認知症ケア事例ジャーナル Netカンファレンス
 
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今月のテーマ

私は介護について学んでいる学生です.
ある介護施設での実習を通して食事介助について疑問をもちました.
その施設に入所しているAさんは,アルツハイマー型認知症で意思の疎通を図るのがむずかしい状態です.咀嚼と嚥下は問題なくでき,麻痺や拘縮もありませんが,食事の際,食べ物をはしでつまんでは隣の皿に移すことを繰り返し,口に運ぶまでに時間がかかるため食べ終わるまでに2時間ほどかかります.なぜ介助しないのかと職員にたずねたところ,「利用者ができることはしていただくのが施設の理念です.時間がかかってもAさんは自分で食べることができますから」とのことでした.
このような場合,みなさんならどのように対応しますか.

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投稿:男性 40代  その他 東京都 その他 家族介護経験あり(現在) 投稿日: 2012/03/02 11:52:24

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編集委員会より
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貴重なご意見をありがとうございました.
今回のテーマは,食事の場面を通じて,自立を支えるために必要なケアの程度や方法の判断,そもそも前提としているAさんの自立している状態とはどのような状態を指すのか,など日々の認知症ケアの実践で見落とされがちな点について考えるものです.
Aさんの食事のケアを考えるとき,現在の心身機能やかつての食生活などの情報を基にします.Aさんがしたいと思っていること,できること,していることなどを把握し,Aさんの心身機能が発揮されるケアを実践することによって,Aさんの自立を図ります.しかし,ケアを導き実践する過程で,Aさんにとって苦痛ではないか,Aさんと介護者らが生活している現在の環境で,許容されるか否かの検討が必要になります.その結果に基づいて,食事にかかる時間の検討がなされるべきです.
 今回の相談の場合は,認知症の人と介護者らが生活している現在の環境で,許容されるか否かを検討するという意味において,スタッフの発言に注意を払わなければなりません.スタッフはAさんの食事のケアについて,(Aさんが入所している)施設のケア理念とAさんの心身機能を勘案して正当化しています.しかしながら,施設のケア理念が,常に入所者の利益になるとは限りません.施設のケア理念という名の下に,すべてを正当化することは危険です.
Aさんのように,認知機能の低下により意思の疎通がむずかしい場合,施設のケア理念と認知症の人の意思が相反しているとすれば,結果としてスタッフがAさんに施設の理念に基づいた生活や行為を強いていることになります.施設のケア理念は,スタッフの行動指針にもなる重要なものですが,その理念に基づいて導かれたケアであっても,一般的な倫理原則や職業倫理に照らして検討されたものでなければなりません.スタッフ自身の価値観で妥当であると考えるケア,認知症の人にとって望ましいと考えるケアを理念として掲げて実践することは,認知症の人をスタッフの価値観に基づいたケア理念につき合わせてしまう危険性があることも認識する必要があります.
 また,自立支援はひとつまちがえば認知症の人に苦痛を与えることになるということを,十分に認識する必要があります.たとえば,夕方の疲労感等を考慮せず,「時間がかかっても自分でできるから」という理由で,24時間画一的なケアを提供し続けることなどが挙げられます.認知症の人が「疲れているから手伝ってほしい」と思っていたとしても,自分で行うことを強いられることにより,苦痛を感じることになるのです.
 みなさまからのご意見にもありましたが,今回のテーマは非常に幅が広く,奥が深いものです.自立を支えているはずが認知症の人にとっては苦痛でしかないこと,見守ることと放置することを区別するなど,検討すべきことが多くあります.日々実践している認知症ケアを振り返り,疑問に思ったことを立ち止まって考える契機となれば幸いです.


