第20回日本老年精神医学会大会プログラム |
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ホールB5(1) | ||
6月17日(金) 13:00〜15:40 |
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13:00〜13:40 |
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教育講演 1 |
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前方型痴呆と後方型痴呆の臨床 |
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田辺 敬貴 (愛媛大学医学部 神経精神医学講座) | ||
前方型痴呆(anterior-type dementia) : 前頭-側頭葉の障害を中心とする広義のPick病に代表される脳の前方症状が前景に立つ痴呆。病因は問わない;Pick病, 脳血管障害, 大脳皮質基底核変性症, 頭部外傷等 後方型痴呆(posterior-type dementia):頭頂-側頭-後頭葉(PTO)の障害を中心とするAlzheimer病に代表される脳の後方症状が前景に立つ痴呆。病因は問わない;Alzheimer病, レヴィー小体病, 脳血管性障害等 広義のPick病に含まれる前頭側頭葉変性症(Fronto-Temporal Lobar Degeneration : FTLD)は神経行動学的に、前頭側頭型痴呆(Fronto-Temporal Dementia:FTD)、意味性痴呆(Semantic Dementia:SD)、 進行性非流暢性失語(Progressive non-fluent Aphasia:PA)に分けられるとされる。早期からみられる中核症状はそれぞれ、脱抑制、意味記憶障害、非流暢性失語である。萎縮中心は、それぞれ前頭葉、側頭葉、左中心回ないしシルヴィウス裂後枝周囲領域にある。 上記3病態は、しばしば他の病態と混同されている。とりわけ多いのは、前頭側頭型痴呆は精神疾患、意味性痴呆はアルツハイマー病、進行性非流暢性失語は脳血管障害、である。 前頭側頭型痴呆は従来の前頭葉優位型ピック病に、一方意味性痴呆と呼ばれる臨床概念はほぼ側頭葉優位型ピック病に相当する。ここではアルツハイマー病と比べても決して稀ではない前頭側頭型痴呆と意味性痴呆の2病態に的を絞り、生の臨床像をビデオで呈示し、前方型痴呆の診方のコツを、後方型痴呆の特徴と対比しつつ概説する。 <参照> 田辺敬貴:痴呆の症候学 - ハイブリッドCD-ROM付- . 医学書院, 東京, 2000. 痴呆における問題行動(ビデオ、CD-ROMシリーズ). 日本精神科病院協会, 東京, 2001 相馬芳明, 田辺敬貴:失語の症候学 - ハイブリッドCD-ROM付- . 医学書院, 東京, 2003. |
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13:40〜14:20 |
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教育講演 2 |
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痴呆疾患の脳画像所見 |
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北村 伸 (日本医科大学付属第二病院 内科) | ||
痴呆を生じる疾患は数多くあり、その鑑別診断には画像所見が必要である。CTとMRIが主に脳の形態学的異常を検出するのに対し、SPECTとPETは脳の機能変化を検出することができる。アルツハイマー型痴呆のような神経変性疾患では、CTとMRIの所見は脳萎縮であるが、その背景には脳の機能変化が起きており、SPECTとPETによる脳循環代謝所見からその機能変化を知ることができる。検出される脳循環代謝低下の背景には、動脈の閉塞や狭窄による脳血流の低下、シナプスの機能低下、そしてシナプスや神経細胞の消失がある。 CTとMRIの痴呆疾患の原因鑑別における意義は、脳血管障害、脳腫瘍、硬膜下血腫、水頭症などの検出である。神経変性疾患の所見は脳萎縮であるが、発症早期には加齢による萎縮と鑑別は困難である。アルツハイマー型痴呆では、海馬を含む側頭葉の萎縮が特徴であり、下角の拡大としてとらえられる。最近では、MRI画像を統計学的に解析して内側側頭葉の萎縮をとらえることがアルツハイマー型痴呆の早期診断に役立つことが示されている。