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プログラム
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ポスター発表
6月21日(木) 9:40〜10:40 ポスター会場第2・3展示場
検査(1)
座長:加藤伸司(東北福祉大学総合福祉学部)
P-B-1
重度認知症者の認知機能検査に関する研究(第2 報);日本版SMMSE,SCIRS の信頼性に関する検討
田中寛之(医療法人晴風園今井病院,大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科),植松 正保(医療法人晴風園今井病院),福原啓太(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科,医療法人達磨会東加古川病院),大西久男,西川隆(大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科)
【目的】現在あるMMSE,HDS-R などの認知機能検査は重度認知症者にとって「床効果を示す」「集中力が続かない」などの問題点が指摘されており,残存している認知機能を評価することが難しい.
海外では重度認知症の認知機能検査としてSevere Mini Mental State Examination(SMMSE), Severe Cognitive ImpairmentRating Scale(SCIRS)などが開発されている.
第1報ではSMMSE,SCIRS,MMSE,HDS-Rの相関性と成績分布を検討し,検査法としての妥当性を検討した.今回の目的は,検査−再検査信頼性と評価者間信頼性を検討して,SMMSE とSCIRS の臨床的有用性を示すことである.
【方法】対象:療養型病院に入院中で,DSM‐ の診断基準と,病歴,症状,神経学的所見および画像所見によって認知症と診断された患者79 名.全員に下記の認知機能検査を行なった.うちCDR 3 の対象者から無作為に抽出した20 名について検査−再検査信頼性の検討を行ない,別の23 名に評価者間信頼性の検討を行なった.
認知機能検査:各対象者にHDS-R,MMSE,SMMSE,SCIRS を施行し,4 者間の相関性を検討した.
検査−再検査信頼性・評価者間信頼性:検査−再検査信頼性をみるために,同一の検査者が2 週間以内に検査を施行した.評価者間信頼性をみるために,別の検査者が2 週間以内に検査を施行した.
【倫理的配慮】各検査の所要時間は約10 分で対象者の疲労に配慮し,同週内の2〜4 回に分けて実施した.信頼性を検討する対象者には家族からの同意を得た.本研究は大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科の倫理審査委員会の許可を得て実施した.
【結果】認知症重症度別内訳はCDR1:18 名,CDR2:14 名,CDR3:47 名であった.性別は男性21 名,女性58 名,平均年齢は86.7±6.8 歳であった.
併存妥当性の検討において,第1 報と同様に各検査の相関性をSpearman の順位相関係数により有意な相関を得た.
検査−再検査間信頼性,評価者間検査信頼性のSpearman の順位相関係数は,SMMSE でそれぞれ0.945,0.872,SCIRS で0.883,0.942 でありともに有意な相関を得た.
認知機能検査の平均得点(最小値−最大値)は,MMSE では10.6±6.2(0−27),HDS-R では9.3±6.7(0−27),SMMSE では21.4±8.7(0−30),SCIRS では22.0±7.7(2−30)であった.
MMSE,HDS-R の低得点群はSMMSE,SCIRSにおいては全体的に分散して分布しており,MMSE・HDS-R がともに0 点であった対象者では,SMMSE では0−5 点の得点の幅があり,SCIRS でも2−5 点の幅があった.以上よりSMMSE,日本語版SCIRS は重度認知症者の残存する認知機能を詳細に幅広く測定しうることが示唆された.
【考察】SMMSE とSCIRS は既存の検査のMMSE,HDS-R と比較して重度認知症者の残存する認知機能をより詳細に評価でき,信頼性・妥当性のたる検査であることが示唆された.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-2
アルツハイマー型認知症患者における断酒後のMMSE 得点の変化
戸田愛子,田形優子,中田知子,小松美和,柴田展人,新井平伊(順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学)
【目的】アルコール依存症患者と認知機能との関連や,認知症を発症するリスク要因としてのアルコールに関する研究(Tyas,2001)は多くみられるが,アルツハイマー型認知症(Alzheimer’sDisease ; AD)と診断された患者とアルコールに関する研究はほとんどみられない.本研究では,AD 患者が断酒した際の認知機能の変化を検討することを目的とした.
【方法】順天堂医院メンタルクリニックを受診し,DSM- 及びNINCDS-ADRDA によりAD と診断された患者で,習慣的飲酒歴のない18 名(男性=11,女性=7,平均58.1 歳)をコントロール群とし,習慣的飲酒歴がありAD と診断された後に断酒した20 名(男性=17,女性=3,平均60.0歳)をアルコール群とし,ベースライン・半年後・一年後の認知機能検査を調査した.次に,アルコール群のみにおいて,断酒前のアルコール消費量により多群(男性=12,女性=0,平均62.0 歳)と少群(男性=5,女性=3,平均57.1 歳)に分け,同様に調査した.認知機能検査にはMiniMental State Examination ; MMSE(Flostein,Flostein, & McHugh, 1975)を使用した.アルコール飲酒量は,Mukamal ら(2001)に基づき1 週間のアルコール消費量に応じたカテゴリに分類した:opportunity,former drinkers,1-7/w,8-14/w,≧15/w.次に,カテゴリから少群(formerdrinkers,1-7/w)と多群(≧8/w)に分類した.コントロール群とアルコール群を独立変数とした3 時点のMMSE 得点において,二要因反復測定分散分析を行った.次に,アルコール消費量の多群及び少群を独立変数とした3 時点のMMSE 得点において二要因反復測定分散分析を行った.多重比較にはBonferroni 法を用いた.
【倫理的配慮】本報告は,個人情報の保護に留意し,個人が同定できる情報は排除して行われた.
【結果】分析の結果から,ベースラインのMMSE得点おけるコントロール群(mean=22.1,SD=2.29)とアルコール群(mean=22.9,SD=2.88)に有意な差はみられなかったが,コントロール群のみにおいて,ベースライン時よりも半年後(mean=19.8,SD=3.64)のMMSE 得点,及び一年後(mean=18.6,SD=4.8)のMMSE 得点が有意に低かった(P<.01).次に,アルコール消費量の少群において3 時点によるMMSE 得点の有意な差はみられなかったが,多群においてベースライン時(mean=23.3,SD=3.06)よりも一年後(mean=20.4,SD=5.49)のMMSE 得点が有意に低かった(P<.01).
【考察】本研究では,AD と診断された後に断酒した場合,一般的なAD の人と比べ1 年後の認知機能の低下がなく,断酒前の飲酒量が少ない人の方が多い人よりも認知機能の低下がみられないことが示唆された.これらはAD の認知機能障害の発現やその経過に,アルコール多飲が影響する可能性を示しており,今後放射線的,遺伝子的な検討も必要と考えられる.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-3
「もの忘れ外来」フォローアップ研究;初診時MCI 群を対象とした検討
川合嘉子,植田裕吾(鶴川サナトリウム病院),今井幸充(日本社会事業大学大学院)
【目的】軽度認知障害(MCI ; Mild CognitiveImpairment)は正常と認知症の中間の状態と定義され,経過観察が重要視されている.本研究では認知症専門病院を継続受診する患者を対象に,定期的なフォローアップ検査の詳細な報告を目的とする.とくに神経心理検査に関して,認知症への移行を予測する課題について探索的に検討する.
