センター大橋病院もの忘れ
外来を受診し診断の確定したアルツハイマー型認
知症(AD)226 名(男性65 名,平均年齢79.4±
7.0 歳)とレビー小体型認知症(DLB)85 名(男
性36 名,平均年齢78.7±8.1 歳)における初診
時未治療時点での検査結果について解析を行った.
統計解析にはSAS システム(SAS Institute
Japan 株式会社)を用いて行った.
【倫理的配慮】全ての情報は通常の診療行為の過
程で得られたものであり,今回の報告にあたって
は個人情報の流出防止のためデータを匿名化して
解析し,個人情報の保持に関して十分に配慮した.
【結果】年齢,MMSE でAD 群とDLB 群との間
に有意差は無かったが,DLB 群で男性の割合が
多かった.同時に実施した長谷川式簡易知能評価
スケール(HDS-R)はAD 群17.8±5.6,DLB 群
20.1±5.9 であり,Mini Mental State Examination(
MMSE)は同様に19.8±4.9,21.2±5.6 で
あった.HDS-R はAD 群で有意に得点が低かっ
たが,MMSE は有意差を認めなかった.Rey の
図の得点は模写;直後再生;遅延再生の順でAD
群29.1±6.8;5.0±5.4;2.6±5.1,DLB 群28.2
±8.5;7.8±6.7;5.3±6.7,であった.疾患,性
および年齢に関係なくHDS-R,MMSE とRey
の図の模写・直後および遅延再生の得点には有意
な相関があった.疾患,性,年齢およびHDS-R
を説明変数とした線形モデルを仮定した分散分析
を行ったところ,Rey の図模写では有意にDLB
群で得点が低く,直後および遅延再生で有意に
AD 群の得点が低かった.
【考察】典型的な認知機能障害の特徴としてAD
は記憶障害,DLB は注意・前頭葉や視空間機能
障害が知られている.今回の検討ではRey の図
を用いた非言語性記憶機能査定において,AD で
有意に直後および遅延再生得点が低値であったこ
とから,AD の認知機能障害の特徴を良く示して
いた.また,Rey の図模写においてDLB 群で有
意に得点が低かったことから,DLB の特徴とし
ての視空間機能障害を反映していると考えられた.
しかし群間比較では有意差があるものの,実臨床
では模写得点からDLB とAD を鑑別することは
困難である.その一方で,個々のAD とDLB と
では図形の描き方や完成後の図形に違いがあるこ
とを経験している.Rey の図模写の採点は標準化
された36 点満点法で行なっているが,描き方や
完成時の図形の歪みなどは採点対象となっていな
い.今後,よりDLB らしさが反映される採点方
法を考案し検討する予定である.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-14
- 認知症スクリーニング検査と画像結果の乖離した群の探索眼球運動の特徴
- 中島 洋子 ( 久留米大学医学部看護学科,久留米大学高次脳疾患研究所 )
- 【目的】我々は,久留米大学病院もの忘れ外来に
おいて,HDS-R,MMSE の認知症スクリーニン
グ検査およびMRI 等の画像検査に加えて探索眼
球運動検査を行ない認知症について検討してきた.
今回,物忘れ外来受診者において横S 字探索眼
球運動検査装置を用いて,反応探索スコア(以下
RSS という)を精神生理学的指標として,認知
症スクリーニング検査と画像結果の乖離した群
(以下乖離群という),いわゆる乖離群について検
討したので報告する.
【対象】もの忘れ外来の受診者でMRI 施行者273
名(平均年齢73.9±7.5 歳)を対象とした.すべ
ての受診者を認知症群(HDS-R が20 点,MMSE
が23 点まで:105 名,38.5%),健常群(HDS-R
およびMMSE が28 点以上:48 名,17.6%)お
よび中間群(102 名,37.3%)とした.さらに,
中間群を,高リスク(HDS-R が,21 から24 点:
50 名)と低リスク群(HDS-R が,25 から27 点:
52 名)に分けた.今回,HDS-R が25 点以上で
MMSE が26 点以上であり,MRI 解析である
VSRAD のZ スコアが3.0 以上の群を乖離群(18
名,6.6%)とした.
【方法】探索眼球運動は,注視が可能なすべての
被験者に,ナック社製のEMR-8 を使用し,S 字
の3 つのパターンを見せRSS を計測した.診察
後にMRI を施行しVSRAD 解析を行い,その結
果と各群の探索眼球運動の特性について比較検討
した.
【倫理的配慮】すべての被験者には,当研究を書
面にて説明し同意を得たのち施行した.尚,当研
究は久留米大学倫理委員会の承認を得て行ってい
る.
【結果】乖離群のZ スコアは,3.6±0.6 で,他の
群(認知症群,高リスク群,低リスク群,健常群)
より有意に高い値であった.RSS は,S 字の1
(S1)では乖離群は健常群より有意に低い値であ
ったが,認知症群の間では有意差は認められなか
った.認知症群が,低リスク群および健常群より
有意に低い値であった.S 字の2(S2)のRSS
では,認知症群が,低リスク群および健常群より
有意に低い値であったが,乖離群と他の3 群間
に有意差は認められなかった.
さらにS1 とS2 を合計した総合RSS で検討し
た.乖離群は,健常群より有意に低い値であり,
低リスク群より低い傾向(p=0.055)であった.
認知症群の総合RSS は,低リスク群および健常
群より有意に低い値であった.RSS とZ スコア
に有意な負の相関が観察された.
【考察】以上のことから,探索眼球運動の反応探
索スコア解析は,簡便でいずれの場所でも検査可
能であり,侵襲も無く乖離群の早期診断の有用な
精神生理学的指標と考える.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-15
- 臨床経過と画像上で脳アミロイドアンギオパチーが疑われた認知症の一症例
- 山崎 由花 ( 順天堂大学医学部公衆衛生学教室 )
- 【目的】脳アミロイドアンギオパチー(CAA
(cerebral amyloid angiopathy)は加齢とともに
増加し,認知症とも密接な関連を有する(山田,
2011).通常の血管性危険因子がコントロールさ
れるとCAA に関連する脳血管障害の増加が懸念
される(吉田,山田,2009)が,この疾患が剖
検で偶然発見されることはあっても,生前に診断
されることは希である.今回,急速な認知機能低
下と多発性の微少脳出血を認め,アミロイドアン
ギオパチーが疑われた症例を経験したので報告す
る.
【倫理的配慮】学会発表について,本人と介護者
の同意を得た.
【症例提示】79 歳,女性,家族構成:息子と娘の
3 人暮らしで昼間は一人,既往歴:高血圧症,脳
動脈瘤.家族歴:姉,弟:糖尿病.現病歴:78
歳時より,金銭管理に問題が生じ,さらに,不眠,
夜間の徘徊,暴力が始まった.79 歳時,服が上
手く着られず,また,激しく怒ることや,突然泣
きだすことがあり,当院当科初診となった.頭部
MRI では内側側頭葉のごく軽度の萎縮を認め,
深部白質に微小脳梗塞と血管周囲腔が混在し
MRA では左中大脳動脈に動脈瘤を認めた.
MMSE は19 点であった.不眠と徘徊はゾピク
ロン7.5 mg で改善したが,「郵便物が盗まれる」,
「息子が女といた」と妄想を認め,不安,焦燥感
も認めた.トラゾドン塩酸塩25 mg を開始後,
一時,落ち着いたものの,デイサービス開始後,
迎えが来たと勘違いし,頻繁に外に出て迷子にな
った.炎天下の中,外に飛び出し長時間徘徊する
こともあった.3 ヶ月でMMSE は11 点まで低
下した.また,尿失禁,便失禁も認めた.周辺症
状に対し,メマンチン5 mg 開始した.急速な認
知機能の低下を認め,再度,MRI を施行した.
その結果,海馬領域の委縮が軽度にも関わらず,
皮質から深部白質にかけて点状の梗塞巣を認めた.
アミロイドアンギオパチーを疑い,精査目的で
K 研究センターを紹介した.MRI・SWI で両側
頭頂後頭葉の脳構内にヘモジデリン沈着と思われ
る低信号域が散在し,両側側頭後頭葉の皮質下白
質にも古い微小出血と考えられる点状の低信号域
が散在していた.K 研究センターでもアミロイ
ドアンギオパチーが疑われた.生検は施行してい
ないが,周辺症状は改善し,MMSE も12 月の
時点で11 点と変化を認めないためメマンチンの
みで経過を見ている.
【考察】本症例は1)皮質・皮質下に限局する多
発性出血,2)年齢55 歳以上,3)他の出血の源
の欠如の3 点が明らかで,ボストン診断基準で
probable CAA と診断した.また,出血が後頭葉
中心に認められ,新しい出血と古い出血が混在す
ることからも,CAA が支持された.高血圧性微
小出血との鑑別については,高血圧性では基底核,
視床,脳幹などに出血が集中するのに対し,本症
例では両側頭頂後頭葉の脳構内,両側側頭後頭葉
の皮質下白質を中心に出血が認められた.本症例
は急速な認知機能の低下を認めた.原因として,
多発性あるいは広範囲の血管障害が認知機能の急
速な低下に寄与したと考えられる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-16
- VSRAD解析におけるZスコア高値とうつ病の関連について
- 下田 健吾 ( 日本医科大学千葉北総病院メンタルヘルス科 )
- 【目的】うつ病から認知症への移行がトピックス
となっており,うつ病は海馬萎縮のリスクファク
ターであることが知られている.認知症の初期診
断支援のために松田ら1)が開発したVSRAD
( Voxel-based Specific Regional Analysis
system for Alzheimer’s disease)は海馬・海馬
傍回の萎縮を客観的に評価できるMRI 画像解析
ソフトで,感度も優れ本邦で広く普及している.
臨床的にZ スコアが高値になるとMMSE のばら
つきが大きくなり,逆にAD と診断に至らない症
例も臨床的にみられ,非AD 症例,特にうつ病や
うつ病の既往のある症例に多く遭遇するため,Z
スコアが高値であり最終的に非AD と診断した症
例に注目し検討することにした.
【方法】対象は平成23 年1 月〜平成24 年11 月
までに認知症精査目的で日本医科大学千葉北総病
院メンタルヘルス科を受診しVSRAD plus解
析を施行した183 例のうちZ スコアが3 以上の
症例48 例(男性17 例,女性31 例)についてレ
トロスペクティブに調査を行った.診断はDSM-
-TR を用い,MCI はPeterson ら1999 の診断
基準を用いた.なお嗜銀顆粒性認知症(AGD)に
ついては以下の臨床特徴を参考に疑い診断をつけ
た.
1)性格変化,易怒性等,前頭側頭型認知症様の
BPSD が目立つ.2)VSRAD 値がMMSE に比
し高値をとる.3)機能画像では,左右差を伴う
前方領域の血流・代謝低下を伴う.また局所脳体
積はVSRAD advanceおよびSPM8 にて再解
析を行った.
【倫理的配慮】MRI 画像の研究目的での使用,臨
床データの使用については,包括的に千葉北総病
院倫理委員会の承認を得ており,取り扱うデータ
は匿名化し個人情報が漏れないよう最大限の配慮
をした.
