【研究背景】中高齢期の緊張型統合失調症の治療は老年精神医学における重要な問題である.中高齢者は緊張病症候群により衰弱しやすいために,とくに迅速で効果的な治療戦略が必要とされている.そこでわれわれは中高齢期の緊張型統合失調症における初回の急性期ECTの短期的効果および反応後1年転帰を調査した.
【対象と方法】1998年1月から2003年1月まで東北大学附属病院精神科においてはじめて急性期ECTを施行した45歳以上の緊張型統合失調症の診断基準(DSM-W)を満足する11連続症例(男性3例,女性8例)において,採用基準として患者・家族から同意を得られていること,かつ除外基準として痴呆,物質関連障害,その他の神経疾患の既往または併存,以上すべてを満足した症例を対象とした.評価尺度はBPRS(18 items,rated0-6)を用いた.急性期ECTの短期的効果についてはECTコース終了1週後を前向きに評価し,BPRSで1週間連続して25以下を反応と定義した.急性期ECT反応者に対して抗精神病薬を継続治療として用い1週間ごとに1年間または再燃・再発するまで前向きに評価し,BPRSで連続3日間37以上を再燃・再発と定義した.
【結果】11例すべてが採用および除外基準を満たした.急性期ECT反応率は100%(11例中11例)であり,急性期ECT反応後1年再発率は63.5%(11例中7例)であった.再発した7例はすべて6か月以内で再燃していた.再燃した7例には2回目の急性期ECTを施行し,すべてが反応した.7例にはその後継続ECTを1週間に1回の頻度で4回,2週間に1回の頻度で4回,4週間に1回の頻度で3回の計11回を再燃しないかぎり施行し6か月間追跡した(2例は現在追跡中).継続ECT中の6か月再燃率は40%(5例中2例)であった.再燃した2例には3回目の急性期ECTを施行し,すべてが反応した.その2例にはその後前回より高頻度の継続ECTおよび維持ECTを施行し現在までにそれぞれ3.7年,1.4年の寛解を維持している.
【結論】中高齢期の緊張型統合失調症では,急性ECTの短期的効果は高いが,継続薬物治療にもかかわらず1年再発率は高い.再発者のすべてが6か月以内で再燃したことより,急性期ECT後6か月間の再燃を防止することが重要と考えられ,その手段として最適な頻度での継続ECTが有用であると思われた.
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