投稿:男性 30代  作業療法士 大分県 老人保健施設 家族介護経験あり(現在) 投稿日: 2012/02/09 15:37:13

食事の自立=自分で食べることが出来る。という事が間違いではないと思いますが、私たち健常者と呼ばれる人は普段は何分程度の時間で食事を終えますか?
2時間もかけて食事をしますか?私は飲み会や外食でないなら、30分程度で終わります。
Aさんは食事が2時間もかかるんですよね?
また、その2時間の間に口に運んでいる時間は何分なのでしょうか?
2時間の間に職員はどのように関わりを持っているのでしょうか?
文章に書かれている内容では、関わりがほとんどなく本人に任せてしまっているのではないですか?
私がAさんであれば、食べることに2時間がかかる状態で自分任せにされたら、気分を害しますし介助してほしいと訴えると思います。

食事は1日3回です。Aさんは1回の食事に2時間かけているので、1日の食事時間は合計で6時間程度かかっていることになります。これは、1日の4分の1が食事時間になっており、睡眠時間を考えると活動時間の半分近くを食事に費やしていることになります。
これでは、その人らしい生活になっていますか?
そう考えると、自分で食べることがそこまで大切なことなのでしょうか?
Aさんの出来ることは食事だけではなく、できる事が他にもたくさんあるのではないかと思います。
私なら食事を手伝うことによって時間を短縮し、出来た時間でその人らしい生活を送れるように関わりを持ちたいと考えます。


投稿:男性 50代  介護福祉士 奈良県 特別養護老人ホーム 家族介護経験あり(現在) 投稿日: 2012/01/27 14:04:41

確かに残存機能の活用は必要ですし、介護の原則だと思います。しかし、このケースは介護職の間違いだと思います。食事時間は30分が限界だと思います。私の施設にも認知症のご利用者様はたくさんおれらますが(というか、ほとんどの方が認知症の方です)「機能的にできる」と「能力的にできる」とは違います。
やはり、声掛けや最低限の介助で、ご利用者様にスムーズに食事を召し上がっていただく介助は必要です。




投稿:男性 30代  介護福祉士 沖縄県 その他 家族介護経験なし 投稿日: 2012/01/17 19:07:01

介護について学んでいる学生さんのそんな疑問の気持ちはわかりますよ。私自身も学生の時の介護実習の際に、利用者の援助について「本当にこれで良いのか?」「自立とはどこまでなのか?」という疑問を感じたことは多々あります。言うならば、本来こうでありたい援助目標または利用者本位の援助 ― 実際の援助 = そのギャップは「これでいいのか?」という気づきだとも考えられます。実習現場で学生さんが一番感じる現実のギャップだとも言えます。
今回の内容では、Aさんは自力摂取はできるが、食事中に行動に反復的なことがあり、食事が終えるまでに2時間ほどかかるという点、施設職員側は施設の理念をもとに時間がかかっても自力摂取することを援助しています。私がまず考えたことは、認知症発症してよりこのような食事の仕方なのか?発症より段階的に習慣化していったものか?が気になりました。しかし、自力摂取できる点はよいと考えますが、介護施設での平均的な食事時間(45分前後)からすると2時間ほどは長いとも受け止められます。
この2時間ほどの中で、食物をつまんで隣の皿に移すことを繰り返すのは何故なのか?を行動の観察を行い、口に運ぶまでに時間がかかるのは何故なのか?色んな角度からそのAさんの食事行動と世界観を理解していくことだと思います。まずは、Aさんが食事を自力摂取でき、他者へ迷惑がかからないなら温かく見守ることでよいでしょう。介護の原則の1つに「最小介助と最大努力」「残存能力と潜在能力の発掘」があります。ただし、2時間以上を超えるならば、声をかけたり、他の要因があるのではないかと考えていきましょう。


投稿:男性 30代  その他 北海道 大学・研究機関 家族介護経験なし 投稿日: 2012/01/10 11:38:54

純粋な悩みとして、疑問に思ったことは評価できますが、これの回答を諸説を通して論理的にすると、
ちょっとした論文が一通書ける程度の莫大なものになってしまいます。ですから、せっかく投稿者が学生ということもあり、以下に調べて解決するポイントをあげておきますね。

@まずは、「何が正しい対応か」「何が正しくない対応か」ではなく、Aさんにとって、快となる食事はどういったものなのかということを考えましょう。

Aその上で、自身がAさんで、介助を受けている立場だったら、現在の状況はいかがなものか、施設の理念と言うものの職員になったとして、本当に胸を張って正しいことをしていると言えるか考えてみましょう。

Bその前提を基に「ケア」について、その歴史や所説を通じて自分自身の理念を考えましょう。
ジョンソンから始まり、メイヤロフ、ハベック、トロントと様々なケアについての考え方を学ぶと事で、
何が正しいのかの方向性が定まるはずです。