【方法】対象は,鶴川サナトリウム病院「もの忘れ外来」患者のうち,初診時に問診,頭部画像検査,神経心理検査を含む各種検査を実施したうえでMCI と判定され,1 年6 か月以内に2 回目の検査が可能であった56 名である.(1)全患者を対象に2 回の成績の変化を明らかにし,(2)2 回目で認知症と診断されず機能維持していた者(以下,維持群とする)と,診断された者(同,移行群)の特徴及び検査結果を比較検討する.評価項目は,年齢,性別,教育年数,診断名,HDSR,ADAS-Jcog を用い,各種統計的手法を用いて分析を行う.
【倫理的配慮】データは匿名化され,鶴川サナトリウム病院個人情報保護規定に準拠している.
【結果】対象者は,平均年齢78.0 歳(SD 5.98),男性15 名,女性42 名,平均教育年数12.2 歳(SD3.00)であった.検査間隔は平均231.8 日であった.
(1)1 回目平均HDS-R 21.8 点(SD 6.05),ADAS-Jcog 合計9.5 点(SD 4.19),2 回目平均HDS-R22.0 点(SD 4.93),ADAS-Jcog 合計10.5 点(SD4.38)であり,2 回目の得点はADAS 合計について有意に低い傾向(p<.10)がみられた.
(2)2 回目の検査の結果,認知症と診断された移行群は14 例(23%)あり,診断はアルツハイマー型認知症13 例,血管性認知症1 例であった.維持群と移行群の間には年齢においてのみ移行群が有意に高い結果が得られ(p<.05),性別,教育年数に差はみられなかった.神経心理検査について比較すると,移行群は1 回目でHDS-R「言語の流暢性(野菜名想起)」得点(p<.05),HDSR合計(p<.05)で有意に低い結果が得られた.2 回目の検査において移行群はHDS-R 合計(p<.05),ADAS「見当識」(p<.01),ADAS 合計得点(p<.01)で有意に低い結果が得られた.
【考察】「もの忘れ外来」におけるMCI から認知症への移行率は,先行研究と同水準であった.移行群は年齢が有意に高く,初診時にMCI で高齢の場合にはより注意深い経過観察が望まれるだろう.MCI から認知症への移行リスクが高い患者は,早期から言語流暢性が低下している可能性が示唆された.言語流暢性は前頭葉機能を反映すると言われており,MCI の中でも自発性減退や軽度の自己抑制力の低下が生じている患者には着目したい.またMCI から認知症へ移行に際しては,見当識障害が表面化することがサインの一つであることが窺われた.本研究では,薬物療法,介護サービスの利用状況,既往歴などの影響要因を考慮していないため,今後更なる検討をしていく.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-4
WAIS‐III 成人知能検査におけるレビー小体型認知症の認知的特徴;アルツハイマー型認知症との比較検討から
松島えりか,川端康雄,岡本洋平,富樫哲也,山内繁,市山正樹,久保洋一郎,二宮ひとみ,若林 暁子(大阪医科大学神経精神医学教室),磯田佑太郎(医療法人杏和会阪南病院),米田博(大阪医科大学神経精神医学教室)
【目的】WAIS は,高齢者の認知機能評価には向かないとの意見もあるが,Lezak(1976)は,WAISは最重度の障害者を除くすべての人にとって,神経心理学的検査の骨格となると述べており,認知症においてもWAIS によって全般的知的機能の把握や個々の能力の評価をすることが必要であると考える.WAIS に関しては,過去にWAIS-R を用いたレビー小体型認知症(以下DLB)とアルツハイマー型認知症(以下AD)との比較研究は行われているが,WAIS- を用いたDLB の研究はまだ少ない.本研究では,WAIS- のIQ,群指数,下位検査評価点,指数間の差に関してDLBをAD と比較することで,DLB の特徴を検討する.
【対象と方法】対象は当院認知症専門外来を受診した患者で,DLB 群11 名(平均年齢74.0±5.7歳),AD 群18 名(平均年齢77.5±5.6 歳)である.また各群の教育歴は,DLB 群で10.6±2.2年,AD 群で9.9±2.8 年である.これら対象者の群別の平均年齢および教育歴に有意差はない.方法は,対象者にWAIS-III IQ 用11 下位検査に「符号(対再生・自由再生)」を加えて施行した.その結果からIQ,群指数,下位検査評価点,指数間の差についてt 検定でDLB 群とAD 群との比較検討を行った.
【倫理的配慮】データを数量的に扱い,個人が特定されないよう匿名化した.
【結果】AD 群に比してDLB 群が有意に低かったのは,群指数「知覚統合」(p<.01),「全検査IQ」「動作性IQ」,下位検査「符号」「積木模様」「行列推理」「絵画配列」「理解」(p<.05)であった.一方で,AD 群に比してDLB 群が有意に高かった項目は補助問題「符号(対再生)」(p<.05)であった.言語性IQ と動作性IQ の差については,AD 群に比してDLB 群が有意に大きかった(p<.05).
【考察】先行研究の下村(2011)と同様に,DLB群で動作性IQ を構成する課題が有意に低い結果となり,DLB における視覚認知や視覚構成,また運動面の能力の低さがうかがえる.「符号」では,得点の低さに加えてふるえや歪みなどがみられ,質的に評価することもDLB の特徴を捉えるにあたっては有効であると考えられる.一方,下村(2011)とは異なり,今回は全検査IQ と「理解」でDLB 群が有意に低い結果となった.これについては,DLB の中で幻覚,妄想などの精神症状やパーキンソン症候群が前景に立っている場合,DLB と診断される過程で他の診断名を経ていたり,本人や家族が記憶障害に目を向けていなかったりしたことなどいくつかの原因が考えられる.その結果,認知症専門外来を受診した際には全般的な認知機能がかなり低下した状態にあったのではないかと推測される.
本研究ではIQ 用11 下位検査を用いており,WAIS- の大きな特徴である4 つの群指数をすべて算出できてはいない.一部の症例に13 下位検査を実施した経験から,群指数「処理速度」や下位検査「記号探し」の得点が低い印象を受けている.今後は対象者に13 下位検査での評価を行い,今回扱えなかった残り2 つの群指数「作動記憶」「処理速度」を含め,DLB の特徴についてさらに検討することが課題である.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-5
健常高齢者のADAS-J cog.「単語再生課題拡張版」の成績(2);直後再生における半年後の反復と遅延再生
佐久間尚子,伊集院睦雄,杉山美香,稲垣宏樹,宮前史子,井藤佳恵,粟田主一(東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム)
【目的】ADAS-J cog.「単語再生課題拡張版」の有用性を検討するため,昨年に続き,都市在住高齢者を対象とする介入研究のデータを分析した.今回は,半年後の反復効果と追加の遅延再生の成績,および年齢,教育年数との関係を分析した.
