【目的】身体疾患治療の際に精神科疾患の合併が疑われ精神科を紹介される,いわゆるリエゾン患者数は年々増加傾向にある.今回,精神科病床を有さない466床の総合病院において,高齢リエゾン患者における紹介時と精神科受診時のそれぞれの診断名を調査し,比較検討したので報告する.
【対象と方法】2001年1月〜2002年12月の2年間を調査期間とし,当院の一般科入院中(身体疾患名は問わない)に,精神科を紹介受診した65歳以上の高齢者108例を対象とした.外来診療録より一般科医による紹介時の診断名もしくは状態像と,精神科受診時およびその経過から精神科医が診断した病名(ICD-10にて分類)との相違を調査した.
【結果】当科初診者1,165例中,65歳以上の高齢者は353例,このうちリエゾンとして108例(男性49例,女性59例)が紹介を受けた.紹介時診断名の内訳は「不眠症」29例,次いで「不穏状態」18例,「痴呆」18例,「せん妄」14例,「うつ病」12例であった.「不眠症」と紹介を受けた患者29例について,精神科医の診断名は,「せん妄,痴呆に重ならないもの」8例,「非器質性不眠症」7例,「うつ病エピソード」4例の順に多かった.「不穏状態」と紹介を受けた患者20例では,「せん妄,痴呆に重ならないもの」が12例と多かった.「痴呆」と紹介を受けた患者18例では,「せん妄,痴呆に重ならないもの」が8例,「せん妄,痴呆に重なったもの」が4例と,痴呆の有無を問わずせん妄が多かった.「せん妄」と紹介を受けた患者14例では,「せん妄,痴呆に重ならないもの」が12例と,診断の一致率が高かった.「うつ病」と紹介を受けた患者12例では,「うつ病エピソード」を満たしたのは3例と少数であった.
【考察】総合病院内での高齢リエゾン患者として一般科医が精神科を紹介する際には,比較的なじみのある「不眠症」「痴呆」「せん妄」「うつ病」などの診断名が多く,その他,「不穏状態」などの状態診断もしばしば用いられた.一般科医が「不眠症」「不穏状態」「痴呆」と紹介時に診断した場合には,せん妄の合併を見過ごしている症例が多く,これら多彩なせん妄症状の鑑別診断が,一般科医のリエゾン精神医学の修得には重要な課題であることが示唆された.
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