第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U2−78

CIBIC plus-Jの評価者間信頼性に関する調査;サブスケールの信頼性検討

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
古谷順良 謝 宏二 松田博明
  日本薬剤疫学会 楠  正
 東京都老人総合研究所 本間 昭
 ノバルティスファーマ株式会社 小船新一 鷹見 勲
 アベンティスファーマ株式会社  原口裕文
クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン株式会社  松岡 浄
 第一製薬株式会社 藤本雅之
 藤沢薬品工業株式会社 田尻一裕
 ヤンセンファーマ株式会社  橋本英明 樋口武志
【背景】CIBIC-plus-JはNYU CIBIC plusを参考にしてcognition,function,behaviorの3つのドメインに対しておのおのサブスケールを当てはめ,半構成的な質問に対する介護者と患者への問診結果から症状変化に関する全体評価(Global assessment)を評定するものである.前年度の本学会で,われわれはCIBIC plus-Jの評価方法としての信頼性を調査した結果,ほぼ適切な水準であったことを報告した.今回は,3つのサブスケール(DAD,Behave-AD,MENFIS)について検討した結果を報告する.


【方法】症状の変化前と変化後(半年から1年間後)の2回の面接・問診場面を撮影したビデオテープ(評価用ビデオ)を問診医とは別の評価者(ビデオ評価者)が見て評価するビデオ法を用いた.アルツハイマー病患者とその介護者,合計20組を撮影し,評価用ビデオとした.ビデオ評価者は,老年精神医学が専門で臨床経験10年以上の臨床医11名とした.評価を行うまえに評価用ビデオは無作為化され,指定した順に従って評価を行った.また,すべての評価が終了するまで,ビデオ評価者同士の接触を禁止した.計20例分の変化前後2回分のビデオをみて,CIBIC plus-Jの評価を行い,評価結果を記載したワークシートを回収し,集計,解析を行った.信頼性の解析はκ係数と級内相関係数(ICC)を用いて実施した.


【結果】Global assessmentについて,κ係数は11名のビデオ評価者で0.453(95%信頼区間:0.404-0.501)であった.また3つのサブスケールについては,DAD(40項目)で0.146〜0.832(平均0.574),Behave AD(26項目)で0.016〜0.795(平均0.449),MENFIS(13項目)で0.228〜0.350(平均0.281)であり,MENFISが最も低い結果であった.ただし,MENFISについて1段階のずれを許容した重み付けκは,0.567〜0.815(平均0.704)であった.ICCでは,Global assessmentで0.903,DADで0.937,Behave-ADで0.916,MENFISで0.916であり,それぞれのサブスコアはGlobal assessmentと同様に,高い評価者内の一致性を示した.


【考察】今回3つのサブスケールについて評価者間の信頼性を検討したところ,DAD,Behave-ADはGlobal assessmentとほぼ同等かよい結果であり,MENFISが最も低い結果であった.これはサブスケールの変化前後の評価の段階が,DADでは改善,不変,悪化の3段階,Behave-ADでは,3段階改善〜3段階悪化の7段階,MENFISでは6段階改善〜6段階悪化の13段階であり,MENFISは他のサブスケールよりも多段階に分類されるため,その一致性が低くなったものと推察される.MENFISについて1段階のずれを許容したところ,他のサブスケールよりも高いκが得られた.また,ICCをみると,Global assessmentとサブスケールそれぞれがすべて0.9以上の高い一致性を示していた.これらのことから,サブスケールはそれぞれGlobal assessmentと同程度の信頼性を示していると考えられた.

2003/06/18


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