【方法】対象:東京都A 区在住の65 歳以上の高齢者3827 人(4 月から9 月生まれ)を対象とする郵送法アンケート調査において,自治体のウォーキング教室への参加希望を記入し,説明会にて参加同意の得られた95 名(65−90 歳で平均74.7歳)のうち,初回および半年後の2 回の検査を受けた74 名(65−88 歳で平均74.0 歳,追跡率78%).検査方法:自治体の会議室にて個別面接検査を実施した.初回には精神科医によるMMSEとCDR の評価(約30 分)の後,心理検査者による認知機能検査を実施し(約60 分),2 回目には心理検査者による認知機能検査のみ実施した.認知機能検査:AQT,WMS-R の論理記憶(直後と遅延再生),ADAS-Jcog.「単語再生課題拡張版」,WAIS- の符号および補助問題と類似,TMT-AとTMT-B を実施した.ADAS-Jcog.「単語再生課題拡張版」に関しては,実施の都合上,6 リスト中2 リスト(以下A,B)を実施した.AB,BAの第1,第2 リストの順序を対象者にランダムに割り当て,AB 間にWAIS- の類似を挟んで2リストを実施した.2 回目のみ,最後にAB 2 リストの遅延自由再生を実施した.
【倫理的配慮】本研究は東京都健康長寿医療センター研究所の倫理委員会の承認を得て行われた.
【結果】初回時にCDR=0 と判定された64 名(男女;28/36 名,AB;33/31 名)を分析対象とした.64 名の平均年齢は74.0 歳(65−88 歳),平均教育年数は13.6 年(9−20 年),MMSE の平均得点は28.6 点(25−30 点)であった.半年後の反復効果:直後の正再生の平均得点は,初回A が5.6,7.7,8.5,B が5.7,7.7,8.4 で,2 回目A が5.5,7.8,8.5,B が5.8,7.9,8.6 であった.提示順序を群間要因,リスト(A,B)と試行(3 回)と検査回を群内要因とする4 要因分散分析を行った結果,試行の主効果のみ有意であり(p<.001),他は差がなかった.遅延再生の成績:直後再生の終了から遅延再生の開始までの平均遅延時間は第1 リストが23.4 分,第2 リストが9.1 分だった.遅延再生の正再生の平均得点は,AB 群でA 4.2,B 6.5 であり,BA 群でB 3.8,A 6.3 であった.提示順序を群間要因,リストと試行(直後+遅延の4 回)を群内要因とする3 要因分散分析を行った結果,試行の主効果(p<.001),提示順序とリストの交互作用(p<.05),提示順序とリストと試行の交互作用(p<.001)が有意であった.年齢と教育年数との関係:直後再生,遅延再生の成績と年齢との相関はなく,直後A の第1 試行のみ教育年数と相関した(p<.05).
【考察】継続参加する健常高齢者のADAS-J cog.「単語再生課題拡張版」の得点はリストに関係なく半年後も良く再現された.遅延再生の得点は遅延時間(または2 リストの反復実施)によって差が生じることが示された.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-6
初期アルツハイマー型認知症及び軽度認知機能障害の記憶機能の特徴
田所正典,塚原さち子,小島綾子,荒井淳,山田一子,寺本晴樹,山下恵美,富永桂一朗,板谷光希子,野口美和,石川哲也,副島香織,岩藤元央,鈴木慈,山口登(聖マリアンナ医科大学神経精神科学教室)
【目的】当教室で開発したコンピューター化記憶機能検査(以下:STM-COMET)を用いて初期アルツハイマー型認知症(以下初期AD)および軽度認知障害(以下MCI)の記憶機能の特徴を検討した.
【方法】対象はNormal 群13 名,MCI 群17 名,初期AD 群12 名である.MCI はPetersen の診断基準に,AD はDSM- の診断基準に従った.対象者には長谷川式認知症スケール(以下:HDSR),Mini Mental State Examination(MMSE)とSTM-COMET を実施した.STM-COMET の3 つの下位項目[IVR : Immediate Verbal Recall(15 単語からなる直後自由再生課題.1 単語を3秒間提示し想起時間は30 秒),DVR : DelayedVerbal Recall(IVR で提示した単語の遅延自由再生課題.想起時間は30 秒),DVRG : DelayedVerbal Recognition(IVR の15 単語に新たな別の15 単語を加えた30 単語からなるIVR 単語の遅延再認課題)]の成績で検証した.
【倫理的配慮】聖マリアンナ医科大学生命倫理委員会が承認した同意説明文を用いて,被験者に対して口頭と文書で説明し,文書にて同意を得て行った.
【結果】1)IVR は初期AD 群で他の二群と比べ有意に低値であったが,Normal 群とMCI 群間に有意差は認められなかった.2)DVR はNormal 群,MCI 群,初期AD 群の3 群間それぞれで有意差が認められた.3)DVRG は初期AD 群で他の二群と比べ有意に低値であったが,Normal 群とMCI 群間に有意差は認められなかった.
DVRG の虚再認(見たはずの単語を見てないと答えた)数は初期AD 群で他の二群と比べ有意に多かったが,Normal 群とMCI 群間に有意差は認められなかった.
【考察】MCI は,DVR が低値となり遅延再生力が低下していたが,IVR で反映される記銘力やDVRG で反映される再認力は比較的保たれていた.一方,初期AD は,IVR,DVR,DVRG の全てが低値を示し,他群より,記銘力,遅延再生力,再認力など全般的な記憶過程の低下が生じるのが特徴であると考えられた.
さらに,初期AD ではMCI および健常群に比べ虚再認数が多く,手掛かり再認および手掛かり再生の機能低下も示唆された.
これらのことより,STM-COMET で反映される遅延再生力の障害に加え,記銘力,再認力の障害が,AD 診断に必須の日常生活機能障害の顕在化と関連することが示唆された.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
6月21日(木) 10:40〜11:30 ポスター会場第2・3展示場
検査(2)
座長:佐野 輝(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科精神機能病学分野)
P-B-7
レビー小体型認知症の探索眼球運動の特性
村岡明美(久留米大学高次脳疾患研究所,医療福祉専門学校緑生館),森田喜一郎,小路純央,藤木僚(久留米大学高次脳疾患研究所,久留米大学医学部神経精神医学講座),中島洋子(久留米大学高 次脳疾患研究所,久留米大学医学部看護学科),石井洋平,浅海靖恵(久留米大学高次脳疾患研究所),内村直尚(久留米大学医学部神経精神医学講座)
【目的】久留米大学病院もの忘れ外来において,HDS-R,MMSE,MRI 等の検査に加えて探索眼球運動検査を行ない検討してきた.S 字を用いた探索眼球運動は,小島らにより開発された日本特有の視覚機能検査法であり,反応的探索スコア(以下,RSS)は対人的な視覚認知機能を反映する指標と報告されている.今回,受診者において探索眼球運動検査装置を用いて,RSS を精神生理学的指標として,レビー小体型認知症の特性を老年健常群,他の認知症群を比較検討したので報告する.
