第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U2−83

老年痴呆に伴う問題行動に対するRisperidone, Perospironeの有用性についての比較検討

医療法人社団正仁会明石土山病院
波多腰正隆 湯尾弘司 三和千徳
岡崎孝夫  鶴田千尋 太田正幸
医療法人社団正仁会明石土山病院・神戸大学大学院医学系研究科精神神経科学分野
         大下隆司
 神戸大学大学院医学系研究科精神神経科学分野
         前田 潔
【はじめに】われわれは前回,当学会で老年期の痴呆性疾患に伴う不眠,せん妄,幻覚,妄想,興奮,暴力行為といった精神症状・問題行動の治療に低容量のリスペリドン投与が臨床上有用であり,とくに介護の妨げになるといわれる介護への抵抗,大声,暴力行為などの敵意・攻撃性に対してとくに有用であると報告した.今回,非定型抗精神病薬のなかでリスペリドンと同じSDAであるペロスピロンについても老年期痴呆性疾患に伴う精神症状・問題行動に対し臨床上有用であると考え,リスペリドン,ペロスピロンの有用性についての比較検討を行った.


【対象と方法】老年期痴呆性疾患でMMSE20点以下の問題行動の存在する患者に対して,それぞれリスペリドン(n=10),ペロスピロン(n=10)を投与し8週間の観察期間を通じて比較検討した.リスペリドンは0.5 mg,ペロスピロンは4 mgより開始し適宜増減した.評価尺度はMMSE(0週,8週),DIEPSS(0週,8週),Behave-AD(0週,2週,4週,8週)を用いた.なお,老年期の痴呆性疾患に伴う精神症状・問題行動の治療に抗精神病薬を用いることについて,入院時に本人または家族に文書にて説明し同意を得ている.


【結果と考察】リスペリドン,ペロスピロンとも老年期痴呆性疾患に伴う精神症状・問題行動に対し臨床上同程度に有用であった.リスペリドンを投与された患者で投与期間とともに過鎮静となる例があったが,リスペリドンの半減期の長さと老年期の肝臓における代謝機能の低下が関与しているものと考えられた.

2003/06/18


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