Cそして、理想と現実のギャップを埋めるためにも、せめてココのポイントだけは押さえておく必要があるケアポイントを整理してみましょう。

とかく学生の皆さんは、自身の能力のなさを引け目に実習先の施設でやられているそれが、良いものと捉えがちですが、目の前でなされている対応に良い意味で疑いながら学びを深め得て頂ければと思います。


投稿:女性 40代  介護支援専門員 岐阜県 デイサービス・デイケア 家族介護経験あり(現在) 投稿日: 2012/01/09 15:39:39

う〜ん、この記載だけでは、このAさんの気持ちがよく伝わってこないのでなんとも言えませんが、果たして2時間もかかる食事を『自分でできている』と判断することが妥当なのかどうかは疑問です。
私たちが食事をする時の一般的な様子や希望を考えれば、よくあるのが、@楽しい雰囲気や落ち着ける場所で、A自分がその日の気分や体調、あるいは好みに合った物を、B自分で確認したり味わったりしながら、かつC周囲の状況(TOP)に合わせて摂っていると考えた時、このAさんの食事風景はどうなのでしょう。
自分で食べることは、確かに食事においては大きなポイントです。
でも、2時間もかけて、(きっと周囲の人は昼寝をしたり、レクをしている時間ではないでしょうか)、冷め切った食事を一人で食べているという状況はどうでしょう? 人によっては遅くまで一人食事をしなければならないことにストレスを感じる人もいるかもしれません。
そしてまた、もし、今のAさんが、食事よりも、例えば他の誰かと一緒に歌を聴いたり、日の当たる窓際で外を行く人を見たり、日差しを浴びる方が好きだったらどうしますか?
自分で食べているから『自立だ』と判断してしまうより、今人生の終盤にいるAさんが何をしたいのかを考えることが先決ではないかと思いますが。


投稿:女性 50代  介護福祉士 佐賀県 老人保健施設 家族介護経験あり(過去) 投稿日: 2012/01/09 15:35:46

初めて投稿させて頂きます。
私の職場は80床を抱える老健施設です。同じような例はあります。
その方の状態にもよるのですが、臨機応変と言いますか、色々な形で関わらせて頂いています。
まずは、やはり‘自力摂取’の尊重ですね。うちのS様はその為に、この方だけ30分早く食事を上げて貰っています。
食べ物を移し替えることも、私達から見れば‘遊び’にしか見えませんが、そんな時「何してるの〜?」って聞くと、にっこりして「こっちの方が美味しそうに見えるやろ?」と。
時間がかかっても本人様が‘自力’にこだわりがあればそれを見守り、時には食べ物を寄せてあげるだとか、食器を入れ替えるなどの介助で良いと思います。
‘自立’を考える時思うのは、‘放置’とちゃんとした‘見守り’に違いが出て来ると思います。
その施設でも、今までのAさんの状態からして今のままで良いとの判断ではないでしょうか?
意思疎通が難しくても、日頃関わっている職員なら何となく判るものです。
食事時間の延長で色々な所でズレが生じてきますが、それはその方のサイクルなんだろうと。
S様の場合も食事時間をメインに組み立てています。
ただ、全ての職員がちゃんとした‘見守り’が出来ているかと言うと疑問ですね。業務を急ぐ職員もいますから。 職員全員で共有するのは本当に難しいです。



投稿:女性 30代  介護福祉士 広島県 その他 家族介護経験なし 投稿日: 2012/01/09 15:02:05

自分でできる限りのことは、していただくように、指導されたりしますね。
確かにこちらが介助すれば、速く食べていただくことはできますし、温かいものは、温かいうちに食べていただくことができます。
重度の認知症で、生活全般のことが全く分からないと思っていても、ふとした瞬間のことを覚えていたりすることがあり、介助することによって、他の入所者さんからの「Aさんは、自分で食べられるのに、食べさせてもらっている」などと言われたことをAさんが、理解できたとして、どんな思いをするかなど、考えてしまいます。
重度の認知症だから、周りが言っていることが全く理解できていないと固定観念を持たないようにしています。
どこまで介助するのか、見守っていくのか、判断は、難しいですね。



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