【方法】探索眼球運動はナック社製のEMR-8(特許第4357200 号:登録日2009.8.14)を使用し,横S 字型図形(以下,S 字)を見せ,小島らの手法にて総移動距離及びRSS を計測した.セッション1(以下,S1)ではS 字の標的図を呈示し,セッション2(以下,S2)及びセッション3(以下,S3)では標的図と一部異なる図を一枚ずつ呈示して比較・照合課題を施行した.また,検査後にS 字絵を1 個以上正確に描けた者のみデータとした.検査は1 人あたり5 分程度で可能である.総ての被験者に,注視が可能な者のみ検査を施行した.診察後にMRI を施行しVSRAD 解析を行なった.
【対象】もの忘れ外来に来られた被験者240 名(平均年齢73.4±7.8 歳)を対象とした.総ての被験者を非認知症群(HDS-R が21 点以上でMMSEが24 点以上:152 名),認知症群(HDS-R が20点以下,MMSE が23 点以下:88 名)に区分した.さらに,認知症群を,病状およびMRI を参考にアルツハイマー型認知症群(45 名),レビー小体型認知症群(11 名),脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症群(以下,混合型群)(6 名),脳血管性認知症(14 名),その他の認知症(12 名)と区分した.各認知症間の年齢に有意差は無かった.
【倫理的配慮】総ての被験者には,当研究を書面にて説明し同意を得たのち施行した.尚,当研究は,久留米大学倫理委員会の承認を得て行っている.
【結果】HDS-R およびMMSE は,各認知症間に有意差は観察されなかった.MRI のVSRAD のZ スコアは,レビー小体型認知症群が,アルツハイマー型認知症群および混合型群より有意に小さい値であった.RSS は,S2 では認知症群間に有意差は観察されなかった.S3 では,認知症群間ではレビー小体型認知症群が,アルツハイマー型認知症群および血管性認知症群より有意に小さい値であった.S2 とS3 の合計である反応探索スコアでも,レビー小体型認知症群が,アルツハイマー型認知症群および血管性認知症群より有意に小さい値であった.探索眼球運動検査後のS 字描画点数は,レビー小体型認知症群が,アルツハイマー型認知症群より有意に大きい値であった.
【考察】レビー小体型認知症の特性は,神経心理学的検査では他の認知症と差はないが,探索眼球運動では明らかに視覚認知機能が低下することが示唆された.以上のことから,探索眼球運動のRSS 解析は,侵襲も無く簡単でいずれの場所でも検査可能であり,レビー小体型認知症の診断の生理学的指標として早期診断に有用と考える.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-8
高齢者認知機能の経時変化に及ぶ,血中脂質濃度,血圧およびApoE 遺伝子多型の影響;利根町研究における高齢者の前向き縦断的調査
安野史彦(筑波大学付属病院,国立循環器病研究センター),谷向知(筑波大学付属病院,愛媛大 学医学部付属病院),佐々木恵,池嶋千秋(筑波大学付属病院),山下史生,児玉千稲(筑波大学付属病院,国立精神神経センター),日高真,水上勝義,朝田隆(筑波大学付属病院)
【目的】高齢者の認知機能と血圧,血中脂質濃度との関連を扱ったこれまでの研究は必ずしも一致した結果を示していない.それに対するひとつの説明は,遺伝子要因の関与である.我々はApoE多型を考慮して,血圧および血中脂質濃度と,認知機能低下の関係について,茨城県利根町在住の地域老齢者を対象とした3年間の前向き縦断調査に基づいて検討した.
【方法】茨城県利根町在住の地域老齢者に研究への参加を呼びかけ,2002 年から2005 年に及ぶ3年間の経時的な検討に参加した65 歳以上の高齢者684 人を対象とした.各被験者において,認知機能,血圧および血漿中high-densitylipoprotein(HDL), low-density lipoprotein(LDL),triglyceride(TG),total cholestero(l TC)およびapolipoprotein E(apoE)の濃度を測定した.APOE 遺伝子多型についても検討を行い,被験者をAPOE4 の有無によってE4(+)とE4(−)の2 群に分類し,血漿中の脂質濃度および血圧と認知機能との関係を,それぞれの群内で検討した.
【倫理的配慮】調査にあたって,被験者に対して,研究内容に関する十分な説明をおこなったうえで,文書による同意を得た.
【結果】2002 年と2005 年のいずれでも,E4(+)とE4(−)両群で,血漿中apoE 濃度と認知機能の間に有意な正相関を認めた.またE4(−)群においてのみ,血漿中HDL 濃度と認知機能の間に有意な正相関を認めた.LDL,TG,TC 濃度と認知機能の間に関連を認めなかった.
血圧に関してみると,縦断的な解析において,E4(+)群の高血圧の被験者のみに限って,3 年の間に有意な認知機能の低下を認めた.
【考察】血漿中apoE とHDL がAPOE 多型の影響下で,高齢者の認知機能保護に寄与することを2 回の調査から見出した.また,APOE4 を有する高齢者においてのみ,高血圧が,3 年間という短期間での認知機能悪化をもたらすことを見出した.以前から高齢者の認知機能にAPOE 遺伝子多型が影響することが知られていたが,本調査において血中脂質と血圧がその影響に関与することが明らかになった.高齢者の認知機能改善を図る上では,1)apoE とHDL の代謝の相互関係とその認知機能の保護作用,2)高血圧とAPOE4 の相乗的な認知機能悪化作用,の理解が重要になると思われた.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-9
簡易認知機能評価におけるレビー小体型認知症の特徴;アルツハイマー型認知症との比較を通して
磯谷一枝,古田光,扇澤史子,今村陽子,磯野沙月,大浪里枝(地方独立行政法人東京都健康長寿 医療センター精神科),井藤佳恵,岡村毅(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム),細田益宏(東京都立多摩総合医療センター),菊地幸子,田中修, 中島さやか(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター精神科),粟田主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム)
【目的】レビー小体型認知症(以下DLB)は,老年期の変性性認知症においてアルツハイマー型認知症(以下AD)に次いで頻度が高く,両者の鑑別が困難な場合も多い.そこで本検査では,診察場面で多用され比較的簡易に施行できる改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R),Mini-Mental State Examination(以下MMSE),ClockDrawing Test(以下CDT)を用いAD と比較しDLB の特徴について検討することを目的とした.