【結果】Z スコアとHDS-R との間に相関性は見
られなかった(r=−0.26,F=3.2).診断の内訳
はAD 群29 例(60%)非AD 群が19 例(40%)
であり,非AD 群の内訳はうつ病(53%),ADG
(32%),DLB(11%)であった.また全例中15
例(31%)にうつ病の既往および合併がみられ,
抑うつ症状がみられるものは半数に及んだ.SPM
によるVBM の検討ではうつ病の既往の有無によ
って頭頂連合野,前頭前野に有意差のある部位が
みられた.
【考察】Z スコアが高値である場合,かなりの症
例で気分障害が含まれていることが判明した.今
回の結果はAD とうつ病の既往の関連を改めて示
すともに,うつ病そのものも海馬萎縮のリスクフ
ァクターであることを再検証した結果となった.
今後症例を蓄積し気分障害群の経過を追う必要が
あると考えられる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
文献1)松田博史:早期アルツハイマー型認知症
診断支援システムVSRAD について,日本放射
線技術学会雑誌,62 巻8 号Page 1066-1072,
2006
- P-A-17
- レビー小体型認知症(DLB)の早期診断・早期対応と生活習慣病からのアプローチ
- 松井 豊 ( まついe-クリニックまつい栄養&認知症クリニック )
- 【目的】DLB はアルツハイマー病(AD)と比較
して軽度の記憶障害と目立つ視覚認知・注意障害,
パーキンソニズムや転倒の神経症候も注目される
が,幻視,レム睡眠行動障害,誤認などの精神症
状が診断に有用とされる.生活習慣病からアプロ
ーチしてDLB の早期診断・早期対応に効率的な
指標を検討したので報告する.
【方法】対象:2 年間の生活習慣病外来(維持透
析も含む)で認知症のスクリーニングを受けた
236 人(男99 女137 平均68.6 歳)方法:問診,
HDS-R,MMSE,CDT,1 分間スクリーニング法,
もの忘れスクリーニング検査の立体図形模写,血
液生化学,心電図,画像診断(頭CT またはMRI/
A・頸部MRA・VSRAD),脳血流SPECT,123IMIBG
心筋シンチグラフィ,脳波,頸部血管心
エコーを実施し,DLB の臨床診断基準改訂版(第
3 回国際ワークショッフ)に従い,probale また
はpossible DLB を診断した.
【倫理的配慮】患者人権に十分配慮した.
【結果】(1)236 人は高血圧231 糖尿病59,平均
点数HDS-R 24.9,MMSE 26.2 (2)精査を受
けた172 人は生活習慣病116(高血圧113 糖尿
病18,平均HDS-R 24.3,MMSE 25.6)と維持
透析66(高血圧66 糖尿病20,平均HDS-R 25.9,
MMSE 27.2)(3)DLB が疑われた16 人(男6
女9 平均69.3 歳高血圧15 糖尿病7)中13 人が
維持透析患者だった.(4)16 例はHDS-R 26,
MMSE 27.1,CDT 12.8,1 分間法13.1,もの忘
れ検査1.5.(5)16 例の診断はprobale DLB 6,
possible DLB 7 PDD 2 PSP 1(生活習慣病116
中AD 56 DLB 1 PDD 2 FTD 5 PSP 0 VaD 0,
維持透析66 中AD 22 DLB 12 PDD 0 FTD 1
PSP 1 VaD 2)だった.(6)幻視は4 例,幻覚
や妄想性誤認も少なかった.(7)16 例とも脳血
流SPECT と123I-MIBG 心筋シンチグラフィが診
断に支持的だった.(8)78.7% にMRA で頸部・
頭蓋内血管狭窄/閉塞あり.(9)全例に心電図
異常を認め,殆どに失神,徐脈,低血糖などの自
律神経障害や難治性便秘症があった.
【考察】対象はpreclinical・MCI を照準とした.
DLB 13 例は診断基準を満たすが,HDS-R,
MMSE だけでなくCDT などの空間認知を測定
する点数が高く記憶と視覚構成・視知覚能の認知
障害も軽度で早期のDLB と推察された.幻覚,
誤認,妄想が多いとされるが,4 例にうつを認め
たに過ぎない.本例は生活習慣病からアプローチ
したため,「示唆的特徴・支持的特徴」の自律神
経徴候や症例経過だけでなく脳血管の「支持しな
い特徴」も把握でき,早期診断できたと推察され
た.急な精神症状の進行例や同時に悪化する生活
習慣病による死亡例があった.早期対応には精神
徴候と全身病態の把握など認知症診療の習熟が求
められる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 13:10〜14:00 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 疫学
- 座長: 角 徳文(東京慈恵会医科大学医学部精神科)
- P-A-18
- 認知症の早期発見と予防介入;鳥取県琴浦町での9年間の取り組み
- 井上 仁 ( 鳥取大学総合メディア基盤センター )
- 【目的】我々は鳥取県琴浦町において,平成16
年から地域住民を対象として認知症の早期発見を
目的としたスクリーニング検査と予防教室による
介入活動を続けている.本報告では,9 年間の活
動概要と検査結果について報告する.
【対象と方法】鳥取県琴浦町の65 歳以上の町民に
対して認知症予防のための講演会および検診の参
加案内を行った.まず認知症に対する正しい理解
のための啓発講演を行い,その後でスクリーニン
グ検査を実施した.啓発講演とスクリーニング検
査は,住民が参加しやすいように各地区の公民館
等にスタッフが出かけて行い,その回数は延べ
117 回である.検査対象者は平成16 年からの9
年間で総勢3,504 名(男性1,051 名,女性2,453
名)である.スクリーニング検査は我々の開発し
たタッチパネル式コンピュータを用いて行った.
タッチパネル式コンピュータは一次検査用の“も
の忘れ相談プログラム”と二次検査用の“TDAS
検査”の2 種類から成っている.もの忘れ相談プ
ログラムは15 点満点で,13 点以下の方へは2 次
検診としてTDAS 検査の受診案内を行った.
TDAS 検査は全問正解の場合が0 点で間違いが
増えると点数も増加する.TDAS 検査では,7 点
以上はハイリスク者として認知症予防教室へ勧誘
を行うと共に,14 点以上は認知症の可能性が高
いと判断して専門の医療機関への受診を勧めた.
認知症予防教室は,ゲームや参加者との語らいを
通して運動や知的活動を促進するもので,2 週に
1 回約2 時間の教室を6 ヶ月間行った.予防教室
の前後でTDAS 検査を行って介入効果を評価し
た.
【倫理的配慮】スクリーニング受診者には,その
目的を説明し,同意の上で検査を行った.またデ
ータの解析は匿名化して行った.
【結果】物忘れ相談プログラムの結果は,二次検
査該当者である13 点以下の被験者の割合は平成
16 年と17 年がそれぞれ37% と39% と比較的
高く,それ以降は30% 前後で推移している.二
次検査のTDAS 検査では,9 年間で152 名を認
知症の可能性が高いと判定して専門医療機関への
受診を勧めた.その内の98 名が専門医療機関を
受診した.診断結果は,アルツハイマー病が71
名,MCI が16 名,レビー小体型認知症が1 名,
脳梗塞が2 名,パーキンソン病が1 名,その他が
7 名であった.予防教室参加者は平成24 年時点
で前年以前からの継続参加者を含めて175 名(男
性23 名,女性152 名)である.予防教室参の介
入効果を会前後のTDAS 得点で判定したところ,
会後の得点が会前の得点に比べて有意に向上して
いることが認められた.また,参加時点の得点が
悪い参加者ほど介入の効果が認められた.
【考察】我々のこの取り組みは認知症患者の早期
発見と予防介入に有効な方法であると考える.認
知症の早期発見を目的とした認知症スクリーニン
グ検査では,いかに多くの住民に受診してもらう
かが重要である.琴浦町では対象者の半分以下し
か受診しておらず,受診率を上げることが課題で
ある.また,男性は女性に比べて検診と予防教室
への参加率が低く,男性の参加を促すことも課題
である.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-19
- NST介入症例における高齢者の入院患者;せん妄を中心に
- 大谷 恭平 ( 西神戸医療センター精神・神経科 )
- 【目的】高齢及び認知機能障害はせん妄の準備因
子であり,入院患者においては身体状況の悪化も
伴い,せん妄を起こしやすい.また,低栄養はせ
ん妄の危険因子であると共にせん妄により低栄養
をきたす場合もあり,相互に密に影響を及ぼし合
う病態である.西神戸医療センター(以下当院)
では平成17 年度よりNST(Nutrition Support
Team)が介入を開始し,入院患者の栄養管理に
寄与している.精神科医師の役割の一つに,低栄
養へ繋がるせん妄の早期発見や適切な介入があり,
当院ではNST のチームメンバーとして栄養状態
と結びつく精神症状の対応を行っている.本発表
ではNST 介入症例のうち,せん妄を生じた患者
の栄養状態の評価及び介入時の留意点,今後の課
題について検討を行うことを目的とする.
【方法】平成22 年9 月から平成23 年3 月の6 か
月間に当院NST が介入した113 例の症例につい
て,NST 回診リスト及び診療録を元に年齢,性
別,精神科介入及びせん妄の診断の有無,介入日
数,転帰,評価を後方視的に調査する.
【倫理的配慮】調査と発表に関してはプライバシ
ーに関する守秘義務を遵守し,匿名性の保持に十
分な配慮をすることにした.
【結果】NST 介入患者のうち,せん妄と診断され
精神科介入があった患者をA 群,精神科の介入
がなかった患者をB 群とする.A 群は男性10 名,
女性8 名の計18 名で,平均年齢は75.1 歳,NST
介入平均日数は41.8 日,精神科介入日数は50.6
日であった.これはB 群の男性42 名,女性38
名,平均年齢77 歳,NST 介入日数30.1 日と有
意差を認めていない.NST 介入時の状態はA 群
で低アルブミン血症10 名,体重減少2 名,食事
摂取量低下11 名,摂食・嚥下困難11 名,下痢・
嘔吐3 名,褥瘡1 名,B 群で低アルブミン血症33
名,体重減少10 名,食事摂取量低下40 名,摂
食・嚥下困難46 名,下痢・嘔吐7 名,褥瘡1 名
であった.転帰はA 群で退院4 名,転院6 名,
死亡4 名,中止4 名,B 群で退院16 名,転院33
名,死亡6 名,中止25 名,栄養状態の評価は「改
善」「不変」「増悪」の順にA 群で10 名,6 名,
2 名,B 群で20 名,22 名,6 名となり,有意差
は認めなかった.
