第18回日本老年精神医学会 演題抄録 |
【U2−87】 |
強迫笑いより惹起された顎関節脱臼がfluvoxamineにより改善した前頭葉症候群の1症例 |
医療法人社団正仁会明石土山病院・神戸大学大学院医学系研究科精神神経科学分野 大下隆司 医療法人社団正仁会明石土山病院 三和千徳 波多腰正隆 湯尾弘司 岡崎孝夫 鶴田千尋 太田正幸 大阪大学大学院医学研究科精神医学分野 數井裕光 兵庫県立姫路循環器病センター高齢者脳機能治療室 森 悦朗 神戸大学大学院医学系研究科精神神経科学分野 前田 潔 |
脳の前方部に病変を有する変性性痴呆疾患は,脱抑制,食行動異常,衝動性,常同行動などの特徴的な行動異常のために家庭介護ならびに入院中のケアにおいて最も困難な疾患と考えられている.その行動異常については,セロトニン作動系との関連が指摘されている.そのことより,このような変性性痴呆疾患の行動異常に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selec-tive serotonin reuptake inhibitors ; SSRI)による薬物療法の可能性が示唆され,最近は有効であったとする報告も散見されるようになった. 今回,われわれが経験した症例は,32歳ころより痴呆症状が出現しその臨床像,臨床経過,神経心理学的所見,画像所見より前頭葉症候群,脳梁異常と診断された女性である.発症後2年を経過したころより状況にそぐわない強迫笑いが出現するようになり,そのことより引き起こされると考えられる顎関節脱臼が頻回に発症するようになった.本症例においても強迫症状の治療のためSSRIであるfluvoxamineを投与したところ強迫笑いが著明に減少し,顎関節脱臼の発症もほぼ消失した.SSRIが本症の家庭介護ならびに入院中のケアを軽減できる可能性が示唆され,若干の考察を加え報告する. |
2003/06/18 |