【方法】2010 年1 月〜2011 年12 月に当院入院中及び外来通院中のDLB とAD の患者のうち,神経心理検査を受検し,HDS-R,MMSE,CDTの全ての検査が実施可能であった91 名(DLB:男性6 名,女性16 名,平均年齢77.4±7.3 歳,AD:男性19 名,女性50 名,平均年齢78.5±6.5歳)を対象とし,これらの検査についてDLB とAD の比較を行った.
【倫理的配慮】個人が特定されないように解析では匿名化し倫理的配慮を行った.
【結果】性別(χ(2 1)=.0001,n.s)と年齢(t=−.609,n.s)は,DLB とAD の間で有意な差は見られなかった.HDS-R 及びMMSE の合計得点はt 検定,各下位項目とCDT 得点についてMann-Whitney のU 検定を用い差を検討した結果,HDS-R 合計得点(DLB vs AD=17.0±6.6 vs18.1±6.3,t=.710,n.s)とMMSE 合計得点(DLB vs AD=18.0±5.9 vs 19.5±5.4,t=1.121,n.s)では有意な差は見られなかったが,HDS-Rの「逆唱」(u=420.00,p=.001)と「野菜名想起」(u=538.50,p=.033),MMSE の「場所の見当識」(u=545.50,p=.043)と「三段命令」(u=559.00,p=.042),「模写」(u=533.50,p=.007),さらにCDT 得点(u=553.50,p=.049)において,DLB がAD より有意に低かった.また,MMSEの「3 単語遅延再生」(u=563.00,p=.041)ではDLB がAD より有意に高かった.
【考察】DLB とAD との間で,HDS-R とMMSEの合計得点は同等であったが,これらの平均点からは両群とも初期から中期のレベルと思われた.また,下位項目及びCDT の検討においては,DLBではAD よりも,MMSE の「模写」やCDT 得点が低かったこと,HDS-R の「逆唱」や「野菜名想起」,及びMMSE の「三段命令」が低かったことは,各々DLB の特徴である視空間構成障害と,注意障害及び遂行機能障害を反映しているものと考えられる.MMSE の「場所の見当識」もDLB はAD より低かったが,場所の見当識は視空間処理能力を要するものと考えられ,視空間能力の障害が顕著とされるDLB で低下しやすいことが推察される.さらに,DLB ではAD よりもMMSE の「3 単語遅延再生」が高く,記憶障害を主症状するAD と比して記憶障害が比較的軽度であるという特徴がうかがわれた.
以上,これらの特徴は,比較的簡易にできる認知機能検査において,初期から中期のDLB とADの鑑別に有用な指標となるため,HDS-R やMMSE の合計得点だけでなく,下位項目の検討やCDT を用いた構成機能評価も重要と思われる.両者とも初期から中期のレベルと思われる.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-10
ALDH 遺伝子とアルツハイマー病発症,症状進行の関連
小松美和,柴田展人,Bolati Kuerban,Katrin Tomson,大沼徹,馬場元,新井平伊(順天堂大学医学部精神医学教室)
【目的】これまでに孤発性アルツハイマー病(AD)の遺伝学的危険因子として広く認知されているのはApolipoprotein E4(Apo E4)のみであり,他の遺伝学的危険因子については未だ同定されていない.
2000 年Mitochondrial aldehyde dehydrogenase2(ALDH2)遺伝子変異が高齢日本人発症AD の危険因子であると報告された.ALDH2 はacetaldehyde を代謝する作用を有し,ALDH2遺伝子変異によるALDH2 欠損はethanol 感受性に関与している.
また,アルコール依存症はdopamine 系と強く関連しており,特に報酬系に働くdopamine D2receptor(DRD2)やDRD4,あるいはdopamineβ hydroxylase(DBH)の変化が指摘されている.
ALDH などアルコール関連因子のAD への関与は肯定・否定結果ともにあり,まだ解明されていない.また中枢神経系におけるALDH などのアルコール代謝関連酵素蛋白の機能の解明も不十分である.
我々はAD 発症への関与が疑われるALDH および他のアルコール代謝関連酵素の遺伝子のSNP 研究から本邦孤発性AD 発症のメカニズムを検討する.さらにアルコール依存症からDRD2やDRD4,DBH といったdopamine 系との関連を複合的に解析する.
【方法】対象は順天堂大学医学部附属順天堂医院もしくは順天堂越谷病院に通院もしくは入院中で,NINCDS-ADRDA 診断基準に基づき,AD と診断された患者様と年齢をマッチングさせた健常者である.総数は孤発性AD 300 例,健常者200例を目標とする.本研究の重要性および必要性を文書および口頭にて十分説明し,書面にて同意が得られた対象者からgDNA の抽出を行う.
既報のALDH 遺伝子多型をスクリーニングするために,TaqMan probe 法を行う.
さらに順天堂医院メンタルクリニック通院中の50 才以下発症の若年性AD 症例100 例を集積する予定である.その若年性AD 患者群の遺伝子全エクソンを含む領域においてダイレクトシークエンス法により新規遺伝子多型の検索を行う.
dopamine receptor(DRD2,DRD4)とdopamineβ hydroxylase(DBH)のpromotor についても同様に検討する.
【倫理的配慮】本研究は,各調査施設と順天堂大学医学部倫理委員会で審査を受け,承認を得たうえで実施する.
【結果】【考察】当日供覧する予定である.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-B-11
初老期・老年期うつ病患者において血清中のBDNF とコリンエステラーゼは正相関する
玉置寿男(山梨大学医学部精神科),田中宏一(花園病院精神科),布村明彦,小林慶太,安田あやの, 大槻正孝,山口雅靖,藤井友和,北原裕一,安田和幸(山梨大学医学部精神科),小林薫(市立甲 府病院緩和ケア内科),松下裕,石黒浩毅,本橋伸高(山梨大学医学部精神科)
【目的】近年,血清中の脳由来神経栄養因子(BDNF)がうつ病のステートマーカーであることがメタ解析研究によって示唆されている.うつ病と認知症との間には臨床的ならびに疫学的に密接な関連があるが,BDNF は両病態に関連する重要な分子である可能性がある.われわれは,うつ病患者において認知症リスクを予測するバイオマーカーを探索することを目的に,初老期・老年期うつ病における認知機能,脳画像,および血中指標の統合的研究を進めている.本研究はその一部として,血清BDNF とその他の血中指標との相関について検討したので報告する.
【方法】対象は,山梨大学医学部附属病院精神科に入院した患者のうち,入院時に50 歳以上で,DSM- -TR によって大うつ病性障害と診断された12 例,および双極 型障害で最も新しいエピソードがうつ病あるいは双極 型障害でうつ病性と診断された5 例,計17 例である.うつ病相期ならびに寛解期(Hamilton’s Rating Scale forDepression≦7 点)に早朝空腹時採血によって得られた静脈血を用いた.BDNF はELIZA kit(R&D systems)を用いて測定し,他の血中指標との関連性を統計学的に検討した.