【考察】症例数が少なく,統計学的有意差には至
っていないものの,これはせん妄を起こす症例は
予後が悪いことやA 群はせん妄の除外診断をお
こなっていないなどの理由が考えられる.NST
において精神科医が参加することはせん妄や嚥下
機能への影響などの面で専門的な意見を提供でき,
またせん妄を合併する困難事例に対する対応もと
れるため,高齢入院患者に対する治療には,精神
科医と身体科医,NST メンバーの連携が必要と
考えられる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-20
- アルツハイマー病におけるアミロイドアンギオパチーと臨床症候との関連;多発性の微小出血を認めたアルツハイマー病症例を通して
- 畑田 裕 ( 熊本大学医学部附属病院神経精神科 )
- 【目的と方法】脳アミロイドアンギオパチー
(CAA)は,髄膜や脳血管へのアミロイド沈着症
であり,アルツハイマー病(AD)患者でしばしば
認められる.MRIT2*やSusceptibility-weighted
imaging(SWI)で認められる多発性微小出血は
CAA を示唆する所見とされ,AD ではその他の
認知症よりも頻度が高いと報告されている.しか
しAD におけるCAA と臨床症候との関連性につ
いてはいまだ不明な点が多い.多発性微小出血を
認めたAD 症例を通して,CAA と臨床症候との
関連性を検討する.
【倫理的配慮】本人および家族に書面にて匿名性
の配慮などについて説明し同意を得た.
【症例】74 歳,男性,右利き.高等学校卒.会社
経営.
【主訴】もの忘れ,言葉が出にくい
【既往歴・合併症】高血圧症
【現病歴】X−2 年,ホテルの脱衣所で他人の下着
を身に着けたことで異常に気付かれた.以降もの
忘れが徐々に増加し,確認や探し物が増えた.ま
た話そうとしても言葉が出てこなくなったため,
X 年11 月,当院初診.
【現症】意識は清明で礼節は保たれていた.近時
記憶障害に加えて,喚語困難,呼称障害,理解障
害などの言語障害,著しい書字障害,計算障害,
構成障害が認められた.神経学的には,特記すべ
き異常所見は認めなかった.MMSE は12/30,
ADAS は25.7/70 であった.
【画像所見】頭部MRI では,左側優位の海馬な
らびに側頭頭頂葉萎縮,広範な皮質下白質の高信
号域を認めた.加えて,SWI にて左側頭頭頂葉
を中心に多発性の低信号spot を認めた.123IIMP
SPECT では,左側優位の側頭頭頂葉の血流
低下を認めた.
【考察】本例では,MRI における脳萎縮・微小出
血の分布,SPECT の血流低下領域のいずれにも
顕著な左右差があり,左半球優位であった.さら
に,言語障害が優勢な臨床症状もまた,左半球優
位の機能低下を示していた.本例で認められた所
見から,CAA がAD の神経変性や機能低下に重
要な役割を果たしている可能性が示唆された.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-21
- 地域在住高齢者における匂いを使った回想法の有効性
- 梅本 充子 ( 聖隷クリストファー大学 )
- 【目的】高齢者では他の感覚と同様に,嗅覚が衰
えることが良く知られており認知症の内,その半
数を占めるアルツハイマー病では,健常高齢者に
比べて有意に嗅覚障害が呈されることも明らかで
ある.実際に嗅覚刺激によって認知症の中核症状
である認知機能障害が改善されうるという報告も
成されている.これを踏まえて,今回の研究では,
地域在住高齢者に匂いの感覚刺激を取り入れた新
しい手法の回想法を実施し,認知機能やQOL に
よる介護予防の有効性を検討したので報告する.
【方法】対象:地域在住高齢者10 名(F 4 名,M
6 名)年齢(68〜90 歳,平均75.6±SD 7.98),
調査期間(H 24 年6 月28 日〜10 月19 日):K
市広報誌により参加者募集,週1 回,1 時間,計
8 回の匂いを使ったクローズ・ド・グループ回想
法を施行.プログラムは,成長発達段階にそった
テーマと季節の思い出を織り込み,毎回,テーマ
に沿った懐かしい匂いを使用した.匂いは,事前
に懐かしい匂いのアンケートを作成し,参加者の
希望のあった匂いを使用した.回想法の実施導入
時,実施中に話題となった匂いを使用した.回想
法の介入前2 ヵ月のコントロール期間と介入直
前,介入直後の調査を行い,クロスオーバーデザ
インを用いた.認知機能調査の為に,Syndrom
kurz Test(SKT),MMSE,GDS15,QOL(SF
-36V2)(自己記入式)の尺度を使用し評価した.
また生理学的機能評価としてTAS 9 法による加
速度脈波計測による自律神経系分析および身体疲
労感などの評価を行った.
【統計解析】得られた結果の統計解析はSPSS ver
19 を用いて統計解析した.経時的変化の検討は
主に反復分散分析(ANOVA)を用いた.
【倫理的配慮】NPO シルバー総合研究所倫理審査
により承認され,研究の許可を得た.
【結果】回想法の介入前2 ヵ月前(A)と介入直
前(B),介入直後(C)の調査で反復分散分析の
結果,SKT による記憶力(オミットの数)にお
いて,回想法施行前2 ヵ月間で『記憶』の価に
変化はないが,回想法施行で有意の改善がみられ
た.介入前2 ヵ月前14.5(2.2),介入直前13.8
(2.5),介入直後9.5(1.7)p<.000,A=B>C で
あった.他の指標では有意の所見はみられなかっ
た.TAS9 法による加速度脈波測定では,PSI
(physical stress index)の有意な減少p<.05 と
SDNN(Standard Deviation of The NN(RR)
Interval)の減少傾向p<.1 が観察された.
【考察】認知機能検査の結果からは,介入2 ヶ月
間における大幅な改善こそないものの,多少の改
善が示された.さらに認知機能の維持方法として
は有望であると示唆され,僅かながら回想法メソ
ッドが認知機能の維持管理に有望である可能性が
示唆されたと考えられる.また,生理学的指標に
おいては加速度脈波上で自律神経系バランスの改
善を原因とする身体疲労度等の指標の有意な改善
が観察された.以上より,今回の新たな回想法メ
ソッドが,認知機能の維持管理に役立ち,日々の
予防法として有望であることが示唆された.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-22
- 地域における認知症患者の高齢介護者の実態について
- 園部 直美 ( 愛媛大学医学部附属病院精神科 )
- 【目的】認知症患者の介護者は一般高齢者に比べ
抑うつ状態や不眠などが出現しやすい.そのこと
はQOL の低下や介護負担に影響するとされてい
る.しかし本邦において地域在住の認知症介護者
の精神状態やQOL を調査した報告は少ない.今
回我々は,地域における認知症患者の介護者につ
いて,抑うつ状態・不眠・QOL・介護負担など
に関する因子を包括的に検討した.
【方法】対象は第3 回中山町疫学調査にて認知症
と診断された患者の主介護者で,同居しており信
頼のおける65 歳以上の42 名.介護者にピッツ
バーグ睡眠睡眠質問票(PSQI)・エプワース眠気
尺度(ESS)で睡眠状況を,SF36で健康関連QOL
を,GDS でうつ症状を,Zarit 介護負担尺度(ZBI)
で全般的な介護負担度を評価した.
【倫理的配慮】対象となった主介護者に対し口頭
および書面で研究目的について説明し,同意を得
た上で行った.また本報告に関しては匿名性の保
持及び個人情報の流出には十分に配慮した.
【結果】調査に同意が得られた介護者は26 名で
対象の61.9% であった.PSQI で睡眠障害あり
とされた介護者は11 名(42.3%),ESS で日中の
眠気を認めた介護者は3 名(11.5%)だった.
GDS が5 点以上の介護者は7 名(26.9%)い
たが,11 点以上の介護者はいなかった.
SF36の国民標準値(平均50)に基づいた得
点の平均は身体機能41.2±14.1,全体的健康感
41.9±8.9,日常役割機能(精神)39.9±14.9,
日常役割機能(身体)39.2±13.6,活力42.2±9.0,
心の健康45.4±10.4,身体の痛み42.3±11.1,
社会生活機能44.7±11.2 でいずれの項目でも平
均値以下であった.ZBI 平均値は20.1±15.0(1
−51)だった.
【考察】地域における認知症介護者はQOL の低
下や睡眠障害の存在,介護負担の増加を認めてい
た.QOL や介護負担に関わる因子に関して更に
検討を深め報告する.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 14:00〜15:00 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 検査@
- 座長: 田中 稔久(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)
- P-A-23
- アルツハイマー病の焦燥感と関連する脳部位の検討;脳血流SPECTによる
- 阪野 公一 ( 名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学分野 )
- 【目的】認知症には多様な精神症状が併存するが,
とりわけ焦燥感は介護負担の最も重い症状である.
焦燥感に関する神経画像研究は数も少なく,結果
も一致していない.焦燥感には多様な要因が関連
しているが,その要因を脳画像により検討する意
義は大きい.そこで本研究では認知症に出現する
焦燥感と関連する脳部位を機能画像から検討し,
詳細を明らかにした.
【方法】対象患者は,名古屋市立大学精神科にて
NINCDS-ADRDA の診断基準で,probable AD
と診断された患者32 名(男性12 名,女性20 名)
である.年齢は73.3±8.1,CDR は1 もしくは2
であった.Logsdon らによるAgitation Behavior
in Dementia Care(ABID)(Logsdon et al.
1999)について,鳥井ら(Torii et al. 2011)が
ABID 日本語版の信頼性と妥当性を示し,これら
の項目が3 つの因子構造(身体的な焦燥感,言
語的な焦燥感,精神症状)から成立する構成概念
妥当性も示した.脳血流については99 mTc-
ECDSPECT を用いて,ABID における3 因子(身
体的な焦燥感,言語的な焦燥感,精神症状)と相
関する脳部位をSPM5 により解析した.
【倫理的配慮】この研究は,名古屋市立大学医学
部倫理委員会において承認を得て,すべての対象
者に目的と方法を説明したうえで書面による同意
を得た.
【結果】身体的な焦燥感とは右側頭葉外側面と右
前頭葉背外側面の脳血流低下,言語的な焦燥感は
左前頭葉背外側面と前頭葉底部の脳血流低下が相
関し,精神症状(妄想や幻覚)には右頭頂後頭葉
の脳血流低下が相関していた.
【考察】ABID(日本語版)を構成する3 因子は,
脳血流画像において異なった部位に相応すること
が示された.アルツハイマー病の焦燥感に関連す
る脳部位は,その症状により異なった生物学的背
景があると推測される.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-24
- 時計描画テストにおける認知機能の関連について;日本語版COGNISTATを用いた検討
- 今村 陽子 ( 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター精神科 )
- 【目的】時計描画テスト(Clock Drawing Test:
以下CDT)は教示に従って指定された時刻の時
計を描く検査である.その簡便さから認知症のス
クリーニング検査のひとつとして医療・福祉現場
で広く使用されている.一方,日本語版
COGNISTAT(松田,2004)は認知機能の多面
的評価を目的とした検査であり,3 領域の一般因
子(覚醒水準,見当識,注意),5 領域の認知機
能(言語,構成能力,記憶,計算,推理)の8 領
域のバランスを評価できる点で有用な検査である.
先行研究では,CDT が認知症のスクリーニン
グ検査として有用と言われているが(北林,2001
他),どのような認知機能がどの程度関連してい
るかについては十分検討されてきていない.そこ
で本研究では,CDT と関連のある認知機能とそ
の程度について,日本語版COGNISTAT を用い
て検討することを目的とした.
