その他の演題 |
座長:一宮 洋介(順天堂大学浦安病院) |
当院痴呆疾患治療病棟入院患者の在院日数決定要因 |
小林裕人,大浜幹生,青木啓光,蟻塚亮二,田崎琢二 |
PB-09 |
【目的】当院痴呆疾患治療病棟(以下治療棟という)入院患者の在院日数を決定する要因を検討する. 【方法】平成15年4月から平成16年3月までの1年間に当院治療棟に入院した患者について,平成16年11月末まで追跡調査を行った.在院日数と退院時の行き先について,患者の年令,性,痴呆疾患分類,入院時身体合併症の有無により違いがあるのかを検討した.痴呆疾患分類は,診療録の情報に基づきICD-10分類に従って行った.身体合併症の有無については,診療録の記載に基づいて,治療棟入院時に,定期的に通院治療を行っている身体疾患がある場合,身体合併症ありとした.調査対象79名の在院日数は,ほぼ対数正規分布に従って分布していた.ただし,この分布に対して外れ値とみなされる,在院日数1年以上の一群が存在したため,これらの患者は今回の解析対象から除外した. 【倫理的配慮】診療録による調査および追跡調査にあたっては,個人情報の取扱いについて守秘義務,プライバシーに配慮して実施した. 【結果】除外後の対象患者は65名で,男34名(52%),女31名(48%),平均年齢80±8.4歳(平均±標準偏差).痴呆疾患分類は,アルツハイマー病の痴呆13名(20%),血管性痴呆25名(39%),ピック病8名(12%),その他19名(29%)であった.平均在院日数は在院日数と年令には有意な相関を認め,年令が高くなるほど在院日数は短くなっていた(相関係数:−0.29,p=0.019).退院時の行き先と,性,年齢,痴呆疾患の分類,入院時身体合併症には有意な関係は認められなかったものの,年齢が高くなるほど医療機関への転院が増える傾向があった(ロジステティック回帰分析:有意水準0.13). 【考察】今回の結果から,後期高齢者では治療棟に入院した場合でも短期間のうちに身体合併症を生じる等して転院する場合が少なくないと考える.このことは,治療棟での内科診療の重要性を示している.今後も調査を継続し,今回は解析の対象から除外した超長期入院群と,今回の解析対照群との違いなど,検討を重ねていきたい. |
MCIから痴呆への予防 |
杉村美佳,中野正剛,山田達夫 |
PB-10 |
【目的】安心院町におけるMCIの頻度を調査し,MCIと判定された地域住民を対象に痴呆進行予防活動を実施しその効果をみる. 【方法】2003年6月より,毎週金曜日に大分県安心院町に在住の65歳以上高齢者に対して調査を行った.一次調査で家族構成や教育歴などの問診,日常生活動作,GDS(うつの評価)を行い,認知機能の評価には集団スクリーニング検査であるファイブ・コグを施行した.MCIと判定された住民には二次調査として問診と診察,血液検査,頭部CT,SPECTおよび詳細な心理検査を行った.その結果,記憶のみが障害されているsingle domain MCI(+amnesia)と判定された12名を対象に痴呆への進行予防介入を実施した.介入内容は,話し合いにより,参加者自らが企画,遂行していく作業活動と運動療法であった.この活動は毎週金曜日に行われ,予防介入の前および6ヶ月後にファイブ・コグを行い,認知機能の変化を検討した. 【倫理的配慮】本研究は福岡大学倫理委員会にて承認を受けた.対象へは文章による説明を行い,書面にて同意を得た. 【結果】2004年末までに1582名への一次調査が完了した.対象者のうち,1996年のPetersenの定義に基づくMCIは,4.0%であった.さらにLevyらによるAACDの定義に合致する住民は18.5%であった.痴呆への進行予防介入に参加した対象者のファイブ・コグは,5つの認知機能すべてで介入前後に有意差はなかったが,記憶の項目のみ改善する傾向が認められた. 【考察】(1) 今回の安心院町での調査では,国内外の調査結果と同率でMCIやAACDが検出された.(2) 痴呆への進行予防介入が痴呆の前段階とされるMCIに対する一時的な痴呆発症の予防の可能性を有していると考えられ,今後さらにこの介入方法について参加者数を増やし,検討を重ねてゆく予定である. |