第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U2−72

MCIの地域調査;スクリーニングの参加群と不参加群の比較検討

筑波大学人間総合科学研究科福祉医療学
        宮本美佐
 筑波大学臨床医学系精神医学
日高 真 中島真理子 佐々木恵美
朝田 隆
 国立精神・神経センター神経研究所
山下典生 木之下徹
【目的】これまでに行われている認知機能に関するいくつかの調査で,調査の参加群に対して不参加群では認知機能の低下がみられることが報告されている.そこで軽度認知機能障害に関するスクリーニング調査の参加群と不参加群について,おもに認知機能とADL能力を比較し,不参加群の特性を明らかにすることを目的とした.


【対象と方法】茨城県A町に在住する65歳以上高齢者約2,750人を対象とし,2001年12月から7月に行ったスクリーニングへの参加者約1,960人を参加群とした.そのうち認知機能に関してデータが得られ,判定が可能であった1,537人を分析の対象とした.不参加群については,スクリーニング不参加者のうち,かかりつけ医の協力のうえで調査への同意が得られ,2002年4月から7月に訪問調査を行った174人とした.認知機能の検査には,東京都老人総合研究所と筑波大学精神医学との共同で開発され,記憶・注意・視空間認知・言語・推論の5領域を測定する5-cogを用いた.認知機能について,それぞれの領域で平均値より1 SD以下を低下群とし,参加群と不参加群で比較した.ADLについてはN-ADLとIADLについて比較検討した.


【結果】それぞれの認知機能について,性・年齢・教育年数を補正し比較した結果,認知機能ではとくに記憶領域について,不参加群で有意な低下が認められた(オッズ比=1.9,1.33-2.59).また日常生活動作ではN-ADLについて有意な低下が認められた.


【結論】今回の結果では,不参加群でとくに記憶領域について有意な低下が認められた.軽度認知機能障害の判定にはとくに記憶能力が重要であり,地域での軽度認知機能障害者の早期発見には,不参加群に対する訪問健診等のアプローチが必要ではないかと考えられた.

2003/06/18


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