【方法】2010 年2 月〜2012 年10 月に当センタ
ー精神科・もの忘れ外来および入院患者のうち,
CDT とCOGNISTAT を施行した191 名(男性:
女性=64:127,76.6±7.6 歳,53〜92 歳,HDSR:
20.6±5.8 点,MMSE:21.5±5.0 点)を対象
とした.CDT の採点にはShulman の6 段階評
価法を用いた(Shulman ら,1989 ; Shulman,
2000).CDT 得点(3.7±1.2 点)を従属変数,
COGNISTAT 下位項目の素点,振戦の有無,年
齢,性別を説明変数として重回帰分析(強制投入
法)を行った.
【倫理的配慮】本研究ではデータを数量的に処理
し個人が特定されないように倫理的配慮を行った.
【結果】CDT は性別,振戦の有無,見当識,注意,
復唱,記憶,計算,判断に独立して,構成(β=.28,
95% CI[.11 .31],p<.01),呼称(β=.18,
95% CI[.05 .33],p<.01),年齢(β=.17,
95% CI[.01 .04],p<.01),理解(β=.17,
95% CI[.35 .31],p<.05),類似(β=.15,
95% CI[.01 .16],p<.05)との関連が認めら
れた.上述の説明変数のうち,年齢以外の変数に
ついて,COGNISTAT 換算表に従って正常域群
vs 低下群に分け,対応のないt 検定を行ったと
ころ,構成,呼称,理解,類似すべてについて,
有意な差があった(p<.05).
【考察】以上の結果は,[構成]がCDT のもっと
も関連の高い要素として抽出され,CDT には構
成能力が大きく反映されていることを示すもので
あった.また,[呼称][理解][類似]との関連
も示されたことから,対象物の呼称・理解や口頭
指示どおりの行為が可能か否か,抽象的思考の程
度も,CDT に影響を及ぼすと考えられた.以上
より,CDT の施行および結果の解釈には,構成
能力のみならず,言語機能と前頭葉機能を併せた
多角的な検討が必要と思われる.
そして,今回の結果からはCDT が,アルツハ
イマー型認知症を代表とする変性疾患で低下しや
すい記憶や見当識との関連が見られなかったこと
から,自明のことではあるが,認知症の診断に使
用する場合には,他の神経心理学検査と併せての
評価が重要であると考えられた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-25
- Japanese Adult Reading Test(JART)と認知機能障害との関連
- 石束 嘉和 ( 横浜市立みなと赤十字病院精神科 )
- 【目的】認知症患者の病前の知能を推定する検査
としてJART(Japan Adult Reading Test)が
ある.これは英国で開発されたNART の日本語
版で,50 個の漢字熟語を読む事により,IQ 76〜
124 で認知症を発症する病前の知能を推定する事
ができるというものである.確かにこれは軽症な
いしは中等症程度の認知症レベルであるならば妥
当なように思えるが,認知症が重症に進行すると
それに合わせてJART によるIQ も低下する傾向
にあるのが臨床で患者をみていると感じる.
そこで,いったいJART はどの程度までの認
知症で正確に病前のIQ を推定できるのかを検証
するために今回の調査を行った.本調査は後方視
的なものであり,ルーチンに行っている検査に対
して施行した.
【方法】対象は当院物忘れ外来を受診した者のう
ち,JART とMMSE( Mini Mental State
Examination)とHDS-R(長谷川式簡易知能ス
ケール改訂版)を施行し得た200 名の患者.こ
れをHDS-R の点数から低(重症)群と高(軽症)
群に分けた.
低群(N=34):総得点0〜15 点.平均年齢82.5
歳,高群(N=53):総得点24 点以上.平均年
齢77.2 歳
この2 群でJART のIQ を比較した.
【倫理的配慮】横浜市立みなと赤十字病院倫理委
員会の承認を得た.各対象者(あるいは代諾者)
から書面にて同意を得た.
【結果】TIQ は,低群で87.8,高群で104.5 であ
り,両群で1% 以下の水準で有意差があった.
【考察】今回の結果からHDS-R が低下すると,
つまり認知症が重度になるとJART による推定
IQ も低下することがわかった.この結果から一
つには「元来IQ の低い人の方が認知症が重症化
しやすい」という推論も成り立つ.しかし,その
ような先行研究は見当たらない.そうなるとこの
結果からは,JART による推定IQ は軽症〜中等
症までの患者には当てはまるものの,重症例では
必ずしも病前の知能を反映するものではないと推
測できる.HDS-R だけでなくMMSE での結果
も報告する予定である.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-26
- 認知機能障害により医療行為における同意能力が問題となった2症例;MacCAT-Tを用いた医療同意能力の評価について
- 加藤 佑佳 ( 京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学,JST,RISTEX )
- 【目的】高齢者数の増加に伴い,認知症などで同
意能力が低下した高齢者に対する医療行為提供の
在り方は大きな問題であり,そのような患者の医
療選択をサポートするシステムの開発が求められ
ている.今回,身体疾患の医療行為を受ける必要
がある認知機能が低下した患者2 例に,医療同
意能力の評価を予備的に実施した結果を報告する.
【方法】当院精神科病棟に入院し,認知機能障害
により身体疾患に対する医療同意能力が問題とな
った2 症例について,精神症状,認知機能検査,
MacArthur Competence Assessment Tool-
Treatment(MacCAT-T)による医療同意能力を
評価した.なお,MacCAT-T は,(1)理解(6 点),
(2)認識(4 点),(3)論理的思考(8 点),(4)選
択の表明(2 点)の4 つの領域から医療同意能力
を評価するための半構造化面接法である.
【倫理的配慮】症例報告にあたり人物が特定され
ないようデータの扱いには匿名性に十分注意した.
また,学会発表について,本人及び家族に了解を
得た.
【症例1】80 歳,女性,CDR2,認知症.右乳が
ん再発のため,右乳房切除及び腋窩リンパ節郭清
を目的に任意入院となった.NPI-Q12:不安3×
1,夜間行動3×1.MMSE:13 点(時間−5,場
所−4,計算−4,遅延−3,図形−1),EXIT 25:
23 点,WMS-R 論理的記憶:直後0 点,遅延0
点,ADAS-J cog 単語再生:正解数3/4/4 となり,
記憶障害,前頭葉機能障害,視空間認知障害が顕
著に認められた.MacCAT-T は(1)0.9 点,(2)
0 点,(3)0 点,(4)1 点と低く,「今はとくに痛
くない」と繰り返し述べ手術に消極的であった.
しかし,説明の時間帯によっては手術へ同意を示
すこともあり,判断が変動しながらも最終的には
家族を含めた同意を得た.
【症例2】56 歳,男性,CDR1.5 か月前から歩
行障害,失禁が目立ち,正常圧水頭症の診断と治
療を目的に任意入院となった.NPI-Q12:妄想1
×1,興奮2×1,易刺激性2×1,睡眠4×1.
MMSE:21 点(計算−5,書字−1,遅延−3),
EXIT 25:18 点,WMS-R 論理記憶:直後2 点,
遅延2 点,ADAS-J cog 単語再生:正解数3/4/4
であった.MacCAT-T は(1)4.55 点,(2)3 点,
(3)6 点,(4)2 点であり,診断名,症状,手術
で歩行障害が改善することの利点は平易な言葉で
理解しており,一貫して手術に同意した.
【考察】症例1 のように,認知機能障害による判
断力の低下が顕著で,痛みの自覚がない場合,医
療行為への理解を得ることの難しさがうかがえた.
症例2 では,認知機能の低下にも関わらず医療
行為の必要性について一貫した理解が得られた.
これら2 症例からは,医療同意能力の評価にお
いて本人の認知機能レベル,精神症状,治療の選
択肢の複雑さ,痛みなどの自覚症状の度合いなど
を多角的に評価することが重要であると考えられ
た.さらに,患者の医療行為への理解は変動があ
り,繰り返し評価する必要性も示唆された.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-27
- 時間的見当識,平均単語再生数,論理的記憶と推定言語性記憶指数に関する基礎研究;MMSE,ADAS,WMS-Rを用いて
- 小海 宏之 ( 花園大学社会福祉学部,JST,RISTEX )
- 【目的】われわれは,「認知症高齢者の医療選択を
サポートするシステムの開発」の一環として「医
療同意能力判定ツールの開発」に取り組んでいる.
この高齢者の医療同意能力を評価するためには,
理解,認識,論理的思考,選択の表明などのほか,
記憶の認知機能を把握しておくことも重要となる.
しかし,代表的な記憶検査であるWechsler
Memory Scale-Revised(WMS-R)をフルセット
実施するのは,患者にとって大きな負担となる.
そこで今回は,Mini-Mental State Examination
(MMSE),Alzheimer’s Disease Assessment
Scale(ADAS),WMS-R の各神経心理検査の一
つの下位検査から簡易に推定言語性記憶指数
(Verbal Memory Quotient : VMQ)を判定する
ための基礎資料を得ることを目的とする.
【方法】対象はMild Cognitive Impairment
(MCI)群38 名,probable Alzheimer’s Disease
(AD)群33 名の計71 名(男性24 名:平均年齢
71.1±9.4 歳,女性47 名:平均年齢75.6±9.1 歳)
であり,対象者にMMSE,ADAS,WMS-R を
個別に実施した.方法はVMQ とMMSE,ADAS,
WMS-R の各下位検査との相関分析を行い,最も
高い相関係数値となった下位検査について,VMQ
との単回帰分析を行い,それぞれの単回帰式を導
き出した.さらに,これらの下位検査について推
定VMQ の段階別の判定基準を算出した.
【倫理的配慮】本研究の実施に際し,藍野病院倫
理委員会の承認を受け,患者および家族に主旨説
明がなされ了解を得た.
【結果】VMQ と各下位検査間の相関分析の結果,
MMSE は時間的見当識素点(ρ=0.684,p<0.01),
ADAS は平均単語再生数(ρ=0.786,p<0.01),
WMS-R は論理的記憶(即時)素点(ρ=0.967,
p<0.01)が各下位検査中で最も高い相関係数値
となった.また,それぞれの単回帰式は,推定
VMQ=50.203+6.661×(時間的見当識素点),
推定VMQ=39.469+6.762×(平均単語再生数),
推定VMQ=55.290+2.136×(論理的記憶素点)
となった.さらにこれらの単回帰式より,時間的
見当識素点0〜2 点は軽度障害域(VMQ 50〜69),
3〜4 点は境界域(VMQ 70〜79),5 点は普通域
下位(VMQ 80〜89)と判定され,平均単語再生
数1.4 点以下は中度障害域(VMQ 49 以下),1.5
〜4.4 点は軽度障害域(VMQ 50〜69),4.5〜5.9
点は境界域(VMQ 70〜79),6.0〜7.3 点は普通
域下位(VMQ 80〜89),7.4〜10.0 点は普通域
(VMQ 90〜109)と判定され,論理的記憶素点0
〜6 点は軽度障害域(VMQ 50〜69),7〜11 点は
境界域(VMQ 70〜79),12〜16 点は普通域下位
(VMQ 80〜89),17〜24 点は普通域(VMQ 90〜
109),25〜30 点は普通域上位(VMQ 110〜119),
31〜34 点は優秀域(VMQ 120〜129),35〜50
点は最優秀域(VMQ 130 以上)と判定される判
定基準が導き出された.