【倫理的配慮】山梨大学医学部倫理委員会の承認を得た.また,すべての対象者に目的と方法を説明し,文書で同意を得た.
【結果】血清BDNF は,うつ病相期10.8〜29.8ng/mL,寛解期9.4〜32.0ng/mL であり,寛解前後で血清BDNF の有意な変化は認められなかった(p=0.32,両側t 検定).また,血清BDNF とGeriatric Depression Scale との間に有意な相関は認められなかった.他方,血清BDNF と各種血中指標との間の相関について,うつ病相期,寛解期,および寛解前後の変化量のそれぞれに対して直線回帰分析を行ったところ,血清BDNF とコリンエステラーゼ(ChE)との間に有意な正相関が認められた(うつ病相期p<0.03,寛解期p<0.001,および寛解前後の変化量p<0.02).ChE の他に,総蛋白(TP,p<0.02)とアルブミン(Alb,p<0.04)で寛解前後の変化量に関して,ヘモグロビン(Hb)でうつ病相期(p<0.04)と寛解期(p<0.03)に,血清BDNF との間に正相関が認められた.
【考察】今回の検討から,初老期・老年期うつ病の寛解前後を通して,血清BDNF とChE との間に強い相関が認められた.ChE より弱い相関は,血清BDNF とTP,Alb,Hb との間にも認められた.Kaburagi ら(2011)は,ChE がTP,Alb,Hb とともに栄養状態の指標として,老年期うつ病の抑うつ尺度と関連することを報告している.したがって,血清BDNF はうつ病に関連する栄養障害と並行して推移する可能性がある.他方,神経系の実験研究では,BDNF によるChE の発現調節や,コリン系神経伝達によるBDNF の発現調節が報告されている.末梢血中のBDNF とChE の間に神経系で示唆されているような直接的な関連性があるのかどうかは今後の検討を要する.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
6月21日(木) 14:00〜15:00 ポスター会場第2・3展示場
検査(3)(画像)
座長:内海久美子(砂川市立病院精神神経科)
P-C-1
脳形態と拡散テンソル画像によるアルツハイマー病の精神症状出現予測の検討
仲秋秀太郎(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学,慶應義塾大学医学部精神神経 科学教室),佐藤順子(八事病院,聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部言語聴覚学科),鳥井勝義,阪野公一,根木惇(名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学),宮裕昭(市立福知山市民病院精神神経科),成本迅(京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態 学),山中克夫(筑波大学人間総合科学研究科障害科学専攻),辰巳寛(愛知学院大学心身科学部),宮田淳(京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座),川口毅恒(名古屋市立大学放射線科),三 村將(慶應義塾大学医学部精神神経科学教室)
【目的】患者および介護者に強いストレスを与えるアルツハイマー病における妄想,興奮や易刺激性などの精神症状への脆弱性と関連した発現機序は,いまだ不明である.そこで,これらの精神症状が併発していない軽度アルツハイマー病患者を2.5 年間追跡調査し,ベースライン時点で撮影した頭部MRI 画像の脳形態画像と拡散テンソル画像の情報を複合的に検討し,精神症状が出現した患者としなかった患者との差異を検討する.
【方法】名古屋市立大学こころの医療センター外来を2010 年4 月から2011 年12 月までに受診したアルツハイマー病患者でNINCDS-ADRDAの診断基準をみたし,以下の適格基準をみたした患者を対象とした.1.患者の精神神経症状を評価するNeuropsychiatry Inventory(NPI)にて,妄想,興奮や易刺激性などの精神症状が併発していていない2.過去にこのような精神症状の既往歴がない3.患者のMini-Mental StateExamination(MMSE)は10 点以上4.抗精神病薬が投与されていないなどである.臨床症状の評価はNPI を施行し,1.5 テスラのPhilips 社のMRI を用いて,全脳をカバーする3 次元収集T1強調画像,T2 強調画像,拡散テンソル画像の撮影を行う.ベースラインの時点から半年ごとに,NPI を測定する.なお,NPI の妄想,興奮のいずれかの項目が4 点以上になった時点を,精神症状の出現と判断する.画像解析には形態画像はVoxel-Based Morphometry(VBM)を用い,拡散テンソル画像によりFractional Anisotropy(FA)などの拡散指標の異常の有無をFSL およびDr. View のソフトウェアで解析する.
【倫理的配慮】この研究は,名古屋市立大学医学部倫理委員会において承認を得て,以下の方法で目的と方法を説明したうえで同意を得ている.1)患者の同意能力があると判断される場合は,患者本人と代諾者(配偶者,子供など)の双方の同意説明文書による同意を得た.2)患者の同意能力がないと判断された場合は,代諾者のみの同意説明文書による同意を得た.
【結果】縦断的な経過で妄想や興奮の出現したアルツハイマー病患者10 名と妄想や興奮が出現しなかったアルツハイマー病患者22 名はベースラインでの頭部MRI でのVBM による解析では,精神症状の出現したアルツハイマー病患者では,出現しなかった患者に比較して,前頭葉眼窩部と内側面,島などの灰白質体積が有意に減少していた.FSL およびDr. View による解析では,精神症状の出現したアルツハイマー病患者では,出現しなかった患者に比較して,拡散テンソル画像の脳梁膝部や帯状束のFA 値も有意に低下していた.
【考察】前頭葉の前頭葉眼窩部と内側面,島などの灰白質体積異常および脳梁膝部や帯状束などのFA 値の低下は,アルツハイマー病の精神症状出現の脆弱性と関連している.これらの部位の灰白質および白質繊維の微細な構造異常を認める患者は,外界の情報の認識機能が低下し,情報の誤認がおきやすいと推測される.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-C-2
認知症スクリーニング検査とMRI 画像所見が乖離している群の検討
大平聖子(医療法人社団芳英会宮の陣病院,久留米大学高次脳疾患研究所),森田喜一郎,藤木僚(久留米大学高次脳疾患研究所,久留米大学医学部神経精神医学講座),山本篤(久留米大学高次脳疾患研究所),小路純央(久留米大学高次脳疾患研究所,久留米大学医学部神経精神医学講座),児玉 英嗣(医療法人社団芳英会宮の陣病院)
【目的】近年,アルツハイマー型認知症(以下AD)をはじめとする認知症への社会認識の高まりや画像診断の進歩とともに認知症患者は急増している.認知症は,スクリーニング検査として,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R),やMini Mental State Examination(以下,MMSE)等の神経心理学的検査,失行・失認等の神経学的検査,海馬領域を含めたMRI(Voxel-basedSpecific Regional analysis system forAlzheimer’s Disease : VSRAD を含む)等の画像検査を行い,それらの結果から総合的に診断するのが一般的である.我々は,平成15 年から,久留米大学病院内科総合外来に「もの忘れ外来」を新設し,上述のような方法で診察を行っている.今回,スクリーニング検査結果とMRI 所見が乖離した群を含め,認知症の早期発見について述べる.
