MIBG心筋シンチで高度の集積低下を認めた |
清水光太郎1),大川慎吾1),小田陽彦1),小林 実1),嶋田兼一1) |
UB2-16 |
【はじめに】123I-MIBG心筋シンチグラフィー(MIBG心筋シンチ)は心疾患の心臓交感神経障害を評価する検査として広く普及し,特発性パーキンソン病では高率に心臓への集積低下を認め,他のパーキンソニズムとの鑑別に用いられる.レビー小体型痴呆(DLB)は変動する認知機能,幻視,パーキンソニズムの中核症状に加えて,起立性低血圧や失神などの自律神経症状を伴うことが多い疾患である.今回我々はパーキンソニズムを伴わないDLB症例に対してMIBG心筋シンチを行ったので報告する. 【症例提示】 症例1:73歳,男性,右利き.X年3月頃より軽度の物忘れが認められ,さらに幻視が出現したため,同年7月に当科を受診した.MMSE 19点,ADAS 20点と軽度認知機能低下があった.神経学的にはパーキンソニズムがなかったが,変動する認知機能と幻視を認めたためprobable DLBと診断した.神経画像検査はDLBを示す所見だった.症例2:80歳,女性,右利き.Y年1月頃より物の置き忘れが現れ,さらに幻視の訴えが目立つようになり,同年10月に当科を受診した.MMSE 20点,ADAS 15点であった.神経学的にはパーキンソニズムがなかったが,変動する認知機能と幻視を認めたためprobable DLBと診断した.神経画像検査はDLBを示す所見であった.両症例とも心疾患の既往はなく,心電図検査,胸部レントゲン検査では特に異常がなかった.MIBG心筋シンチでは,MIBGを安静時に静注し,15分後に早期像を,2時間後に後期像を撮像した.評価方法は,心臓(H)と上縦隔(M)に関心領域を設定し,H/M比(過去の報告によると平均値は早期像では2.26,後期像では2.30)を求めた.症例1では,H/M比早期像で1.66,後期像で1.52,症例2では早期像1.49,後期像1.28であった. 【倫理的配慮】MIBG心筋シンチ施行時には,検査の意義を患者本人および家族に対して説明し同意を得た.また,発表では匿名性を考慮した. 【考察】MIBGの心筋集積低下は心臓交感神経の脱神経が原因と考えられ,特発性パーキンソン病では病初期には集積低下が軽度であり,進行に伴いそれが高度になるとの報告もある.今回の2症例は軽症のDLB患者で,臨床的にパーキンソニズムや自律神経症状は認めなかったが,MIBGの高度集積低下を示した.パーキンソニズムを伴わない病初期のDLBでもMIBG心筋シンチで高度な集積低下を示し,DLBの早期診断にMIBG心筋シンチが有用な可能性もあり,今後更なる検討が必要である. |
レビー小体型痴呆における臨床症状と画像所見の相関についての検討 |
山本涼子1),井関栄三1),村山憲男1),木村通宏1),江渡 江1), |
UB2-17 |
【目的】レビー小体型痴呆(DLB)の臨床診断基準では,必須症状として進行性の認知機能障害,中核症状として幻視,認知機能の動揺,パーキンソニズム,その他の支持症状,が挙げられている.DLBの形態画像に特徴的な所見はみられず,機能画像では後頭葉の機能低下が特徴的とされるが,臨床症状と画像所見との相関に関しての検討は不十分である.今回,DLB患者における個々の臨床症状と頭部MRI,脳SPECTとくにeZIS所見との相関の有無について検討した. 【方法】DLB患者10例(平均年齢79.6歳)は,いずれも臨床診断基準のprobable DLBを満たしていた.臨床症状のうち,認知機能障害の評価として,HDS-R・MMSEのスコアを20≦stageT,15≦stageU≦19,10≦stageV≦14,5≦stage W≦9,0≦stageX≦4に分類し,さらに下位項目の見当識,記憶,注意,図形のスコアを抽出した.また日によっての認知障害の動揺性,REM睡眠行動異常の有無,パーキンニズムの内容とYahr度,視覚認知障害と妄想の種類,抑うつの有無を検討した.また頭部MRIにおけて萎縮の部位と程度,血管性病変の有無を検討し,脳SPECTにおける血流低下の部位と程度をeZISにより解析した. 