【考察】本研究結果により得られた簡易にVMQ
を推定するための単回帰式は,テストバッテリー
数や患者の負担が軽減でき,研究デザインや対象
者の状況に応じた応用研究のための重要な基礎資
料になると考えられる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-28
- 言語的反応と行動的反応が見られにくい重度認知症高齢者の聴覚的刺激に対する反応;聴性心拍反応による検討
- 栗延 孟 ( 首都大学東京人文科学研究科 )
- 【目的】認知症が重篤化して寝たきりとなり,言
語的・行動的反応が見られにくい高齢者を対象と
し,聴覚的刺激に対する反応について検討するこ
とを目的とした.
【方法】参加者:関東地方にある特別養護老人ホ
ーム入居者であり,アルツハイマー型認知症が重
篤化して言語的・行動的反応が見られにくくなっ
たbed-bound の高齢者10 名(男性1 名・女性9
名).いずれも参加者も難聴を示す記録は見られ
なかった.
手続き:参加者の健康状態を施設スタッフに確認
した後,同性の実験者により,心拍計を装着した.
聴覚的刺激はホワイトノイズ20 回(ノイズ条件)
と実験者(男性)が録音した参加者の苗字(○○
さん:呼名条件)20 回をランダムに,参加者の
足元の位置からスピーカにより30 秒間隔で呈示
した.刺激の最大音圧レベルは一定とし,刺激の
長さは1 秒とした.
分析:得られた心電図から,一拍ごとの心拍数を
算出し,刺激呈示後10 拍の心拍数と刺激呈示直
前の心拍数の差について,一元配置分散分析を行
い,心拍の加速・減速反応について分析を行った.
【倫理的配慮】協力施設に説明を行い施設から同
意を得た後,参加者家族への説明を行い,同意が
得られた者を参加者とした.研究結果を学会や論
文等で発表することも同意が得られた.なお,本
研究は首都大学東京研究安全倫理委員会の倫理審
査を受け承認された.
【結果】2 名の参加者は,期外収縮が認められた
ため分析から除外し,残り8 名(男性1 名・女性
7 名)を分析対象とした.分析の結果,心拍数に
有意な変化が認められた者は,呼名条件のみが3
名,ノイズ条件のみが3 名,呼名・ノイズ両方
反応した者が1 名,どちらも反応しなかったも
のが1 名であった.特に呼名に対する反応は,
刺激呈示後に一時的な減速反応を示し,その後加
速した者が3 名,刺激後に加速のみを示したも
のが1 名いた.
【考察】本研究では,8 名の参加者の内,7 名が
刺激呈示後に心拍の有意な変化を示した.このこ
とから,認知症が重篤化し,反応をほとんど観察
できない者であっても聴覚的刺激を受容している
可能性は高いことが示唆される.ノイズ条件のみ
に反応を示した者が3 名いたが,ホワイトノイ
ズは日常生活では聞き慣れない参加者にとって新
奇性の高い刺激であり,すべての周波数帯域を均
一に含む音であることから,妥当な結果であると
考えられる.しかし,参加者にとって馴染みがあ
り,また一部の周波数しか含まない呼名条件のみ
に反応した3 名は,刺激の信号性に対して反応
している可能性が高い.呼名に対する反応は,一
時的な減速後加速しており,刺激に対する能動的
な注意を反映していると考えられる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 15:00〜15:50 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 検査A
- 座長: 原田 和佳((医)和栄会原田医院)
- P-A-29
- 健常成人の加齢に伴う言語記憶機能の変化;コンピュータ化記憶機能検査(STM-COMET)を用いた検討
- 小島 綾子 ( 聖マリアンナ医科大学病院認知症(老年精神疾患)治療研究センター )
- 【目的】認知症を罹患していない健常成人でも,
加齢により「物忘れ」は出現しやすくなる為,加
齢の影響における認知機能,特に記憶機能の低下
の特徴を調査し,健常成人の年代毎における標準
を知ることは重要である.我々は,言語記憶機能
に特化した検査であるコンピュータ化記憶機能検
査(以下STM-COMET)を用い,健常成人にお
ける言語記憶機能への加齢の影響と検査に現れる
特徴を検討する.
【対象】30 代から80 代までの健常被験者の横断
的データを用いた.なお,ボランティアで集めた
健常成人のうち,Beck Depression Inventry 20
点以上・長谷川式認知症スケール20 点以下・
Mini-Mental State Examination 23 点以下・the
Rapid Dementia Screening Test 7 点以下,検査
前後の聴取で明確な生活障害がある人は,データ
から削除した.各年代の人数(男/女)は,30 代
が23(14/9)名,40 代が25(12/13)名,50 代
が21(8/13)名,60 代が23(12/11)名,70 代
が26(6/20)名,80 代が18(6/12)名である.
【方法】被験者に現在当教室で作成中であるSTMCOMET
改訂版を実施し,各下位検査項目につ
いて年代毎の平均値を,SPSS を用いて統計解析
し,一元配置分散分析を行った.検討した項目は,
直後自由再生課題(Immediate Verbal Recall,
以下IVR),遅延再生課題(Delayed Verbal Recall,
以下DVR),遅延再認課題(Delayed Verbal
Recognition,以下DVRG),および再認課題の
虚再認数,干渉課題である数字項目再認課題
(Memory Scanninig Test,以下MST)の反応時
間および正答数である.
【倫理的配慮】本研究にあたり聖マリアンナ医科
大学生命倫理委員会の承認の上,全ての被験者に
研究の趣旨を説明し,書面で同意を取得した.
【結果】分析の結果,IVR 正答数,DVR 正答数,
DVRG 正答数,及び,MST の反応時間で有意差
が認められた(表).また,DVRG の回答の仕方
に注目すると,提示されていなかった単語を「有
った」とする誤答で,80 代と他の年代との間に
有意差が認められた.
即ち,健常成人でも80 代になると,全般的
記憶機能と注意力が顕著に低下した.また,健
常成人でも60・70 代から遅延再生能力が他の機
能に先んじて低下し,後に,直後再生能力・再認
能力も低下した.更に,80 代の再認課題誤答
の特徴として,検査で提示されていなかった単語
を「有った」とする誤り(False-Positive)を起
こしやすかった.との特徴は,程度の違いは
あるが,健常成人における加齢に伴う認知機能の
低下が,認知症群の症状の進行と同じ経過を辿る
ことを示した.
【考察】認知機能検査を実施し,カットオフ値や
標準化得点によって認知機能の低下を判断する際
には,検査ごとの加齢に応じた基準を考慮するこ
とが必要と考えられた.特に80 代の認知機能を
評価する際には,加齢の影響を含めた判断が重要
となるだろう.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-30
- アルツハイマー型認知症における嗅覚障害と海馬傍回の萎縮の関連;VSRADを用いた検討
- 岡野 裕 ( 兵庫県立リハビリテーション西播磨病院認知症疾患医療センター )
- 【目的】アルツハイマー型認知症(以下,AD)の
神経原線維変化は,海馬傍回の一部である嗅内皮
質から海馬,新皮質連合野へ広がっていくとされ
ている.嗅覚の伝導路は嗅覚受容細胞から嗅球・
嗅索を経て梁下野と前有孔野と鈎皮質へ至る.一
次嗅覚野と言われている鈎皮質は海馬傍回と接し
ておりAD の初期の病変部位であることから,AD
の早期診断の一助として嗅覚機能の検査が着目さ
れている.
本研究では,簡便な嗅覚同定能力検査キット
「においステッィク」(以下,OSIT-J)をもちい
てAD 患者の嗅覚機能を評価し,海馬傍回の萎縮
程度であるVSRAD との相関を検討した.
【方法】平成24 年1 月から12 月までに当センタ
ーにてOSIT-J を実施した49 名から,前後1 カ
月以内にMMSE,前後2 カ月以内にVSRAD
ADVANCE を実施することができたアルツハイ
マー型認知症と診断された26 名(男性:9 名,
女性:17 名,年齢:80.5±6.5 歳,MMSE:19.2
±3.7)を対象とした.年齢,性別,MMSE,
VSRAD の各データとOSIT-J の得点の相関分析
を行った(Spearman の順位相関係数,有意水準
5%).統計処理には,SPSS Statistics 17.0 を用
いた.
【倫理的配慮】本研究の実施にあたり,兵庫県立
リハビリテーション西播磨病院の倫理委員会の承
認を得ると共に,本人及び家族に口頭と文章で説
明し同意を得た.
【結果】OSIT-J の得点は,VSRAD の値と弱い正
の相関が認められた.その他の,性別,年齢,
MMSE との間には相関はなかった.
【考察】嗅覚障害の程度とVSRAD との相関がみ
られたことから,嗅覚伝導路の一部である鈎皮質
を含む海馬傍回の萎縮の程度を反映している可能
性が示唆された.
MCI においては嗅内皮質の萎縮が目立つ症例
でAD への転換のリスクが高いことが知られてお
り,嗅覚検査は海馬傍回の萎縮の程度を推測する
簡便な検査の一つとして有効であると考えられた.
また嗅覚機能検査とMMSE との間には相関は
なかった.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-31
- コンピュータ化記憶機能検査(STM-COMET)改訂版における認知症スクリーニングの可能性について;アルツハイマー型認知症および軽度認知機能障害の記憶機能の量的・質的側面から見た特徴
- 田所 正典 ( 聖マリアンナ医科大学神経精神科学教室 )
- 【目的】当教室で開発したコンピュータ化記憶機
能検査(STM-COMET)改訂版を用いて,初期
アルツハイマー型認知症(初期AD)および軽度
認知障害(MCI)の特徴を量的側面と質的側面か
ら検証し,スクリーニング検査としての可能性を
検討した.
【方法】対象はNormal 群39 名,MCI 群12 名,
初期AD 群37 名である.MCI はPetersen の診
断基準に,AD はDSM-の診断基準に従った.
対象者は長谷川式認知症スケール(HDS-R),Mini
Mental State Examination(MMSE)とSTMCOMET
改訂版を実施した.量的分析はSTMCOMET
改訂版の下位検査IVR(Immediate
Verbal Recall : 15 単語からなる直後自由再生課
題.1 単語を3 秒間提示し想起時間は30 秒)再
生数,IVR 虚再生数,DVR(Delayed Verbal
Recall : IVR で提示した単語の遅延自由再生課題.
想起時間は30 秒)正解数,DVR 虚再生数,
DVRG(Delayed Verbal Recognition : IVR の15
単語に新たな別の15 単語を加えた30 単語から
なるIVR 単語の遅延再認課題)正解数,DVRG
虚再認パターン(true-positive,true-negative,
false-positive,false-negative),MST(Memory
scanning test : IVR とDVR のマスキング課題)
反応時間,MST 正答数の成績について分散分析
及び多重比較を行い,質的分析は我々の先行研究
の結果をもとに鑑別に有効と思われる5 つの指
標(IVR 虚再生の有無・MST のサポート有無・
エピソード記憶[検査の体験記憶]の有無・DVR
虚再生の有無・DVR で数字を答える)を採択し,
カイ二乗検定を行った.
【倫理的配慮】聖マリアンナ医科大学生命倫理委
員会で承認を受け,被験者に対し説明し文書にて
同意を得た.