【方法】HDS-R やMMSE では,健常範囲(両検査ともに25 点以上)であるが,MRI 画像検査では,顕著な関心領域(嗅内皮質等)の萎縮が存在する群がある.もの忘れ外来・もの忘れ検診において,スクリーニング検査とMRI(VSRAD)を施行した1228 名を対象として,このような乖離を示した群を検討した.
【倫理的配慮】総ての被験者には,当研究を書面にて説明し同意を得たのち施行した.尚,当研究は,久留米大学倫理委員会の承認を得て行っている.
【結果】スクリーニング検査とMRI(VSRAD)施行者1228 名において28 名(2.3%)がVSRADのZ スコアが4.0 以上であった.Z スコアが3.0以上(関心領域内の萎縮が強い)になると,54名(4.4%)が乖離した群と考えられた.さらに,乖離した群を認知症と判断した場合,乖離した群は認知症全体の8.6% を占めた.乖離群のHDSRは26.8±1.5,MMSE は27.3±1.7 であった.平均年齢は73.3±9.0 であり,女性31 名,男性23 名であった.VSRAD のZ スコアは4.03±1.0であった.この群は,年齢には関係なく50 歳代から80 歳代にまで広くみられた.加療中の疾患を検討すると「無し」が24 名(46.2%)で,高血圧が14 名(27.3%),脳梗塞等5 名(9.6%),精神疾患6 名(11.5%)であった.この群は,日常生活にはほとんど支障がなかった.
【考察】現時点では,外来受診者に占める割合は4% 程と少ないものの,HDS-R,MMSE 等のスクリーニング検査のみでは判別困難な「認知症であるかもしれない群」の存在は注目すべきである.高学歴や社会的地位が高く,一見,認知機能が保たれている人であっても,少しでも仕事上のミスや浪費等の問題行動がある人には,ぜひ一度,画像検査を薦め,可能ならVSRAD 解析も行い,早急な対応が必要と考える.我々は,この乖離した群はおそらく将来AD となると考えており,注意深いフォローが必要である.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-C-3
もの忘れ検診における単一課題の多チャンネルNIRS を用いた老年期の認知機能の特徴
山本篤(久留米大学高次脳疾患研究所),森田喜一郎,小路純央(久留米大学高次脳疾患研究所, 久留米大学医学部神経精神医学講座),石井洋平(久留米大学医学部神経精神医学講座),中島洋子(久留米大学高次脳疾患研究所,久留米大学医学部看護学科),内村直尚(久留米大学医学部神経精神医 学講座)
【目的】我々は,年に6 回,久留米大学のある筑後地区において,もの忘れ検診を行ってきた.検診内容は,日常の生活状況の問診,認知症簡易検査である改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R),Mini Mental State Examination(以下,MMSE)に加え,探索眼球運動,近赤外線トポグラフィ(以下,多チャンネルNIRS)およびバウムテストを施行している.多チャンネルNIRS は,近赤外線の散乱光を用いて脳表面の血管のヘモグロビン濃度を非侵襲的に測定する装置である.比較的小型な装置で可搬性に優れており,簡便に計測することができる.さらに,データを二次元画像化することによって脳機能の変化を即時に被験者も視覚的に知ることができる.今回,平成23 年の物忘れ検診に参加した100 名において多チャンネルNIRS を用い,認知機能を反映する日本独特の「しりとり」課題中の脳血流変動を精神生理学的指標にして,老年健常群,中間群と認知症患者群を比較検討した.
【方法】総被験者を,HDS-R,MMSE から認知症群(HDS-R が20 点以下かつMMSE が23 点以下:19 名),健常群(HDS-R,MMSE がいずれも28 点以上:28 名)それ以外を中間群(53 名)とした.さらに,中間群をHDS-R を用いて低値中間群(HDS-R が21 から24 点:19 名)と高値中間群(HDS-R が25 から27 点:34 名)とに分けた.総ての被験者は右利きで,脳梗塞,脳出血等の既往が無く,言語機能や聴覚機能にも障害はなかった.NIRS 検査は,視覚誘発の単一言語課題を用いて,しりとりを行った.総ての被験者には,「まえに見えた,言葉に続けて素早くしりとりを言ってください」と指示し,表示する言葉を変え20 回行った.レスト状態として,「あいうえお」と繰り返した.測定時間は約4 分間である.以上から,20 回の総加算平均波形を作成し,ヘモグロビン変動を面積化し指標とした.
【倫理的配慮】総ての被験者には,当研究を書面にて説明し同意を得たのち施行した.尚,当研究は,久留米大学倫理委員会の承認を得て行っている.
【結果】しりとり数は,認知症群が,他の3 群より有意に少なかった.Brodmann の脳地図で46野あたりと考えられる多チャンネルNIRS の左11 チャンネル,および前頭極と考えられる左チャネル19 の酸素化ヘモグロビン変動は,認知症群および低値中間群が高値中間群および健常群より有意に小さい値であった.左19 チャネルの酸素化ヘモグロビン変動とHDS-R およびMMSEに有意な正の相関が観察された.
【考察】以上から,しりとり課題を用いた単一言語誘発NIRS 検査は,認知症の診断および早期発見に有用と考えられた.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-C-4
近赤外分光法(NIRS)を用いた認知症患者における言語流暢課題中の前頭部血流変化
荒木智子,和氣玲,宮岡剛,古屋智英,長濱道治,河上一公,堀口淳(島根大学医学部精神医学講座)
【目的】近年の少子高齢化に伴い認知症患者数も増加し,少ない家族で介護せざるを得ない状況が予測されることから,認知症の早期発見・早期治療が重要と考えられる.今回,当院外来においてアルツハイマー病(AD),軽度認知障害(MCI)と診断された対象者にNIRS 測定を行い,健常対照群の測定結果と比較検討したのでここに報告する.
【対象と方法】対象は島根大学医学部付属病院に通院中のAD 患者22 名(77.7±6.7 歳)とMCI患者17 名(78.1±4.2 歳)とした.また,健常対照群(HC)は研究参加の同意を得た20 名(74.2±4.3 歳)である.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の平均点はAD 群15.4±4.8 点,MCI 群25.8±3.0 点,健常対照群28.5±1.4 点であった.また,対象は全て右利きであった.
測定機器は日立メディコ社製光トポグラフィ装置ETG-4000 を用い,前頭部を22ch に分けて測定した.ベースラインとして「あいうえお」を繰り返し発声し,ターゲット課題においては60 秒間「あ」「き」「は」の文字で始まる単語をできるだけたくさん想起する「言語流暢課題」を行った.ターゲット課題の60 秒間を20 秒毎に分割し,課題初期・中期・後期における酸化ヘモグロビン濃度変化(Oxy-Hb)を記録した.
