第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U2−80

DIMENSIONを用いた造形療法の効果判定について−第2報−

東北福祉大学感性福祉研究所
木村 伸 大城泰造 金子健二
西田清子 関根一夫
 (株)脳機能研究所 武者利光
【目的】われわれは,一昨年の本学会で痴呆症患者に対する造形療法の効果をDiagnosis Method of Neuronal Dysfunction(DIMENSION)を用いて検討し,造形療法は患者の脳機能を改善する効果があることを報告した.今回,われわれは,正常老人ボランティアに対し,一年間造形療法を行い,脳機能に対する効果を痴呆症患者例と比較検討したので報告する.


【方法】5名の痴呆症患者(平均年齢:75.6歳,平均MMSe:15.6点)と14名の正常高齢者(平均年齢:72.6歳,平均MMSe:26.4点,平均WAIS-R:106点)に造形療法を行った.脳波検査は痴呆症患者5名に計8回,正常老人14名に計23回,治療直前,治療直後におのおの3分間,安静閉眼にて行った.この検査結果をDIMENSIONを用いて解析し,治療前後の平均双極子度(Da)の変化(僖a:治療後Da-治療前Da)を比較検討した.
 (なお,研究に参加した痴呆症患者5名およびその家族,正常老人14名に対し,事前に研究趣旨を説明し,学会および論文にその研究結果を報告することの同意を得ている)


【結果】@正常老人のうち治療前Da値が正常,準正常レベルにある例は,治療後Da値にはほとんど変化を認めなかった(Paired t-Test,Wilcoxon t-Test).A正常老人のうち治療前Da値が障害レベルにある例では治療後Daは改善し,正常群との比較では僖aは有意に高値であった(P<0.001:Unpaired Student t Test,Mann-Whitney U Test).B痴呆症患者は,すべての症例で僖aは有意に改善した(P<0.001:Unpaired Student t Test,Mann-Whitney U Test).しかし,この変化は可逆的で,治療の中止により再び悪化した.


【結語】@造形療法は,脳のニュ−ロン活動が低下している場合,脳機能を活性化する効果があると考えられた.ADIMENSIONは時間分解能に優れ,治療効果の判定にきわめて有効な検査方法と考えられた.

2003/06/18


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