前頭側頭型痴呆では顕著な前頭葉と側頭葉の萎縮、進行性核上性麻痺では中脳の萎縮、皮質基底核変性症では萎縮の左右差や限局性の萎縮、ハンチントン病では尾状核の萎縮を示す側脳室前角の拡大、線条体黒質変性症では被殻の異常信号などが診断に役立つ所見として上げられる。 18F-FDG PETによる糖代謝所見と同様の特徴がSPECTによる脳血流画像でも認められる。アルツハイマー型痴呆では、側頭葉、頭頂葉、後部帯状回で血流は低下し、一次運動知覚野、基底核、視床、小脳の血流は保たれている。痴呆の程度が進むと前頭葉の低下が加わってくる。統計学的解析方法により、頭頂葉内側および後部帯状回の低下が早期より認められることが示されている。脳血管性痴呆では、脳血管障害の病巣に応じて様々な脳血流低下パターンをとる。基底核や白質に多発する小梗塞による脳血管性痴呆やビンスワンガー型痴呆では、基底核領域と前頭葉皮質の血流低下が顕著なパターンが特徴である。レビー小体型痴呆では、後頭葉の血流低下が認められる。前頭側頭型痴呆では前頭葉皮質と側頭葉皮質の血流低下、進行性核上性麻痺では橋と前頭葉皮質の血流低下が特徴である。ハンチントン病では尾状核の血流低下、皮質基底核変性症では基底核、前頭葉皮質および頭頂葉皮質の血流低下が認められ、左右差のあることも特徴の1つである。 頭頂葉内側および後部帯状回の血流低下はアルツハイマー型痴呆発症早期より認められる所見とされていることから、軽度認知機能低下例の中からアルツハイマー型痴呆の発症を予測することが脳血流SPECTで可能と考えられている。 |
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14:20〜15:00 |
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教育講演 3 |
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高齢者の高次脳機能障害の評価 |
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加藤 元一郎 (慶應義塾大学医学部 精神神経科学教室) | ||
高次脳機能障害は、「大脳の器質的病因に伴い、失語・失行・失認に代表される比較的局在の明確な大脳の巣症状、注意障害や記憶障害などの欠落症状、判断・遂行・問題解決能力の障害、行動異常などを呈する状態」と言われる。この状態は、臨床的には、脳血管障害、脳炎、そして頭部外傷などの器質性脳損傷の後に認められることが多いが、当然痴呆の初期の痴呆においても存在する。しかし、高齢者や初期の痴呆における、注意障害、記憶障害、判断・問題解決能力(遂行機能)の障害、社会的な行動異常については、学術的な研究が未だ限られているばかりか、その検出法やリハビリテーションについての研究や臨床的な検討は少ない。本席では、高齢者や初期の痴呆における脳高次機能障害の検出方法について紹介したい。すなわち、MMSなどの痴呆スクリーニング法やIQの測定の後に続くdeep testsとしての神経心理学的検査法について述べる。 まず、失語・失行・失認に関しては、ベッドサイドないしは外来で施行できる簡単な検査を施行することが重要である。また臨床的に注意障害が認められた場合には、選択性注意や注意の分配性に関する検査を施行する。注意の持続性も検討することが好ましい。また半側性注意の障害(無視)を見逃さないことも重要である。記憶障害に関しては、記憶のプロセスやシステムごとの検査を施行することが好ましい。記憶はまず短期記憶(short term memory)と長期記憶(long term memory)に分類される。短期記憶は、通常20ー30秒以内の短期間の記憶素材の保持能力とされる。長期記憶は、それ以上の長期間の記憶保持を指し、想起意識を伴うかどうかにより顕在記憶(explicit memory)と潜在記憶(implicit memory)に分けられる。顕在記憶は、過去の出来事の記憶であるエピソード記憶(episodic memory)と、語や物などに関する体系的な知識である意味記憶(semantic memory)とに分類される。エピソード記憶は、時間的空間的に特定できる過去の出来事の記憶、すなわち思い出である。意味記憶は、形、色、用い方などの知識や抽象的な概念やカテゴリーなどを包括する。また潜在記憶には、プライミングや手続き記憶が含められる。遂行機能とは、目的を持った一連の活動を有効に行うのに必要な機能であり、有目的な行為が実際にどのように行われるかで主に評価される。いくつかの評価法を紹介したい。また、近年、日常生活場面での行動障害のレベルをより直接的に評価しようという目的で工夫された遂行昨日検査(BADS)が考案されてきている。 