【結果】.量的分析:1)初期AD 群はNormal
群との間にDVR 虚再生数を除く全ての項目で有
意差が認められた.MCI 群との間にはIVR 虚再
生,DVR 虚再生,再認パターン(false-negative,
false-positive)で有意差が認められなかったが,
それ以外の項目との有意差が認められた.2)
MCI 群はNormal 群との間に有意差は認められ
なかった..質的分析:1)初期AD 群はNormal
群,MCI 群よりエピソード記憶がなく,MST の
サポートを要しやすかった(p<0.01).2)MCI
群はNormal 群よりIVR 虚再生の出現比率が有
意に高かった(p<0.5).
【考察】STM-COMET 改訂版は初期AD を鑑別
するのに有用な課題が設定された検査であり,初
期AD に認められやすい態度や反応特徴など質的
側面も捉える事の出来る検査であることが示唆さ
れた.ただし,MCI の鑑別には本検査に設定さ
れた課題の量的分析だけでは捉えることはできな
かった.それはMCI は群内のばらつきが大きい
こと,さらにAD 移行群・被移行群が未分類であ
った事が特徴を見出せなかった理由であろう.た
だし,IVR 虚再生はNormal 群よりMCI 群で出
現しやすいため鑑別の指標となる可能性が示唆さ
れた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-32
- 特発性正常圧水頭症(iNPH)の認知障害は前頭葉症状による
- 金井 光康 ( 国立病院機構高崎総合医療センター神経内科 )
- 【目的】近年,特発性正常圧水頭症(idiopathic
normal pressure hydrocephalus : iNPH)に対
する関心の高まりと共に認知度も広がっている.
治療可能な認知症として本疾患が取り上げられる
ことも多い.当院で経験した症例について,認知
機能を中心に検討を加え,報告する.
【方法】頭部画像検査で側脳室の拡大(Evans
index>0.3)があり,iNPH 三徴(歩行障害・認
知障害・排尿障害)の少なくとも一つを呈する症
例を対象とした.Japanese NPH Grading Scale
-revised(JNPHGSr)を用いて臨床的に評価し
た.当科で髄液排除試験を行い症状が改善した症
例に,当院脳外科で腰椎腹腔短絡術(LP shunt)
を行った.LP shunt にてJNPHGSr で一項目以
上の改善をみた症例をdefinite iNPH と定義した.
同意が得られた対象患者に,歩行,頻尿とともに
認知障害の改善を評価した.認知機能の評価は,
mini-mental state 試験(MMSE)の他に,改訂
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),frontal
assessment battery(FAB),Kohs 立方体組み
合わせ試験(KOHS),遂行機能障害症候群の行
動評価(BADS)を用いた.N-isopropyl-123-Piodo-
amphetamine single photon emission
computed tomography(SPECT)を用いて,脳
血流の定量を行った.
【倫理的配慮】データを数量的に扱い,患者個人
を特定できないよう個人情報保護等に十分配慮し
た.また本研究は,当院倫理委員会の承認を得て
いる.
【結果】遂行機能等の前頭葉障害(FAB,KOHS,
BADS)で有意な改善を認めた.MMSE に比し,
HDS-R の点数が増加する傾向をみたが,歩行障
害に比し遅れて改善してくる.SPECT 検査にて,
当初低下していた前頭前野の血流が,LP shunt
後に改善していた.一部の症例では,記憶障害が
遷延してみられる.
【考察】治療によりiNPH での遂行能力は改善す
るものの,記憶障害は残る傾向がある.手術によ
り治る認知症という過度な期待に対しては,慎重
に対応する必要があると考える.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-33
- 脳梗塞後うつ症状と,白質微小構造変化および制御性T細胞の関連について
- 安野史彦(奈良県立医科大学精神医学講座,国立循環器病研究センター画像診断医学部)
- 【目的】我々は脳梗塞後の白質神経回路における
微小構造異常の存在と,脳梗塞後うつ症状との関
係について,拡散テンソル画像(DTI)を用いた
MRI により検討を行った.脳梗塞後うつ病の予
防や対応を念頭に,脳梗塞後の末梢血リンパ細胞
動態と白質微小構造障害の関連についても検討を
行った.
【方法】29 名の亜急性期脳梗塞患者と37 名の健
常被験者に対してDTI による検討を行った.全
脳voxel-based analysis method(VBM)法に基
づき,グループ間のfractional anisotropy(FA)
の差異について比較した.DTI 撮像と同時に採
血を行い,末梢血中のリンパ系細胞の細胞数につ
いて検討した.18 名の脳梗塞患者について,半
年後に同様のDTI 検査を行い,その間の変化を
検討した.
【倫理的配慮】被験者に対して,研究内容に関す
る十分な説明をおこなったうえで,文書による同
意を得た.
【結果】亜急性期脳梗塞患者において,健常者と
比較して,両側内包FA 値が有意に低いことが明
らかになった(図1,a).発症後半年間で,内包
FA 値の有意な増加があり(図1,b),その増加
率はうつ症状改善に関連していた(図2,a).脳
梗塞患者は,亜急性期に末梢血中の制御性T 細
胞数(regulate T-cell : Treg)の低下を認め,そ
の低下の程度は内包FA 値減少に関連していた
(図2,b).
【考察】亜急性期脳梗塞患者における内包におけ
るFA 値低下は,前頭葉―皮質下神経回路の障害
に関連し,脳梗塞後うつ症状の発現につながると
考えられた.我々の所見はまた,脳梗塞後の内包
における軸索損傷に対して,制御性T 細胞が保
護的に作用することを示し,脳梗塞後うつ症状を
はじめとする症状改善に役立つ可能性を示唆した.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 15:50〜16:40 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 症候学
- 座長: 服部 英幸((独)国立長寿医療研究センター行動・心理療法部(精神科))
- P-A-34
- 高齢者における嫉妬妄想の臨床的検討
- 紋川 友美 ( 金沢医科大学精神神経科学教室 )
- 【はじめに】嫉妬妄想は配偶者が不貞を働いてい
ると確信する妄想であり,多様な精神疾患に認め
られる.高齢者や認知症患者においても報告はあ
るが,臨床的な特徴に関する検討は少ない.
【目的】高齢者における嫉妬妄想の臨床的特徴を
明らかにする.
【方法】2011 年1 月から2012 年12 月までに当
科外来を受診した60 歳以上の患者のうち,初診
時に嫉妬妄想をともなっていた患者について,原
疾患,患者背景,経過などをカルテをもとに調査
した.
【倫理的配慮】本研究はレトロスペクティブなも
のであり,データについて患者個人特定できるよ
うな取り扱いはしていない.また,後日こうした
検討をすることを全例の患者・家族に説明してあ
る.
【結果】上記の期間に嫉妬妄想を呈して当科を受
診したのは8 例であり,男性6 例,女性2 例で,
平均年齢は74.0 歳であった.8 例中5 例で癌や
脳梗塞など重篤な身体合併症を伴っていた.6 例
で配偶者に対する暴言や暴力を認めた.配偶者が
過去の浮気を認めたものが2 例あった.認知症
を伴っていたのは5 例であり,その内訳は血管
性認知症2 例,アルツハイマー病2 例,アルコ
ール関連のもの1 例であった.認知症を伴って
いないものは3 例であり,パーキンソン病による
もの,アルコール関連のもの,特定不能の変性疾
患によるものがそれぞれ1 例であった.治療開
始2 ヵ月後の転帰については,認知症例のうち,
転院のため転帰不明の1 例を除いた全例で嫉妬
妄想は軽快・消失した.認知症を伴わない例では
全例嫉妬妄想が持続していた.(抄録作成時,転
帰が不明なものは本検討には含まれていない)
【考察】重篤な身体合併症が高齢者における嫉妬
妄想の危険因子となる可能性がある.また認知症
における嫉妬妄想の経過は比較的良好であると思
われる.当日は対象となる期間を拡げて報告する
予定である.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-35
- レビー小体型認知症入院症例に関する臨床的検討
- 西尾 友子 ( 横浜市立大学附属市民総合医療センター精神医療センター )
- 【目的】レビー小体型認知症(DLB)は,進行性
の認知機能障害や認知機能の動揺性に加え,幻視,
抑うつ状態,妄想などの精神症状や運動障害(パ
ーキンソニズム),自律神経症状といった様々な
臨床症状を呈する.認知症の中でDLB が占める
割合は多いものの,積極的に疑わないと診断が困
難であったり,またパーキンソニズムによるADL
の低下をきたしやすく,抗精神病薬の過敏性を有
する症例があることから,治療が難渋する事も多
い.今後,認知症患者の増加に伴いDLB 患者の
入院症例が増加すること予想される.今回,当セ
ンターにおけるDLB 入院患者症例を後ろ向きに
調査し,診断や治療の問題点について検討した.
【方法】2010 年1 月から2012 年10 月まで当セ
ンターで入院加療された患者のうち,退院時に認
知症と診断されたのは54 例であり,うちDLB と
診断されたのは14 例であった.その14 例の入
院時診断や入院形態,臨床症状,治療薬,退院後
の転帰などについて診療録調査を行った.
【結果】入院時に既にDLB の診断がついていた
のは8 例で,その他6 例の入院時診断はうつ病
や統合失調症,特定不能の非器質性精神障害,特
定不能の認知症など様々であった.入院時の主な
精神症状は幻視5 例,妄想5 例,抑うつ状態2
例で,パーキンソニズムを認めたのは11 例,認
知機能評価ではHDS-R 施行困難2 例,不明2 例
であり,その他の症例のHDS-R 平均得点は18/
30 点であった.入院形態は,措置入院1 例,医
療保護入院10 例,任意入院3 例であった.入院
中にADL の低下からリハビリを要したのは8 例,
深部静脈血栓症(DVT)が発見され抗凝固療法
が開始されたのは3 例であった.また,一時的
に昏迷状態をきたし,胃管管理が必要な症例もあ
った.退院時の処方で,向精神病薬の効果が乏し
いとのことで処方がないのが2 例,抑肝散のみ
が1 例であり,その他の症例では第1 選択薬の
コリンエステラーゼ阻害薬に加えて,抗パーキン
ソン薬や非定形抗精神病薬,抗うつ薬を併用して
いた.転帰は,軽快例は10 例であったが,不変
2 例,悪化2 例も認め,転院加療が必要であった
のは7 例であった.
【考察】DLB は,初期には認知機能障害が目立た
ない症例や,パーキンソニズムが明らかでない症
例が少なくなく,高齢者の精神科治療においては,
DLB の臨床診断基準を理解して診療にあたる姿
勢が重要である.治療時に向精神薬を使用する際
は,効果と副作用について十分考慮して種類や用
量を検討していくことが大切である.また,ADL
低下や,DVT などの身体的問題を合併する症例
が多く,精神症状だけでなく身体面への配慮も必
要である.さらに,BPSD を理由とした精神科
救急事例としての対応が必要な症例も存在するこ
とに留意すべきである.