【倫理的配慮】被験者及び代諾者に対して参加の同意を本人と代諾者から文書で得た.なお,本研究は島根大学医学部倫理委員会の審査を受け,承認が得られている.
【結果】AD 群−HC 群間およびMCI 群−HC 群間では左右前頭部においてOxy-Hb の統計学的に有意な低下が認められ,特に課題中期で最も顕著であった.AD 群−MCI 群間ではいずれの区間でもOxy-Hb の有意な差は認められなかった.また,右前頭部(ch10,14,19,20)では課題中期のOxy-Hb とHDS-R スコアとの間に有意な正の相関(ch19 ではr=0.461,p<0.009)を認めた.
【考察】今回の結果は,NIRS を用いた検討方法で,右前頭部の測定結果が認知機能障害の重症度と関連することを示唆している.このことは言語流暢課題を用いたNIRS 測定が,認知症の早期発見およびその鑑別に有用であるという可能性がある.今後はさらに症例数を増やし,さらなる検討を行う予定である.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-C-5
高齢者のMCI とうつに対するVSRAD による検討
横田雅実,下田健吾,池森紀夫,木村真人(日本医科大学千葉北総病院メンタルヘルス科)
【目的】当科では軽度認知機能障害(MCI)患者が比較的多く来院している.その中でうつ症状の訴えがある患者も少なくない.それらの患者では,アルツハイマー型認知症の初期症状であるか,うつ病性仮性認知症であるかの鑑別が難しい場合もある.そこで本研究では早期アルツハイマー型認知症診断支援システムであるVSRAD を用いて高齢MCI 患者のうつと認知症の関連性を検討することとした.
【方法】2009 年7 月〜2010 年12 月中に,日本医科大学千葉北総病院メンタルヘルス科外来を受診しMCI と診断された60 才以上の患者66 名(男性29 名,女性37 名平均年令74.2±8.0 才)を対象とし,VSRAD 解析による海馬傍回の萎縮程度を示すZ スコアと改定長谷川式簡易認知症評価スケール(HDS-R)の関連を検討した.また,初診時の問診によりうつ症状を認めた患者20 例とうつ症状を認めなかった46 例について,VSRADとHDS-R の比較検討を行った.
【倫理的配慮】調査協力者のプライバシーの保護のため,データは個人が特定されないよう扱うとともに,データは数値的集計および統計学的検討のみに用いた.
【結果】対象患者全体におけるVSRAD のZ スコアとHDS-R のそれぞれの平均値は1.70±1.00,18.0±5.6 であった.両者と年齢との間に相関関係は認められなかったが,VSRAD とHDS-R 間は−0.325 と弱い負の相関がみられた.うつ群と非うつ群の比較では,HDS-R では両者に差異は見られなかったが,VSRAD のZ スコアは,うつ群が有意に低い結果であった.
【考察】本研究の対象であるMCI 患者のうち,約30% にうつ症状を認め,うつ病性仮性認知症の可能性がうかがわれた.うつ症状を認める患者では,うつ症状のない患者と比較して,HDS-Rによる認知機能障害は同程度だが,VSRAD のZスコアの結果からは海馬傍回の萎縮の程度は低いことが示唆された.これらのことから,VSRAD検査が,MCI 患者において,うつ病性仮性認知症とアルツハイマー型認知症の鑑別の一助となることが考えられた.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.
P-C-6
頭部MRI を用いた海馬断面積の比較はAlzheimer 病とうつ病の鑑別に有用か
城甲泰亮(信州大学医学部精神医学講座,医療法人蜻蛉会南信病院),犬塚伸(信州大学医学部精 神医学講座),金子智喜(信州大学医学部画像医学講座),鷲塚伸介,天野直二(信州大学医学部精神医学講座)
【目的】頭部MRI のSTIR 法で撮影された冠状断画像を用い,海馬を前後8 断面に分けて萎縮の特徴を比較してAlzheimer 病(AD),軽度認知障害(MCI),うつ病,正常加齢の鑑別に有用であるか否かを検討する.
【方法】信州大学医学部附属病院精神科を2006年1 月〜2011 年4 月の期間に受診し1.5 T のMRI を使用して頭部MRI を施行された60 歳以上の患者を対象とした.診断はICD-10 に従いAD,MCI,うつ病,正常群を選別した.症例選定条件としてカルテを参照して,精神疾患が重複する症例,画像上血管障害が著しい症例などの症例は除外した.MCI についてはPeterson の診断基準に従った.うつ病はF 32 のみ選択した.AD,MCI,正常群については撮像時にMMSE も同時に施行された症例のみ選別した.海馬断面は,乳頭体を通る面を基準断面として,3 mm前方から3 mmずつ8 断面を選択した.ROI 法を用いて冠状断の両海馬の断面積の和Hn と頭蓋内面積Cn,矢状断の正中線で得られる頭蓋内面積Ccsfを計測した.両海馬の面積を頭蓋内面積で除した値,Hn/Cn とHn/Ccsf を計算した.得られたデータを断面ごとに疾患との相関を調べ統計的処理を行った.
【倫理的配慮】本研究は信州大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した.調査の実施にあたっては個人情報の保護を厳守し,情報の取り扱いには細心の注意を払った.
【結果】138 例中AD 61 例(男性14 例,女性47例,平均年齢77.5±6.7 歳,MMSE 19.7±2.9 点),MCI 34 例(男性15 例,女性19 例,平均年齢76.7±6.4 歳,MMSE 25.4±1.7 点),うつ病21 例(男性5 例,女性16 例,平均年齢74.8±6.8 歳,MMSE 26.8±2.5 点,MMSE なし11 例),正常22 例(男性9 例,女性13 例,平均年齢歳75.6±5.9,MMSE 28.5±1.8 点)であった.Hn/Cnの断面の補正値の比較ではAD では正常群と比較して海馬の全断面で有意に萎縮がみられた.MCIではほぼ全断面で有意差がみられたが,海馬頭での有意差が強くみられた.うつ病では有意差はみられなかった.AD とうつ病,MCI とうつ病を比較した結果,海馬頭で萎縮に有意差がみられた.AD とMCI をMMSE の得点で2 分して比較した結果,どの断面でも有意差が認められなかった.一方,Hn/Ccsf の各断面を同様に比較したところ,AD とMCI では正常群との比較して海馬の全断面で有意に萎縮がみられた.正常群とうつ病では全断面で有意差はみられなかった.
【考察】AD,MCI,うつ病を鑑別するには海馬の断面を前後に分けて比較して海馬頭に注目して萎縮の有無を判断することは有用であると考えられた.
本研究は一般社団法人日本老年精神医学会の利益相反委員会の承認を受けた.