以上のような検査は、次のような病態の鑑別診断の助けとなる。まず、変性痴呆の初期における評価に有用である。アルツハイマー病における病変の分布は瀰漫性で広範ではあるが、特にその初期には特異的な大脳の病変分布が生じる可能性があり、また、その認知障害の経過には様々な多様性が指摘されている。すなわち、記憶障害、視覚認知障害、失語、失行などが他の認知障害に比較して顕著に障害されている、局在性脳萎縮型のアルツハイマー病ないしはアルツハイマー病亜型(variant form of Alzheimer’s disease )とでも言うべきケースが存在し、このタイプでは、機能の選択的な障害を評価することが重要である。また、Pick病を含む前頭側頭型痴呆、意味痴呆、進行性失語、さらに老年期の大うつ病(仮性痴呆)などにおける認知障害を評価するにも、上述した検査が有用である。 |
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15:00〜15:40 |
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教育講演 4 |
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認知症(痴呆)医療と成年後見制度 |
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柴山 漠人 (認知症介護研究・研修大府センター) | ||
はじめに、認知症医療における法律的問題点について述べ、その後に、成年後見制度の概要を説明し、次いで、成年後見制度と医師との関わりに触れ、更に、成年後見制度と介護保険制度との関連に言及し、最後に、成年後見制度の今後の課題について検討したい。 I.認知症医療のおける法律的問題点 1)財産管理・・費用の支払い、収入のチェック、不動産などの管理・処分、税金の申告・納税など 2)身上監護・・本人の心身の状態および生活の状況への配慮であり、必要な医療や福祉サービスが提供されているか、施設入所の場合は、本人に対する処遇をチェック、入所契約の履行の監視、などであるが、未解決の問題は、医療行為への同意である。即ち、後見人にも、家族にも、医療同意の代理権はないのである。 *東京家裁の成年後見関係事件の申立書添付の診断書では、「老年痴呆」と「アルツハイマー型痴呆」で、44%、「脳血管性痴呆」は、30%、「精神疾患(統合失調症、躁うつ病)」 10%、「精神発達遅滞・知的障害」8%、「頭部外傷」2%、「パーキンソン病」2%、などである。 *有効な医療契約を締結するためには、同意能力が必要である。同意能力とは、「医療同意の問題に関係した意思能力」である。意思能力とは、「自分の行為の結果を判断することのできる精神的能力であって、正常な認識力と予期力を含んでいる」である。 *白石によると、医療現場で、治療に関する意思決定が困難になる場合として、(1)本人の希望と医師の勧める医療との不一致、(2)家族の意向と医療機関の治療方針の不一致、(3)本人が選択できず、代理判断する者がいない、(4)本人が選択できず、家族間に意見対立がある、などを指摘している。 II.成年後見制度 成年後見制度とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などの精神上の障害によって意思能力が十分でない人達の人権と権利擁護を目的とした制度であり、平成12年(2000)4月1日に施行された。 この制度では、できるだけ本人の自己決定権を尊重することを主旨とし、任意後見制度と法廷後見制度での補助類型が創設された。(従来の禁治産、準禁治産は、後見類型、保佐類型) また、人権保護の観点から、戸籍への記載はせず、成年後見登記簿に登記されるようになった。 III.成年後見制度と医師との関わり 家裁への申立には、補助類型では、「診断書」、保佐・後見類型では、「鑑定書」が必要である。前者では、かかりつけ医が、後者では、精神科医が引き受けることが多い。 IV.成年後見制度と介護保険 介護保険制度以前は、行政が、主体的に関与した措置制度であったが、新しい介護保険制度では、利用者が、主体となり、サービス業者を選択し、契約を結ぶこととなったが、反面 自ら情報収集し、質を検討し、選択し、契約を締結することが必要である。 IV.成年後見制度の今後の課題 1)医療同意に関する法的整備 2)資力のない人への方策 3)成年後見人等や後見等監督人の人的資源 4)精神鑑定に携わる医師の確保 |
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