本研究は横浜市立大学附属市民総合医療センタ
ー倫理審査委員会の承認を受けた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-36
- アルツハイマー型認知症におけるDTIパラメータとADAS-J.cogの関連についての検討
- 北村聡一郎 ( 奈良県立医科大学精神医学教室 )
- 【目的】アルツハイマー型認知症(AD)の認知機
能障害評価尺度として,本邦でAlzheimer’s
Disease Assessment Scale-cognitive component
-Japanese version(ADAS-Jcog.)が使用される.
AD では側頭葉内側部を中心とした灰白質の進行
性萎縮性変化を呈することが知られるが,一方で
進行性の白質構造障害を呈することも報告されて
いる.AD における認知機能障害と白質微小構造
障害の関連性については以前より指摘されている
が,一定の見解は得られていない.このため,今
回の研究では認知機能障害の指標としての
ADAS-Jcog. 下位項目と白質微小構造障害との関
係について検討を行った.
【方法】当科通院中のAD 患者34 名と健常対象
群20 名を対象に頭部MRI,ADAS-Jcog. を施行
した.頭部MRI の拡散強調画像より,解析ソフ
トを用いてdiffusion tensor tractography を行
い,DTI パラメータ(fractional anisotrophy[FA],
apparent diffusion coefficient[ADC],axial
diffusivity[DA],radial diffusibity[DR])を
各線維束について計測した.得られた計測値と
ADAS-Jcog. の各下位項目についてPearson の相
関係数を用いて相関関係を調べた.また有意な相
関関係を得られたものについて,単回帰分析を行
い各項目の関連性の検討を行った.
【倫理的配慮】個人情報の保護・管理は十分に配
慮し,得られた個人情報およびデータはすべて匿
名化し,個人が特定されないよう配慮した.
【結果】AD 群にて拡散パラメータのうちDA で,
ADAS-Jcog. の構成行為と右帯状束,両側上縦束
で,また見当識と右帯状束でそれぞれ有意な相関
関係を認めた.これらについては,単回帰分析に
おいても各項目において有意な関連性を認めた.
一方,健常対象群ではこのような相関関係や関連
性はみられなかった.
【考察】今回の研究ではAD による白質微小構造
障害と認知機能障害において一定の関連性がある
ことが示唆された.上縦束は前頭葉から頭頂葉,
側頭葉を連絡する線維側で,この障害によって視
空間認知障害,実行機能障害が進行し,それによ
り構成行為障害を呈することが考えられた.また
帯状束は辺縁系の各部位を連絡し,認知や記憶と
の関わりをもつ部位とされ,この障害により記憶
障害や内省の欠落を呈することが見当識障害につ
ながることが示唆された.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-37
- 物忘れ外来受診者におけるTemporal Spikeを伴う記憶障害について;Temporal Spikeの出現頻度及び認知機能とBPSD
- 塩崎 一昌 ( 横浜市総合保健医療センター )
- 【目的】高齢者ではてんかんの頻度が増加するこ
とが知られており,今後人口の高齢化とともにて
んかんの有病率の増加が予測される.物忘れ外来
の受診者には突発的脳波異常(spike)を認め,
抗てんかん薬によって認知機能が回復する症例が
あることが報告されている.我々は,temporal
spike の発現と認知機能やBPSD との関係を明ら
かにするために調査を行った.
【方法】平成22 年度の当施設物忘れ外来受診者
858 例について,spike の出現頻度や認知機能,
BPSD について後方視的に調査し,temporal
spike の発生部位と症状の関係について調査した.
【倫理的配慮】本調査は,厚生労働省の疫学研究
に関する倫理指針の内,人体から採取された資料
を用いない観察研究の指針に則り行った.
【結果】対象患者の45 例(5.2%)にspike の出
現を認め,44 例(5.1%)にspiky wave の出現
を認めた.Spike の出現部位は,45 例中43 例
(5.0%)が側頭部優位であり,1 例が前頭部優位,
1 例が頭頂部優位であった.前頭部優位の症例は
脳腫瘍を合併していた.側頭部優位にspike が出
現した43 例中の1 例にも脳腫瘍が合併していた.
脳腫瘍合併例を除き,temporal spike を認めた
42 症例について臨床症状を検討した.年齢分布
は55 歳〜92 歳で(平均78±8.3 歳),男性16 名
(38%)女性26 名(62%)であった.それらの
症例の認知症診断は,アルツハイマー型認知症21
例(50%),軽度認知障害(MCI)12 例(29%),
正常範囲内6 例(14%)混合型認知症3 例(7%)
であった.
Temporal spike のある42 症例の平均得点は,
HDS-R:20.6(±6.1),MMSE:22.1(±4.6),
総合CDR:0.8(±0.6)であった.多くみられ
たBPSD のNPI 項目は,無関心(31%),興奮
(24%),不安(21%),易刺激性(21%),妄想
(19%)であった.
temporal spike の出現部位が左側のみ(12 例),
右側のみ(10 例),両側(20 例)の3 群に分けて
症状の差異を調べた.長谷川式スケール,MMSE,
総合CDR について,one way ANOVA で得点の
差を検定したが,群間に有意差はなかった.
temporal spike の出現部位とBPSD の出現率
についても,3 群間でFisher の正確確立検定に
より発現頻度の有意差を比較した.「興奮」のみ
が,spike 部位別の発現頻度に有意差があり,左
temporal spike 群が右temporal spike 群に比べ
有意に(p<0.05)頻度が高かった.
【考察】脳波をてんかんの診断指標とすると,物
忘れを主訴とする受診者は一般の高齢者より更に
てんかんの有病率が高いと考えられた.
Spike の病因として,本調査のtemporal spike
症例ではアルツハイマー型認知症やMCI が多く,
spike 発生は内側側頭葉の神経変性との関連が推
測された.
左側頭部のspike 発生による脳機能変化が
BPSD の「興奮」に関係していることが推測さ
れた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-38
- うつ病との鑑別に苦慮した皮質基底核変成症の1例
- 洪 基朝 ( 医療法人鴻池会秋津鴻池病院 )
- 症例は56 歳の女性.主訴は意欲がでない.言
葉が出にくい.
病歴:短期大学卒業後,20 歳から56 歳までA
女子大学で事務の仕事をしていた.
平成X−1 年10 月頃に知人から「覇気がない」
「会話の反応が鈍い」と言われたことがきっかけ
で,気分の落ち込みが目立つようになり言葉が出
にくいと思うようになった.次第に家事などの日
常生活が雑になり,何をするにも意欲を感じられ
なくなってきたため夫が心配し,平成X 年3 月
12 日に当科初診となった.当初は,うつ病を疑
い抗うつ薬の投与を行い経過をみていた.その後,
頭部MRI で左頭頂葉の軽度萎縮,SPECT で基
底核領域の血流の低下と左右差を認めまた,各種
認知機能検査から運動性の失語・保続や脱抑制・
被影響性の亢進を伴う前頭葉機能低下,視空間性
の障害と失行といった前頭葉から側頭頭頂葉にお
よぶ認知機能障害をみとめ,皮質基底核変成症の
診断に至った.
学会当日には,症例の経過の詳細と若干の考察
を含めて発表を行う予定である.
【倫理的配慮】報告に関しては,個人が同定され
ないよう匿名性の保持や個人情報の流出に充分配
慮を行い,書面により報告の同意を得た.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- 6月5日(水) 16:40〜17:30 イベントホール(3F)<大阪国際会議場>
- ポスター発表 : 地域医療
- 座長: 数井 裕光(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)
- P-A-39
- 郵送による生活機能調査回答未返送の後期高齢者を対象とした訪問調査
- 井藤 佳恵 ( 東京都健康長寿医療センター研究所,東京医科歯科大学医歯学総合研究科血流制御内科 )
- 【目的】介護予防二次予防事業対象者把握事業は
多くの自治体で,郵送によるアンケート調査によ
って行われている.我々が昨年度行った調査では,
郵送調査票回答未返送の後期高齢女性の中に,高
い頻度で認知症/認知症疑いの者が含まれること
が明らかになった.今回我々は,郵送調査票回答
未返送の後期高齢男女を対象とした,訪問による
健康調査を行った.
【方法】東京都A 区在住の65 歳以上の全高齢
者の中で,4 月から3 月生まれ,要介護要支援未
認定の3270 人を対象として,郵送によるアンケ
ート調査を行った.郵送調査票の回答が未返送だ
った1241 人(未回収率38.1%)の内,75 歳以上
の者413 人(男165 人,女248 人)を訪問調査
対象者とした.昨年度訪問調査を実施した郵送
調査票回答未返送,要介護要支援未認定の後期高
齢女性31 人の内,生存している30 人を訪問調
査対象者とした.訪問調査では,訪問看護師の
聞き取りによるアンケート調査と,精神科医/心
理職によるMMSE,CDR 評価を行った.訪問調
査では,前回調査以降に受けた新たな要介護認
定の有無と介護保険サービス利用状況についても
調査した.
【倫理的配慮】本研究は東京都健康長寿医療セン
ター研究所の倫理委員会の承認を得て行われた.
【結果】調査:対象者413 人に調査協力依頼
文を送付し,145 人から回答を得た(回収率
35.1%).調査協力可の回答を得られた50 人の
内,日程を調整できた43 人(男17 人,女26 人)
に対して訪問調査を行った.MMSE の平均±SD
=26.0±4.5,中央値28.0,CDR=0 が29 人,
CDR=0.5 が5 人,CDR=1 が7 人,CDR=2 が
1 人だった.調査:対象者30 人のうち,11
人が新たに要介護要支援認定を受けていた(要支
援7 人,要介護1:3 人,要介護4:1 人).昨年
度,要介護要支援未認定でCDR≧1 だった4 人
は,3 人が要介護認定を受け,何らかの介護保険
サービスを利用していた.
対象者30 人に調査協力依頼文を送付し,調査
協力を拒否しなかった22 名のうち,日程を調整
できた13 人に対して訪問調査を行った.MMSE
の平均±SD=23.0±6.8,中央値26.0(昨年度
23.7±5.0,25.0),CDR=0 が7 人,CDR=0.5
が1 人,CDR=1 が3 人,CDR=2 が3 人だった.
昨年度CDR=0.5 だった4 人のうち,追跡可能
だった2 人はCDR=1 に進展していた.昨年度
CDR≧1 だった4 人については,2 人がCDR=1
からCDR=2 に進行していた.
【結論】郵送調査票回答未返送,要介護要支援未
認定の後期高齢者の約1 割に対して訪問調査を
実施した.明らかな認知症の出現頻度は18.6%
(昨年度12.9%),認知症疑いを含めるとその出
現頻度は30.2%(昨年度25.8%)であった.
昨年度の訪問調査で検出された地域に潜在する
認知症事例は,1 年の経過で高い確率でCDR が
進行していく可能性が示唆された.
【考察】地域には高い確率で認知症高齢者が潜在
することが示唆された.彼らは大きく2 つの類
型に分けられる.1 つは家族が本人の認知症に気
づいており受診のタイミングを計っている群,も
う1 つは家族の疾病理解不足や援助を希求する
ことに対する心理的抵抗,本人の介入拒否等があ
りいずれ困難事例になることが予想される群であ
る.後者は介護保険の申請までに時間がかかり,
認定後のサービス導入も困難な傾向が認められた.