【倫理的配慮】研究にあたり,診察,家族からの情報と,カルテを参照し,本人ないしは家族からinformed consentを得た. 【結果】初発症状は,健忘6例,幻視2例,パーキンソニズム1例,抑うつ1例であった.認知機能障害は,8例がstageT〜Vで,2例では動揺が目立った.下位項目では半数例が図形描写で失点していた.REM睡眠行動異常は2例に認められた.パーキンソニズムは,寡動・歩行障害・筋固縮・構音障害・流涎を認め,振戦は目立たず動作時振戦であった.Yahr度は2〜4であった.視覚認知障害は,人物幻視・人物誤認が多く,他に小動物幻視・錯視・場所誤認・実態的意識性もみられた.その他,被害妄想,抑うつ,易刺激性が認められた.頭部MRIでは,びまん性大脳萎縮はごく軽度で,海馬領域に軽度〜中等度の萎縮,前頭葉に軽度の萎縮がみられた.血管性病変は一部の例でPVH,ラクナを認めた.脳SPECT(eZIS)では,帯状回(10例),後部側頭・頭頂葉(10例),後頭葉(10例),海馬領域(4例),前頭葉(9例)で脳血流低下がみられ,後頭葉の血流低下は10例中8例で視覚連合野に限定されていた. 【考察】頭部MRIでは,海馬領域に萎縮がみられたが,認知機能障害と萎縮の程度は必ずしも相関しなかった.脳SPECT(eZIS)では,後頭葉の血流低下は幻視などの視覚認知障害と関連し,一次視覚野より視覚連合野の血流低下が先行すると考えられた.後部側頭・頭頂葉と前頭葉の血流低下がみられたが,海馬領域の血流低下は殆どみられなかった.これは,失行・失認などの頭頂葉症状はないが,構成不良を含めた広義の認知機能障害を認めることを反映していると考えられた. |
マルチショット拡散強調画像によるレビー小体型痴呆の |
川勝 忍,林 博史,小林良太,深沢 隆,鈴木春芳,大谷浩一 |
UB2-18 |
【目的】われわれは,昨年の本学会で,マルチショット拡散強調画像により海馬CA1や海馬支脚などの海馬内部構造をMRIで画像化し,軽症アルツハイマー型痴呆(AD)だけでなく軽度認知機能障害(MCI)において,すでにこれらの部位において萎縮がみられることを報告した.今回,レビー小体型痴呆(DLB)の軽症例について,比較検討したので報告する. 【方法】対象はDLB 14例(平均年齢75歳,MMS平均22.7点),軽症AD(CDR 1)19例(同71歳,20.1点),MCI(CDR 0.5)14例(同70歳,25点),正常対照15例(同64歳)の4群.DLBの診断は,McKeithらの診断基準で,possible DLB以上を満たし,かつ脳血流SPECTで後頭葉での血流低下を認めた症例とした.MRIはGE社Signa1.5Tで,spin-echo echo-planar法で,傾斜磁場を前後方向に印加して,第4脳室底に平行な冠状断5 mmスライスを撮影した.同方向の神経線維は低信号に,左右や上下方向に走る神経線維は高信号となり,海馬の内部構造が明瞭に描出される(詳細はAJNR2003).海馬CA1,海馬支脚などの厚さを計測した. 【倫理的配慮】本研究の目的,方法などについて患者または患者家族に説明し,同意を得た.なお,本研究は山形大学医学部倫理委員会の承認を得ている. 【結果】対照群に比較し,MCIおよび軽症ADでは,海馬CAと海馬支脚が有意に菲薄化していたのに対して,DLBでは,海馬支脚でのみ有意に菲薄化していた.海馬支脚の菲薄化は,両側とも軽症AD>MCI>DLBの順に強く(軽症AD 0.96±0.19 mm,MCI 1.14±0.21 mm,DLB 1.38±0.20 mm,対照 1.68±0.28 mm,以上右側),MCIとDLBの間にも有意差を認めた. 【考察】これまで,DLBにおいてMRIによる海馬全体の容積の検討がいくつかあるが,正常よりは小さいが,ADよりは大きいとされており,病理学的にも海馬が比較的保たれることがDLBの特徴であるとされている.本研究でも同様な結果であるがさらに,1)海馬支脚の萎縮が有意であること,2)MCI(ADの前駆段階)よりもDLBの海馬支脚の萎縮はさらに軽度であることが示された.本方法では,煩雑な容積測定をしなくても,視察的にも容易にADの海馬病変と区別することが可能であった. |