マルチスライスCTによるアルツハイマー型痴呆 |
木暮陽介,木村通宏,江渡 江,井関栄三,鈴木 賢 |
UB2-25 |
【目的】CTはMRIやSPECTに比べて,組織コントラストが低く,機能画像が得られない点で劣っており,画像診断のための研究が低迷している.しかし,マルチスライスCTは,従来のCTに比べて,検出器の多列化により同時に多数の薄いスライス厚の撮像が可能となった.本研究では,ヘリカルスキャンから得られる高画質任意断面像による画像所見および画像計測が,スクリーニング検査としてアルツハイマー型痴呆診断に有用であるかを検討した. 【方法】マルチスライスCTは,GE横河メディカルシステムズ社製,LightSpeed Ultra 8列を使用した.対象はNINCDS-ADRDA診断基準にて鑑別された,アルツハイマー型痴呆群15名(平均76.3歳)と非アルツハイマー型痴呆群15名(平均73.8歳)である.撮像条件においては,ファントムを用いて,画質・簡便性・再現性・被曝を考慮して最適な条件を検討した.画像計測の評価指標は,水平断像より1)側脳室下角横径%,2)側頭葉内側径%,3)鉤間距離%,矢状断像より4)側脳室体部面積mm2,冠状断像より5)側脳室体部角度°,6)鉤溝角度°の6つの指標にて検討した. 【倫理的配慮】撮像条件はファントムにて検討し,臨床に関わる諸条件の決定は,撮像済みの画像の後処理により行っている.使用した臨床データは,個人を特定できないよう配慮している. 【結果】撮像条件は管電圧:120 kV,スライス厚とヘリカルピッチ:1.25 mm/0.625,再構成間隔:0.63 mm(オーバラップ50%),再構成関数:Standard,線量:175 mAs(250 mA×0.7 sec)が最適であった.マルチスライスCTにおけるアルツハイマー型痴呆の画像所見としては,水平断像より,側脳室下角の拡大,側頭葉内側の萎縮が認められた.また,矢状断像では,側脳室体部の拡大,冠状断像では,側脳室体部の拡大と角度変化,海馬領域の萎縮と鉤溝角の変化が認められた.各評価指標値とアルツハイマー型痴呆・非アルツハイマー型痴呆との相関比は,1)0.20,2)−0.35,3)0.38,4)0.40,5)−0.76,6)0.66であった.冠状断像からの評価指標は,基準断面における誤差の影響も少なく,従来のCTから得られる水平断像より相関比が高い結果となった. 【考察】マルチスライスCTでは,後処理的に3軸校正を行うことにより,画像計測も良好な再現性をもって行うことができると考えられる.また,従来のCTと同様に,器質的疾患の除外などに加えて,更なる検査時間の短縮と形態画像の向上により,1検査でより多くの画像情報を得ることができる.本研究では,被曝に関してもヨーロッパでのCTガイドライン値を超えておらず,アルツハイマー型痴呆診断におけるスクリーニング検査としての有用性は高いものと考える. |
アルツハイマー型痴呆の形態画像に基づく分類と |
安谷屋亮太1),井関栄三1),村山憲男1),鈴木 賢1),木村通宏1), |
UB2-26 |
【目的】アルツハイマー型痴呆は頭部CTやMRIなどの形態画像で,海馬・扁桃体の萎縮及び後部側頭・頭頂葉や前頭葉の萎縮を示すことが知られているが,萎縮の部位と程度は様々である.また,アルツハイマー型痴呆患者は進行性の認知機能障害に加え,しばしば妄想や易怒性,興奮,徘徊などのBPSDを伴うが,これらの出現パターンも一様ではない.今回,アルツハイマー型痴呆を形態画像に基づき分類し,臨床症状との相関の有無を検討した. 【方法】順天堂東京江東高齢者医療センターの入院患者のうち,アルツハイマー型痴呆と診断された72症例(平均年齢80.1歳)を対象とした.頭部MRIないしCT画像の冠状断面の特徴から,以下3型に分類した.@海馬型―海馬領域の萎縮が優位なもの,A穹窿部型―大脳穹窿部の萎縮が優位なもの,Bびまん型―全般性に萎縮しているもの,とし,さらに各々を萎縮の程度に応じて1〜3に分けた.また,全症例について,HDS-R,MMSE,CDR,ADLに加え,頭頂葉症状,BPSD,せん妄の有無を調べた.HDS-RとMMSEは,0〜4点をstageW,5〜14点をstageV,15〜19点をstageU,20点以上をstageTとし,stageWの症例は除外した.病期判定にはCDRを使用し,ADLはPSMS,BPSDはNPIを用いて評価した.頭頂葉症状は,MMSEの下位項目の得点から評価した. 【倫理的配慮】調査にあたり侵襲的な方法やアプローチはとらず,観察,家族や医療スタッフからの情報と,後方視的な調査に基づき過去のカルテ,看護記録を参照した. 【結果】stageWの13例を除く59例の内訳は,海馬型13例(平均年齢78.4歳),穹窿部型17例(79.7歳),びまん型29例(82.1歳)であった.3型で,発症年齢及び罹病期間に有意差を認めなかった.HDS-R(MMSE)の平均点数は海馬型,穹窿部型,びまん型で各々,10.1(12.4),12.2(16.3),11.0(14.8)であり,各型に有意差を認めなかった.CDRの平均点は2.3,2.2,2.0であり,各型間に有意差を認めなかった.ADL及びNPIスコアはびまん型で有意に高かったが,海馬型と穹窿部型に有意差は認めなかった.頭頂葉症状は各型間で有意差を認めなかった.海馬型でのせん妄の出現頻度は他の型より低かった.3型とも,1〜3の萎縮の程度と,HDS-R,MMSE,CDR,NPIの値に負の相関を認めた. 【考察】今回,アルツハイマー型痴呆を,形態画像の特徴から3型に分類し,臨床症状との相関を検討した.その結果,各型の認知機能には有意な差を認めなかったが,びまん型のNPIスコアが有意に高く,ADLスコアもびまん型で他の2型と比べて高かった.各型間に移行の可能性はあるものの,びまん型では,認知機能の重症度に関わらず,精神症状や行動異常の発現頻度が高く,ADLの低下を伴って,介護困難を生じやすいと考えられた. |
アルツハイマー型痴呆患者における |
中島啓介1),高橋 恵1),大石 智1),後藤美野2), |
UB2-27 |
【目的】痴呆性疾患患者は認知記憶障害を中心とする中心症状,および,抑うつ,不安,妄想など様々な精神症状を含む周辺症状を呈する.周辺症状は時に中心症状以上に本人家族の生活に大きな負担となることがあるが,どのような因子がその出現に関与しているのかは未だ明確ではない.そこで今回大学病院の老人外来で痴呆の鑑別診断を行った症例の中でアルツハイマー型痴呆患者を対象として,その脳血管障害の有無に着目し,その精神症状について検討する. |
頭部CT/MRIにて頭蓋円蓋部にクモ膜下腔に |
前嶋 仁1),木村通宏2),江渡 江2),井関栄三2),新井平伊2) |
UB2-28 |
【はじめに】高齢者の精神科臨床において,頭部CT/MRIなどの画像所見は,痴呆性疾患等の脳器質性障害の診断はもとより,うつ病や妄想性障害においても脳器質性障害の除外に有用である.今回我々は,頭蓋円蓋部に局所的なクモ膜下腔の拡大が認められて,精神症状への関与の有無を検討した8例を経験し,画像を中心とした解剖学的,症候学的考察を加えて報告する. |