この群に対する有効なアプローチの方法を考えて
いく必要がある.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-40
- 介護施設における認知症BPSDに対する精神科療養指導の実践
- 服部 英幸 ( 独立行政法人国立長寿医療研究センター精神科 )
- 【目的】認知症BPSD の介護は極めて負担が大き
く,介護施設と医療機関の連携を最も必要とする
状態といえる.単に,施設から病院への紹介,転
院という形では不十分なことが多く,最終的に医
療機関での入院患者滞留を引き起こしている.そ
こで求められているもののひとつは医療機関から
施設への積極的な訪問支援であると考える.現状
においても,介護施設では精神科医師による月2
回以上の療養指導が,介護報酬の加算対象となっ
ている.認知症その他の精神症状をしめす入所者
の診察,ケアへのアドバイスなどが行われている
が,月2 回程度の訪問指導で本当に効果がある
のかについての検証をおこなうことが求められる.
当科では特別養護老人ホームにおいて,訪問指導
を実践してきたので報告する.
【方法】平成24 年5 月1 日より平成24 年12 月
20 日までの期間,当院精神科医師が,近隣の特
別養護老人ホーム(以下A)に2 週間に一度の訪
問による精神科療養指導を行った.A はベッド数
100 床,入所者の平均年齢87.3 歳,要介護度の
平均は3.6 である.療養指導として,介護困難な
精神症状,異常行動を示す例に関しての,症状評
価,対応アドバイスをおこなった.必要に応じ,
医療機関外来への紹介も行い,薬物療法を行った.
対応アドバイスは「BPSD 初期対応ガイドライ
ン」(ライフサイエンス,2012)に準拠しておこな
った.重症度評価と指導の効果判定のため指導前
と4 週間後にCohen-Mansfield Agitation Index
(CMAI)日本語版22 項目を施行した.
【倫理的配慮】本研究は診療・介護事業に付随す
る予備的調査であり,本人家族の承諾は得ていな
いが,個人情報の保護には十分な配慮を行った.
【結果】療養指導をおこなった対象は36 例.男
性6 例,女性30 例.平均年齢85.2 歳,平均介
護度(要介護)3.5 であった.指導を求められた
症状は易怒性,頻回のコールなどの過活動症状群
が27 例,食欲不振などの低活動症状群が9 例で
あった.全例で認知機能の低下が疑われたが,情
報提供書などから施設が得ている情報では,認知
症に関する診断は未診断16 例(44%),アルツハ
イマー型認知症9 例(25%),血管性認知症9 例
(25%),その他2 例(6%)であった.アルツハ
イマー型認知症とされていた症例のうち2 例は
レビー小体型認知症の診断基準に合致すると考え
られた.MMSE,長谷川式などの認知機能評価
は行われていなかった.指導の大半はガイドライ
ンの「直ちにできるケア」を中心とし,非薬物療
法を優先した.症状が改善せず,薬物療法を選択
した例が5 例あった.内訳は易怒性2 例,落ち着
きのなさ2 例,幻覚1 例であった.CMAI による
評価は指導前63.4 から4 週間後59 へと軽度な
がら改善傾向を認めた.
【考察】介護施設における精神科療養指導は需要
が多く,効果も認められるが,詳しい客観的な評
価が十分でなく,さらに検討が必要であると考え
られた.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-41
- 医療‐行政‐介護が連携した茨木市認知症サポートシステムの構築;認知症予防・介護予防も考慮したモデルを目指して
- 園田 薫 ( 茨木市医師会高齢者対策委員会,藍野病院老年心身医療センター )
- 【目的】超高齢化社会の現在,認知症は予防から
終末期まで医療−行政−介護の垣根を越えたシー
ムレスな連携が必要なCommon diseasede であ
り,幾つかの自治体で先駆的な連携の試みがなさ
れつつある.
茨木市では,医師会を中心に行政,介護と協議
を重ね,認知症予防や早期発見,BPSD による
入院治療も含めた認知症の地域でのトータルサポ
ートシステムの構築を始めておりこれを報告する.
【方法】
地域での認知症者の早期発見と医療機関への誘
導
専門医ではないかかりつけ医による認知症診
断・治療の実施
医療−行政−介護による患者情報の共有化
(地域連携パス)
BPSD 入院時の退院支援パス
地域高齢者への認知症予防啓発
に重点を置き,医師会が主導し行政や介護福祉関
係者と連携して認知症早期診断・治療ネットワー
ク事業の構築を試みた.
【倫理的配慮】本研究の実施に際し,茨木市医師
会の倫理委員会で承認を受け,患者,家族に主旨
説明がなされ同意を得ている.
【結果】上記の重点項目に対して,
介護支援専門員などの用いる早期発見簡易チェ
ックシートの作成
かかりつけ医が用いるスウェーデンで開発され
た認知症診断・治療サポートシステム(DMSSR)
の導入
在宅連絡ノート=地域連携パス(はつらつパス
ポート)の作成
BPSD 入院の受け入れ先の一つである藍野病
院にて退院支援パスモデルの作成と実施
茨木市の65 才以上の高齢者を対象にした,認
知症予防・介護予防の冊子の作成と配布
(はつらつパスポートの一部)
以上を実施することで,認知症予防から進行期
での在宅支援までサポートする地域ネットワーク
を構築した.
【考察】このネットワーク事業の推進やその過程
で得られる問題点の検証は,今後ますます増加が
予測される認知症者の,地域での予防から治療・
ケアの一つのモデルとなりうる.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-42
- 高齢者専門医療機関における認知症疾患医療センターの活動に関する臨床研究
- 浅木 裕香 ( 順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター認知症疾患医療センター )
- 【目的】順天堂東京江東高齢者医療センターでは,
平成24 年4 月より認知症疾患医療センターの活
動を開始している.認知症疾患医療センター事業
は,平成20 年に全国150 施設を目標としてスタ
ートし,現在基幹型8 施設,地域型165 施設で
実施している.東京都では順天堂東京江東高齢者
医療センターを含む都内12 施設で認知症疾患医
療センターの活動を開始しており,管轄地区は区
東部(江東区,墨田区,江戸川区)となっている.
順天堂東京江東高齢者医療センターは平成14 年
に開設され,高齢者認知症専門病棟にはベッドを
129 床,一般病棟にはベッドを219 床有する高
齢者専門医療機関である.すでに地域連携室が認
知症相談に対応しているため,メンタルクリニッ
クに関する相談窓口は現状2 つ.分業を図るた
め,対象者を分けて対応し始めた.地域連携室で
は主に本人,家族からの相談窓口,認知症疾患医
療センターでは主にかかりつけ医,地域包括支援
センター等の医療,福祉,介護関係者からの相談
窓口となっている.当院の認知症疾患医療センタ
ーの特徴としては,初診枠を特別に設け,専門医
療の必要性が高い方を優先的に診察に繋げている
点である.このような高齢者専門医療機関に設置
された認知症疾患医療センターの活動について統
計を分析し,求められる機能と役割について検討
を行った.
【方法】認知症疾患医療センターが開設された平
成24 年4 月から平成25 年3 月までの1 年間に
おける電話相談をもとに,相談内容,相談者,住
まい,初診予約から受診までの待機期間,入院に
ついてまとめ,検討を行った.
【倫理的配慮】個人が特定されないよう,また個
人情報の取り扱いに関して,十分な配慮を行った.
【結果】本人,家族が初診予約窓口として電話を
かけてくるケースが多数認められた.地域包括支
援センターの相談者の中には,2 回,3 回と相談
回数が増えていたケースもあり,徐々に定着して
いることが分かった.メンタルクリニック初診予
約から診察までの待機日数に関して,通常予約で
は平均約71 日に対し,認知症疾患医療センター
での待機日数は約9.4 日であった.受診相談件数
又は相談内容等については当日発表する予定であ
る.
【考察】調査の結果,本人,家族に対し相談経路
を明確に周知できておらず,本来の役割を生かし
きれていない.また,本来の相談対象者との信頼
関係が不足していることから,相談回数に反映す
ることが出来ていないと考えられる.気軽に認知
症疾患医療センターを利用できる仕組みや,敷居
の低さなど,積極的にアピールしていくことが課
題として挙げられる.一方では,地域で抱えきれ
ない方に対し,早期に専門医療に繋ぐ体制が整っ
てきていると示された.認知症疾患医療センター
という部署が立ち上がったことで,精神保健福祉
士から医師に直接相談できる経路が確保されたと
考える.可能な限り早急に相談者に返答ができる
ため,早期対応が可能になった.この経路を生か
し,「地域に生活する認知症の方が,必要時に専
門医療を受けられる相談窓口」として確立してい
きたい.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.
- P-A-43
- 関西医科大学附属滝井病院精神神経科外来における高齢者初診患者の検討
- 鈴木 美佐 ( 関西医科大学附属滝井病院精神神経科 )
- 【目的】学校法人関西医科大学は,北河内二次医
療圏に3 か所の附属病院(枚方,滝井,香里)を
開設している.附属滝井病院(以下,当院)では,
精神診神経科を中心にして平成5 年度より老人
性痴呆疾患センター(当時)の指定を受け,平成
22 年度まで認知症疾患医療センター事業を継続
してきた.そのため,事業の中心となる鑑別診断
と初期対応は当科外来臨床に組み入れながら展開
してきた.しかし,平成23 年度より同事業を返
上した.今回演者らは,平成22 年度(センター
事業指定病院)と平成23 年度(非指定病院)の
当科の高齢者初診患者の内訳を調査することによ
り,高齢者の精神医学的問題に関して検討を行っ
た.
【方法】平成22 年度1470 例,平成23 年度1505
例の外来初診症例のうち65 歳以上の症例に関し
て,主訴,受診経路,初診時診断,初診後の転帰
などを調査した.
【倫理的配慮】年間統計であり,受診患者や紹介
医療機関が特定されることがないよう集計を行っ
た.
【結果】65 歳以上の症例は721 例(49.0% 平成
22 年度),735 例(48.8% 平成23 年度)とそ
れぞれ全体の約半数を占めており,初診患者に占
める高齢者の割合に差は認められなかった.これ
らの症例の受診経路としては,精神科以外のかか
りつけ医からのご紹介が大半であった.紹介状の
無い例に関しては111 例(15.3% 平成22 年度),
81 例(11.0% 平成23 年度)と僅かであるがセ
ンター事業時のほうが,緊急ケースやセルフネグ
レクトに近い状態の受診に即応していた.
【結語】当科外来の高齢者初診症例においては,
センター事業の有無と関わらず,もの忘れを主訴
とする例が過半数を占めていた.当時2 年間に
おける診療報酬においては紹介したかかりつけ医
が算定できる項目に変化はなかったため,かかり
つけ医が当該患者の主治医として専門医療機関に
紹介する意味では,センターであるかどうかは問
題ではなかったと考えられる.また,当院も平成
23 年度は「認知症疾患医療センターに準じた病
院」として承認を受け,認知症疾患医療センター
としての保険請求が算定可能であった.平成24
年度からは,保険請求上,センター指定病院と非
指定病院は全く算定要件が異なっている.当日は,
平成24 年度の初診患者推移も含めたうえで若干
の考察を行いたい.
本研究は公益社団法人日本老年精神医学会の利
益相反委員会の承認を受けた.