第18回日本老年精神医学会 演題抄録

 

U2−71

高齢統合失調症患者の生命予後の検討

順天堂大学浦安病院メンタルクリニック
               一宮洋介
   高木メンタルクリニック 高木一郎
 川越同仁会病院 桜井信幸 一宮祐子
 統合失調症の社会的予後を高めるために精神科リハビリテーションの充実など社会的復帰のためのさまざまなアプローチが進められているが,本症の生命予後については,最近ようやく身体合併症や痴呆の問題がとりあげられるようになったところである.今回われわれは統合失調症の長期予後研究の一環として,死亡例について調査し,本症の生命予後について検討した.
 対象は1963年までに川越同仁会病院を初診した定型統合失調症129例(男性61名,女性68名)である.この129例の長期予後については1986年,1990年,1995年に報告しているが,死亡例は1986年報告時6例,1995年報告時27名であった.今回の調査は40年以上継続観察で,2003年1月現在の転帰は,入院中27名(平均年齢72.9歳),外来通院中20名(平均年齢68.8歳),他院通院中2名,老人ホーム等に入所20名,死亡53名,中断7名であった.
 死亡した53名の経過は,外来通院中死亡18名,入院中死亡13名,入院中に身体合併症を生じ転院後死亡11名,老人ホーム等入所後死亡10名,他院転医後死亡1名であった.この53名中死亡原因(経緯)の明らかなものは44名で,男性23名(平均年齢68.6歳),女性21名(平均年齢64.2歳)であった.死亡原因は,悪性腫瘍13名(大腸癌3名,胃癌2名,乳癌2名,食道癌,肝臓癌,胆嚢癌,肺癌,子宮癌,上顎洞癌が各1名),肺炎8名,心不全4名,脳硬塞3名,心筋梗塞,糖尿病,腸閉塞,窒息が各2名,肝硬変,胃潰瘍,熱中症が各1名,自宅での病死2名,自殺3名であった.
 死亡年齢は現在の平均寿命を下回り,本症の生物学的脆弱性を示唆するものと考えられた.さらに高齢患者では肺炎,窒息が目立ち,身体疾患のメディカルチェックや介護サービスの必要性があらためて示された.また少数例ではあるが高齢患者の自宅での病死が認められ,地域社会におけるソシアルサポートの重要性も示された.

2003/06/18


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